映画エッセイ「あん」~光を見る人に~
製作 2015年
監督 河瀬直美
原作 ドリアン助川
出演 樹木希林
永瀬正敏
内田伽羅
あらすじ
縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎(永瀬正敏)。
そのお店の常連である中学生のワカナ(内田伽羅)。
ある日、その店の求人募集の貼り紙をみて、そこで働くことを懇願する一人の老女、徳江(樹木希林)が現れ、どらやきの粒あん作りを任せることに。
徳江の作った粒あんはあまりに美味しく、みるみるうちに店は繁盛。
しかし心ない噂が、彼らの運命を大きく変えていく…
(アマゾン商品紹介より)
「まあおもてなしだから」
「おもてなし?ああお客さんをですか」
「いや豆よぉ~。せっかく畑から来てくれたんだから」
あずきと対話する徳江がいい。
僕も料理人のはしくれとして、その気持ちはよくわかる。
野菜や肉も食材として僕の手元に届くまでにたくさんの旅をしてくる。
それぞれの歴史というと大仰だが人生のようなものがある。
物語がある。
お客さんに食べてもらってその食材の人生は終わる。
その食材の人生を生かすか殺すかは、料理人の腕と心粋次第なのだ。
しかし、職業として料理人をやっていると日々同じことの繰り返し
ルーティンワーク。流れ作業。
寝てても体は勝手に動き、頭空っぽでもそれなりの仕事をこなす。
食材の人生を慈しむ気持ちなどつい忘れてしまう。
だからこそ、たまにこういう作品を観ると心に響く。
アア、イカンイカン、タスキヲシメナオサナケレバ。
そして心無いうわさが広がり始めた頃
徳江は静かにいなくなる。
つい水臭いとか言いたくなってしまうけど
周りにちょっとでも迷惑をかけると思ったら身を引く。
もっと自分を大事にしてよ・・
とも言いたくなるけど・・そういう事でもないんだな。
あの日の満月は私にこうつぶやきました
お前に見てほしかったんだよ
だから光ってたんだよって
自らが太陽や月のように光を放たなくても
人の放つ光を見てあげられる存在
言葉を聞いてあげられる存在
私はそれでいいのです。
いや。それがいいのです・・と。
いや~これまた素敵な話でした。
※この記事は2019年4月掲載自身他ブログ記事からの引っ越し記事です。