中本陽介

映画評始めました。

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最近の記事

ラストナイト・イン・ソーホー

60年代ロンドンの文化に憧れを抱くヒロインのエロイーズは、ロンドンにあるファッションデザインの学校への進学が決まり、田舎から上京する。彼女は霊感があるらしく、幼い頃にメンタルヘルスを原因とする自殺によって亡くした母親が鏡を通して時々現れる。母親もかつてエロイーズ同様、夢を追いロンドンに上京するも志半ばで挫折、それがどうも精神疾患の原因だったらしい。 エロイーズは60年代ロンドンのファッション、音楽に耽溺する傾向があるので、周囲と話が合わず、引っ込み思案の性格も相まって学生寮

    • 『奈落の翅』、『由宇子の天秤』、『空白』、『MINAMATA』

      今回は最近観た映画の中で、特に面白かった4作品を紹介したいと思います。 『奈落の翅』富士宮を舞台に実際に起きた暴力沙汰を、当人である不良達に演技させて撮った自主映画で注目された小林勇貴監督。20代で商業デビューを果たした『全員死刑』は映画評論家の町山智浩氏に、「日本のスコセッシ」、「2017年のベスト!」、と言わしめる程の実力派バイオレンス映画作家であります。 そんな彼がコロナ禍で制作した自主映画の新作、『奈落の翅』はオリンピックで競技として注目されたスケボーがモチーフに

      • ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

        血みどろ! 不謹慎!! KAIJYU(怪獣)!!! もう、「とにかく観ろっ!」で済ませて良いくらい最高に面白かった今回の『スーサイド・スクワッド』なのですが、 「この前の続編?」 と思われる方も多いんじゃないでしょうか? ウィル・スミスが主人公のデッドショットを演じた前作の『スーサイド・スクワッド』 監督はデヴィッド・エアーでブラッド・ピット主演の「フューリー」では、ナチス・ドイツが開発した実物のティーガー戦車を登場させた事が話題になりました。 男くさい硬派な

        • プロミシング・ヤング・ウーマン

           プロミシング・ヤング・ウーマン(Promising Young Woman)、訳すると前途有望な若い女性。  本作の主人公キャシーは30歳の独身女性、友人や恋人もおらず実家暮らし。毎日むすっとした表情で最低賃金のコーヒーショップで店員をしている。  彼女は一見パッとしない毎日のように見えるが、夜な夜な一人でバーやクラブに出入りしている。  キャシーが泥酔してベロベロになっているところを、サラリーマン風の男がいわゆる「お持ち帰り」する。男が彼女の介抱をしながらセックスに

          ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

           ドキュメンタリー作品はあまり多く観れていないので分かった口を聞けないのですが、その中で、もし自分がドキュメンタリーを撮るとして理想的な作品を挙げるとするならば『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』になるでしょう。  本作の監督はフレデリック・ワイズマン。  1930年、ボストン生まれの世界を代表するドキュメンタリー映画作家。今年91歳で、同じく現役の映画監督、クリント・イーストウッドやジャン=リュック・ゴダールと同じ年齢です。  フレデリック・ワイズマンの存在を

          ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

          ハッピーアワー

           映像作品の供給過多による映画やドラマを早送りで観る人が増えている事が昨今少しだけ話題になりましたが(早送りで観る人は本来興味がない人が無理矢理、話題についていこうとしているだけだと思うので、そこまで相手にする必要はないと思うのですが…)  早送りしたら絶対良さが伝わらないタイプの作品を中心に(もちろん、どの作品もそうなのは前提ですが)これから紹介していこうと思います。  今回は先日、第71回ベルリン国際映画祭に、『偶然と想像』で審査員グランプリとなる銀熊賞を受賞した濱口

          ハッピーアワー

          クリストファー・ノーランについてあれこれ語る Part2

           今年に入って『ノーラン・ヴァリエーションズ クリストファー・ノーランの映画術』が発売されました。  ええ、もちろん買いましたよ。  読んでみて最も「なるほど、そういう事だったのか!」と思ったのは、翻訳版監修に参加している物理学者、山崎詩郎氏の帯文に書かれているノーランの「映画」には、こんなにも「人生」が投影されていたのか•••!という事です。  ノーランの作家性といえば有名なところで言えば『メメント』に代表される時間軸が結末から始まる作りはノーランが本を読む時、後ろか

          クリストファー・ノーランについてあれこれ語る Part2

          年末年始にオススメNetflix作品3選

           年末年始に、まとまった休みがある人も、そうじゃない人もコロナの感染拡大に伴い、外出し難い状況下で、配信されているドラマや映画を観るのが一番じゃないかという事で最近観た中で特に素晴らしかったNetflix作品を3本紹介したいと思います。 『クイーンズ・ギャンビット』  この作品に興味を持ったきっかけは、スティーブン・キングのツイートです。 「今年、本当に良かったテレビ番組は何でしたか?」という質問に対するキングの答えが『クイーンズ・ギャンビット』でした。  人気の海外

          年末年始にオススメNetflix作品3選

          デヴィッド・リンチの自伝『夢みる部屋』翻訳版発売記念! 『ブルーベルベット』と『ツイン・ピークス』

           2020年10月24日(土)に鬼才、デヴィッド・リンチ監督の自伝『夢みる部屋(原題:『Room to Dream』)』の邦訳版が発売されました。  デヴィッド・リンチの人生に関わった人々のインタビューにより、立体的に浮かび上がった「人間・リンチ」が語られた各章と、リンチ本人がそれに対して言及する章とが交互に語られる構成になっており、非常にユニークかつ、約700ページどこを切ってもリンチ100%、濃厚なファン必読の自伝になっている。  噂では赤裸々な内容と聞いていましたが

          デヴィッド・リンチの自伝『夢みる部屋』翻訳版発売記念! 『ブルーベルベット』と『ツイン・ピークス』

          『E.T.』 スピルバーグとトリュフォー

            今回は言わずと知れたユニバーサルスタジオのアトラクションにもなった(現在USJでは無くなってしまいましたが...)『E.T.』についてお話ししたいと思います。  『E.T.』とは『Extra-Terrestrial(エキストラ・テレストリアル)』の略で地球外生命体を意味します。  何故、今『E.T.』の話をするのかと言うと、「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系、午後9時)の視聴者リクエスト企画「金曜リクエストロードSHOW!」第3弾として、10月2日に本作が放映され

          『E.T.』 スピルバーグとトリュフォー

          『TENET テネット』が楽しみ過ぎるので クリストファー・ノーランについてあれこれ語る

           お久しぶりです。  夏バテ気味で更新を怠っていました。  コロナ、コロナで新作映画の公開延期が続く中、映画館の救世主『TENET テネット』の公開が間近に迫っており、最近はもっぱら、「『TENET テネット』ってどんな映画かな?(ワクワク)」と頭の中を巡らせる次第でございます。  監督は今や説明不要のヒットメーカー、クリストファー・ノーラン。  クリストファー・ノーランとの出会いは思い返す事約20年程前。『インソムニア』というサスペンス映画なのですが、その時、彼の出

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          『散歩する侵略者』と『予兆 散歩する侵略者 劇場版』

           主人公の長澤まさみの夫、松田龍平が数日間、行方不明になっていたんですが、戻って来ると、どうも様子がおかしい訳です。  若年性アルツハイマー?健忘症?の類いと医者から診断され、妻である長澤まさみは、デザイナーの仕事をしながら夫の世話をするのですが、彼女が目を離した隙に、松田龍平は散歩に出かけてしまいます。  散歩の途中、家の庭で洗濯物を干している青年、満島真之介と出会います。この青年は所謂引きこもりなのですが、彼の家に松田龍平は勝手に上がりこもうとします。引きこもりの青年

          『散歩する侵略者』と『予兆 散歩する侵略者 劇場版』

          今週のピストン中本

           どうもこんにちは。  今まで1本の映画について語ってきましたが、今回は最近観て面白かった映画や読んだ本などについてゆるく語っていきたいと思います。 ・『シンクロナイズドモンスター』  会社をクビになった事がきっかけでアル中になり彼氏にも振られ、故郷の田舎に戻った主人公のグロリア(アン・ハサウェイ)は、パブを経営している幼馴染の男性と再会し、そこでアルバイトを始める。一方、それと同時に韓国のソウルで怪獣が出現。その怪獣はグロリアの動きとシンクロしていることが分かり...

          今週のピストン中本

          『ブラック・クランズマン』 スパイク・リーの「LOVE&HATE」

           今年の5月25日、ミシガン州で警察官の暴行により46歳の黒人男性ジョージ・フロイドさんが殺害された事件を発端に、Black Lives Matter(黒人の命も重要だ)運動が盛り上がり、日本でも報道されている。  アメリカでは、警察官による黒人を不当に殺害するケースが繰り返されてきた。この問題は元を正せば、アメリカ合衆国の白人による黒人奴隷制度の歴史まで遡る事になるが、今回は割愛する。  アメリカを揺るがす今回の事件と抗議運動を予言したと言われている、1989年(因みに

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          ラブストーリーに興味がない人の為の『愛がなんだ』入門

           独立系の低予算作品で、当初は全国72館で公開されましたが、20代、30代の女性を中心にSNSや口コミで評判を呼び、上映館が拡大されてロングランヒットとなった本作。原作は『八日目の蝉』、『紙の月』などで知られる角田光代さんの同名小説です。  「愛だの恋だの、どうだって良いよ!」とお考えの、そこのあなたにこそ観て欲しい、実存的な問いかけと言えば大袈裟に聞こえるかもしれませんが、恋愛を通して生きるとは何かを考えさせられる内容になっていると思います。 ・『愛がなんだ』ってなんだ

          ラブストーリーに興味がない人の為の『愛がなんだ』入門

          『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』 夜は短し走れよ乙女

           1868年、南北戦争終結から数年後に出版された『若草物語』は映画だけでも、1917年以降に7回も映像化されています。  控えめで大人びた性格の長女メグ、作家志望で活発な次女ジョー、病弱で繊細な性格の三女ベス、芸術家志望でワガママな四女エイミーの4姉妹を描いた物語は後半、「結婚」という「女性の幸せ」を彼女達は押し付けられる事になります。(病弱な三女のベスは闘病の末に死んでしまうのですが。)正確には当時の価値観を押し付けられる形になったキャラクターは次女のジョー・マーチです。

          『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』 夜は短し走れよ乙女