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『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』谷川嘉浩(筑摩書房)|読書感想文001

人生が脱臼しそうなほど面白かった。

この本に出会ったのは、高円寺にある〈そぞろ書房〉。将来に対する漠然とした悩みを抱いていた時期だった。吸引力のあるタイトルに惹きつけられて迷わず購入した。

「モチベーションをあげる」とか「やる気スイッチ」のような自己啓発本は多々あれど「人生を左右してしまうほどの衝動」や「他人から見るとよくわからない偏愛」についての分析と、その実装方法(!)を教えてくれる。類書の少ない本だ。

長い人生の中には「やりたいことや夢がない」という状況に陥り、ぼんやりしてしまう時期もある。本書はそんな時のための読む薬だ。

子供の頃に大人から質問される「将来の夢」や「本当にやりたいこと」は、既存の世界から与えられた選択肢にすぎない場合が多い。世間的に華々しいスポットが当たった「モデルのある欲求」は、すぐに飽きてしまうのだ。みんながいいというものを、自分のやりたいことだと勘違いしてしまう。そういった他者思考型の欲求と衝動とは別のものだ。

著者曰く、衝動とは幽霊のようなものである。自分でもコントロールできない情熱に突き動かされ、やむにやまれぬ感覚で過剰なパッションとともに突き進んでしまう。

合理性、メリット&デメリット、効率化やパフォーマンスなどとは対極にあり、世の中の理屈や頭で考えたものではなく、自分の心が叫んでいることに耳を澄ますことが大切だという。衝撃は暴風雨のように私たちを予想もしないどこかへと連れ去り、気づくと人生のレールから脱線している。 

衝動にはそこにレールがあるかどうかを気にせず走っていく力があるから、人生の岐路に立った時に衝動を観察し解釈すると役に立つ。語感のイメージとは逆で、長持ちする感情であり地道な練習やコツコツした積み上げ式の努力ができるようになるのだ。

ではどうしたら衝動が見つかるのか。衝動を見つけるためには、個人的で細分化された欲望である「偏愛」に注目するとよいそうだ。些細な日常に現れ、ドラマティックではないので気づくのが難しい小さなモチベーション。それを見つけるための手法なども詳細に解説してくれているので、興味のある方は読んでみて欲しい。


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