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読書感想文【姫の戦国】
おもしろの 世や浮き沈み 小車の…
みなさんは今川義元をご存知だろうか。
多くの人にとって今川義元とは、桶狭間の戦いで織田信長に敗れた人、というイメージが一般的だろうか。
本書はその義元の母、寿桂尼の生涯を描いた作品。
義元の父、今川氏親へ嫁いできた寿桂尼こと悠姫(この時点ではまだ寿桂尼とは名乗ってない)
当時として時代の最先端をいっていた今川家で、公家と武家、男と女の違いに悩むようになる。
そんな折、氏親は中風ー今でいう脳卒中ーで倒れる。
一命こそとりとめたものの、手足の麻痺や言葉がうまく話せないなどの後遺症が残ってしまう。
そこで悠姫は夫とともに、ときに夫の代わりとして政務を行うようになる。
もともと公家の出身で頭も切れる悠姫、氏親が倒れる以前より夫の仕事を見聞きして理解していた彼女。
ここで有名な今川仮名目録が作られた。
まもなく氏親は死去、長男である氏輝が後を継ぐも、まだ14歳と幼い息子に代わって政務を取り仕切るようになる。
通常、この時代では女性が指揮することはめったに無いが、さきの今川仮名目録を作った実績があり、後見人として認められた。
その後も氏輝、義元を支えるも、相次いで息子を失ってしまう。
自身も老い、もう今川家を支える力がないと悟った寿桂尼。
ここまで彼女を支えてくれたものはなんだったのかー。
今までの今川家のイメージを払拭し、再評価を後押しする作品だと言える。
そんな今川家も義元の息子、氏真の代で家は滅亡してしまう。
が、その後の歴史から見ると、いわば勝ち組となった氏真を支えたのは、龍雲寺から寿桂尼が見守ってくれたからなのかもしれない。
「そうするより、仕方ないじゃないの。」
ときには、こういう肚の据え方をするのもいいかもしれない。