『社交不安障害 (理解と改善のためのプログラム) 岡田 尊司 幻冬舎 (2019/1/30) 』ブックレビュー

こんばんは。イヌーさんです。
今回は、「社交不安障害 (理解と改善のためのプログラム) 岡田尊司 幻冬舎 2019」をkindleで購入し、耳で読んだのでブックレビューを書かせていただきます。

風邪っぴきで3週くらい聴いては寝落ちを繰り返してしまいましたので、今回はうろ覚えで印象的だったポイントをピックアップしてお勧めしてみようと思います。

※ちなみに、私のブックレビューシリーズですが、「要約や知識を伝えるもの」ではなく「この本はこういう特色があったよ」「ここが良かったよ」を伝えるものです。

詳しい知識を知りたい方は本書をお手に取って読んでみてくださいね。

目次です↓

①網羅的な知識が嬉しい
②社交不安障害の診断
③他の疾患との判別や併存の知識
④回避性パーソナリティ障害との関連性
⑤愛着障害の問題は根深い
⑥偉人たちはとにかく行動した

※今回、自分の家庭環境にまつわるややしんどいエッセイも書かれているので、読むタイミングにはお気をつけくださいませ。
心が引っ張られちゃうかも!


①網羅的な知識が嬉しい
社交不安障害についての2019年1月時点での知識が網羅されています。
説明も簡易的で分かりやすいです。

社交不安障害以外にも、不安が日常生活に支障をきたすほどの状態には全般性不安、分離不安、強迫性障害、広場恐怖、パニック障害など様々ありますが、それらについても概要が説明されています。

初学者の方や、久々に精神医学について勉強したいぞー!という方におすすめかもしれません。

②社交不安障害の診断
社交不安障害の判別について、「Q.(質問項目)」と問いかけと詳しい説明があり、項目の最後に「→はい」「→いいえ」の選択肢があります。

もちろん、お医者さんでない人は他人を勝手に「診断」することはできません。(倫理的な問題とか色々あります)
つい忘れがちかもしれませんが、偏見もよくないです。これは自分も肝に銘じておきたいですね。

それを念頭に置きつつ、自己理解や他者理解、支援のための一つの材料にすることには、とても有用かと思います。

もちろん支援の際には、ご本人と専門家を交えて支援内容を考えていく必要性があることは忘れないようにしたいです。

③他の疾患との判別や併存の知識
他の疾患についても複数取り上げられておりました。
それぞれの疾患、障害の名前について、詳しくは各々調べていただきたいのですが、キーワードとしては以下のものが挙げられておりました。

・ASD(自閉スペクトラム症)
→昔から1人でいることを好んだり、こだわりが強かったりするという特徴があると自閉スペクトラム症の可能性もある。

・うつ病
→ うつ状態があるときには社交不安も強まりやすいが、社交不安障害の有無は判定できない。うつ状態のない元気なときに、どうであったかを考える必要があると著者は述べています。

・統合失調症
→幻聴や妄想などの症状のため、意欲低下やひきこもりなどの症状を伴うことが多い。初期の頃は、社交不安障害と見分けることが難しいことがあるが、治療方法は不安障害とはアプローチが異なるため注意したい。

・他の不安障害
→ 全般性不安障害、分離不安障害、パニック障害、広場恐怖、強迫性障害が挙げられる。社交不安障害と、他の不安障害が重なっている場合もある。

例えば全般性不安障害の人では、一人でいるときも緊張した状態が続き、落ち着きがなかったり、よく眠れなかったりすることが多い。
→一方で社交不安障害の場合には、一人でいるときや安心できる人といるときには、比較的リラックスできる。

このように、他の不安障害と、それぞれ症状の説明とともに比較されており、不安障害の全体像の把握に役立つ本でした。

④回避性パーソナリティ障害との関連性
社交不安障害と併存する場合もあるけれど、愛着障害とセットで、不安について学ぶ際に欠かせない概念なのではないかな、と個人的には思っているので、この本で取り上げられていて嬉しかったです。

親密な対人関係や人に関わる仕事、昇進や結婚を避け、社会的な負荷全般を回避する特徴があります。なんかわずらわしいなーと面倒ごとを避けようとする回避的な行動パターンも特徴だそうです。

恋人までは付き合えたとしても、結婚、出産、育児は抵抗を感じてしまうことも多いとか(あまりにも共感しすぎた)
→一方で人と関わりたい、人と関わることが好きなのに緊張や不安で行動ができない場合には社交不安障害や関連する障害などが考えられるそうです。

これも併存するとのことで、不安障害の診断を受けてから8年くらい経った自分としては、どちらかなあと自分を見直すきっかけになりました。

元々ASD特性が強く、強迫症状やパニック発作もあった身ですので、統合失調症以外は全体的に結構自分には当てはまるんじゃないかなあ……と考えた次第でした。

そういえばカウンセラーさんに回避性パーソナリティとか言われたような記憶があるようなないような。多分あります。
しかし、さらにドキッとしたのは「愛着障害」についてでした。

⑤親の教育や愛着と不安との関連性
これは依存に気をつけつつも支援に必要な概念だと思います。

子供の時、不安なこと、つらかったこと、悲しかった感情を「安全基地」である親に受け止めてもらうことが難しかった場合、不安を抱えやすくなってしまうと著者は論じておりました。

例えば、両親が口論をしていたり、親の精神が不安定だったりする場合、不安であることすら口に出せない子どももたくさんいるようです。(私のことだー!その1)

また、「良いところは極端に褒め」、「悪いところは厳しく叱られる」という二面性の強いしつけをされると、「悪いことは隠さなきゃ!」と本能的に結びついてしまう防衛スタイルになるようです。(私のことだー!その2)

「うちは厳しすぎたり虐待があったことはともかく、愛情も貰ったなあ」「良いところも褒められやしないよりは、褒められた方が良いしつけの方法なんじゃないの?」と思っていたのですが、そうでもないみたいです。
これはこれで別の生きづらさが出てしまうんですね。納得して驚きました。

子育てする側もこれは大変ですね。加減がとても難しそう。

また、良いことはめっちゃ褒められ、悪いことはめちゃくちゃ罰せられると、以下のようなメカニズムが起こるという説もあるようです。
悪いことを隠さなきゃ→いい人でいないと→二面性を隠してしまう→本心を隠す必要が出てくる→対人緊張が起こる

幼い頃の子供にとっては、親が全てですから、それも生まれつき繊細で、その上人並みにできないことが多く、怒られがちな人生を愛着形成の大切な時期に送っていたならば、その後の対人関係にも大きく影響を及ぼすし、不安障害の治療が難航するのも無理はないなあと思います。

当事者としても、支援者としても、安心できる空気作りを心がけていけたらと思います。

そういえばうちの親は厳しくも愛情もあった人たちだったけれど、父も母も常に精神的に不安定で、すぐにヒステリックに怒るような両親でした。

無条件且つ安定的に愛してくれたのは近くに住んでいた祖父母だったし、実家より祖父母の家の方が安心感を感じることができたことを思い出しました。

幼少期の私は家の教育でテレビアニメバラエティゲームが基本的に禁止で、私にオタク文化をくれたのも祖父母でした。

発達障害の軽度LDの傾向で、いまだに識字や読書が困難なのですが、実家ではそんな私に与えられた娯楽は「本」だったのですね。

今でこそ支援に生かすため、自己理解を促進して安定したメンタルを維持するためというモチベがあるのでこのようにいろんな本に触れることができますが、幼少期は何のモチベもなく、なんも読めなかったので、自分の世界に引きこもるしかなかったです。

話が脱線しましたが、祖父母の家も常に遊びに行けるわけではなかったため、基本的には実家で罵声や長時間の説教、虐待に怯えながら、10歳くらいになってようやく買ってもらえたゲームや漫画、アニメなどの娯楽も頻繁に取り上げられてしまう悲しみを何度も味わって生きてきてしまいました。

学校も聴覚過敏が酷く、高めの声が苦手だったり集団行動が難しかったり感情的なクラスメイトが苦手だったりなかなか友人を作るのが得意ではなかったり緊張したりして、フリーダムに過ごせた部活以外は常に不安と苦しさと緊張でいっぱいだったように思います。

(対人恐怖や集団行動の苦手さ、感覚過敏、不安の強さから毎朝泣くほどつらく、不登校を何度も希望したのですが、40度の熱が出ても母の機嫌が悪いと登校させられるような家庭環境だったので、不登校はさせてもらえませんでした)
(通信制の高校に入学した友人が羨ましかったなあ)

自分は解離性健忘と離人感・現実感消失症も長いこと患っているので、感覚としても記憶としてもすっかり忘れていましたが、実家では大抵怯えて暮らしていたし、両親の前でリラックスして心をオープンにできたこと、安心できたことが一切無かったなあとぼんやり思いました。

そりゃ全般的に不安障害経験したわー。となるものですね。
身に覚えがありすぎました。

それだけに、何か辛いことがあった時に嘆いたら共感して受け止めてくれるようになった今の母親には、変わってくれたことにとても感謝しています。

カウンセラーさんにも、「毒親ってなかなか変わらないから、あなたのお母さんは珍しいケースだよね!」と嬉しそうに言われたことがありました。
「毒親」とそのまま口に出してしまったカウンセラーさん(※熟練、めっちゃ良い人)のムーブがシュールすぎて笑っちゃったことを思い出しました。


⑥偉人たちはとにかく行動した
本書には治療法についても様々な方法を取り上げられています。
今まで読んだ不安のワークブックや不安関係の本、他の疾患について学んでいた時にヒョイと出てきた名前についても挙げられていました。森田療法とかACTとか。

ただ、自分が治療法を学んだとして、職場でそれを実施すると治療行為になってしまうのでできませんが、この本よかったわよ〜と自助会やうつ病仲間との雑談でよく共有をさせていただいています。

本書ではガンジーやユング、某コーヒー会社のお偉いさんたちが不安とどのように付き合ってきたかについて書かれています。

不安について扱った本のAmazonのブックレビューには、根性論だ!という意見を散見します。

ですが、色んな本を読んでみて、よくよく学ぶと多角的に「行動する」方法、どのような行動をすべきか、自分の認知を分析して正しい認知を行うこと、他人との境界線を設けること、余裕を持つこと、ヘルプサインを出すこと、人を頼ることなどなど不安の対処法について、色んなことを知ることができます。

本書は不安について学ぶ際にはじめのほうに読んでおくと、色んな知識が枝分かれて広がってゆく良書なのではないかと思いました。
ある程度不安について学んだ後に、病状の整理にも役立つと思います。

自分は即効薬として、何か職場で衝撃を受けてしまった場合には、帰宅後すぐにワークブックに取り組みます。
以前、レジリエンスワークブックに取り組んだ際には爆速で1時間半くらいで済ませて行動指針を把握し、スッキリした心持ちでねました。
翌日も勇気に満ちていて、効果的でした。

今後も不安は生きていくためにしょうがないものと考えて、うまいことエネルギーにしつつ、付き合っていきたいと思います。

今までしんどかった家庭環境や自分の障害特性が、本を読むにつれていかにしんどいものだったか、現在進行形で定型発達の方や精神疾患を抱えていない人と違う苦しさを、どれほどたくさん抱えているか、自覚しつつあります。

他者理解にも、自己理解にも役立ち、ラブアンドピースが自分の周りに少しだけでも広がると嬉しいですね。

今まで人生がしんどかった分、対人緊張も不安も回避傾向も離人症も解離性健忘も慢性的にありますが、それはそれとして楽しいことをいっぱいしたいと思う、今日この頃です。

愛着スタイルの影響は本能的な反応に結びついてしまうらしいので、自分は他人に深く恋をしたりもしないのかな、と思います。

家庭を持つと思うと本能的に無理無理無理助けて、行方不明になった方がマシ!と思うくらい無理なものは無理になっちゃってるのは仕方ないとして、できる範囲で幸せを得ていきたいですね。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
みなさまにも、昨日よりちょっといい明日がきますように。

2025/01/26 イヌーさん

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