怒れるママを鎮めたまへ
いつもニコニコなママでいたいと心から思っているが、思って実践できるものなら、人間の悩みの9割は消え去るはずなので、残念ながら毎日プンプンいらいらガミガミしながら過ごしている。
親の顔色を窺う子になってほしくないなぁと願ってはいるものの、悲しいかな、うちの兄妹も徐々に処世術のようなものを身に着けだした。
夕飯時、娘に怒りながらごはんを食べていると、食卓の隣の席に座る彼女が私をジッと眺めて一言。
「ママ、かみのけサラサラだねぇ」
喜ばせるやん。
「え……そうかな」
「ママ、すごくかわいい〜」
ありがとうと言いづらい。本当に思っているのか、そういえばママの機嫌が直ると思っているのか微妙なラインだ。前者なら怒ってないときに言ってくれ。
別の日には、やはり夕飯を準備しながらプンスコしている私に向かって、
「ママ、きょうのたまごやき、イケてるね!」
イケてる……!?
詳しく聞くと、「すごくきれいにまけてる」ということらしかった。確かにこの日、いつもと比較して卵焼きがきれいに焼けたなぁとは思ったのだが。
ちなみにこの件に関しては、別日に「きょうもイケてる!……あ、やっぱりイケてない。ちょっとこわれちゃったね」と言われたので、純粋に褒める意味もあったのかもしれない。
娘は言語野の発達が著しく、3歳にして相手の気持ちに寄り添うような発言や、空気を読んだキャッチボールをするのがうまい。
「言葉で持ち上げる」というのは、彼女が自分の得意を活かして生み出したスキルなのかもしれない。
では、未だに会話がわやわやしている5歳息子はどうなのかと言うと……。
「にぃちゃん(妹のこと)、ママが怒ってるとき、どうすればいいかおしえてあげようか?」
と、私の目の前にいる妹のもとにやってきた兄が言い出した。そういうのは本人がいないところでやるんですよ。
こくんとうなづく妹に、兄は自信満々で言った。
「ほっぺにチューすればいいんだよ」
ダメ男理論キター。
最近、私からチュッチュしようとすると、顔を背けたり、手で押しのけたりしてくるのに、時折自分からやたらとキスしてくるタイミングがあった。私の機嫌が悪そうなときだったらしい。
チューされるのは確かに嬉しいが、そんなされ方はちっとも嬉しくない! いや嬉しいけれど、今後は嬉しくない風を装おうと思う。
やっぱり毎日ニコニコ暮らしたいものである。