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【読了010】遠藤周作『怪奇小説集』

深夜、胸をしめつけられるような息苦しさに襲われたルーアンのホテル、真夜中の階段を上がっていく何者かの足音を耳にしたリヨンの学生寮、うなだれている人影を夜具の足許に目撃した熱海の旅館――「三つの幽霊」ほか、身の毛もよだつ恐怖譚15編を収録。

講談社文庫

 こういう「ほどよい怪奇短編」は息抜きにちょうどいいですね。遠藤周作ってキリスト教関係の話かユーモア小説? のイメージだったんですが(『沈黙』と『あべこべ人間』しか知らない)、こんなホラーっぽい短編も書いてたんですね。

「私は見た」なんかは完全に軽い読み味の悪ふざけにも近い後日談でしたけど、「三つの幽霊」はグッと雰囲気が出てて好きでした。
 胸糞系は好きなタイプと嫌いなタイプとに分かれるんですが、この短編集に入ってるのは大体イヤな感じだったなぁ……「霧の中の声」の旦那の描写なんかもううんざり。「鉛色の朝」もキツかった……。ただただ主人公が追い詰められたりイヤな目に遭い続けるようなのは勘弁してほしいです。「初年兵」は良かった。好き。
 一番怖かったのは「蜘蛛」かな……。ああいうのにはめちゃくちゃ弱いんだけどめちゃくちゃ好きでもあるのです。
「甦ったドラキュラ」は「ひっでぇな」以外の感想が出てこなかったよ。ユーモアったって、度が過ぎるのや小学生男子が笑うようなのじゃイヤだなあ。やっぱりりそれなりの上品さはほしい。
 といって、恐怖を盛り上げといてからの落ちに使われるユーモアでは「なーんだガッカリ」ってなってしまうので、私の好みもなかなかうるさいな。

 とはいえ基本的に読みやすいし、話もそれぞれ趣向が違ってて楽しい。同系統の話をギュッと濃縮されるのもいいんですけど、こういうアラカルト的なのも気楽でいいですね。
 コテコテな怪談話もありましたが、常にどこか虚無感が漂う感じで、なかなか味わいがありました。


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