シェア
number
2020年12月6日 20:27
(旅ノート1冊目より、2011年2月6日 早朝)古寺をめぐる。路地、家々の中を通り抜け、いくつもの古寺がふいに姿を現す。古(いにしえ)が今の民の暮らしに溶け込み、淡々と建っている。脇道から寺に入り、正門まで歩くと、眼下に尾道の街が広がった。明けたばかりの太陽の光が、空に薄紫の絹のような朝焼けをつくり、街は朝靄にうっすらとかすんでいる。時折車や電車の音が通り過ぎ、その間も、背中の方から
2020年9月5日 22:59
青春18きっぷを使った2泊3日の旅。1泊目は尾道、2泊目は別府。旅ノートをつけるようになったのも、この旅からだ。今ではもう旅ノートも10冊目に突入しているが、1冊目を読み返すと、今でも、不安と自由に圧倒されて研ぎ澄まされた、若い自分の感性に出会うことができる。世間知らずで、不器用で、感情的で、不確かで、つまらない悩みごとばかり抱えて滅入っていた頃。できれば忘れてしまいたい幼さではあるけれ
2020年1月26日 21:39
初めての一人旅は、関西から九州へ、ひたすら鈍行列車に揺られて、車窓から外を眺める旅だった。朝早く起きてこの時間に乗る、この時間に乗り換える、と計画していた電車の時刻にはことごとく遅れ、まあそれもいいかと一人旅の気楽さで電車に揺れる。カタンコトンと線路の感触を感じるくらいの鈍行の速さは、人間らしい呼吸になじむ。人の少ないローカル線のボックス席に腰を落ち着け、本を読む。時折目をあげると、窓から
2017年10月14日 19:59
一人旅が好きだ。もちろん誰かと行くのも楽しくて好きだけれど、あまり知られていない場所や、観光客が目を向けないような町、独特なその土地の「匂い」がするところには、一人で行きたい。誰かと行くよりも、一人旅は、その土地に近づく。友達や家族と行けば日常も一緒についてくるけれど、一人では、まさにそのとき・その土地で起きている「いま」に圧されてしまって、携えてきた日常はたちまち小さくなる。そうす