土地に近づく
一人旅が好きだ。
もちろん誰かと行くのも楽しくて好きだけれど、
あまり知られていない場所や、観光客が目を向けないような町、独特なその土地の「匂い」がするところには、一人で行きたい。
誰かと行くよりも、一人旅は、その土地に近づく。
友達や家族と行けば日常も一緒についてくるけれど、一人では、まさにそのとき・その土地で起きている「いま」に圧されてしまって、携えてきた日常はたちまち小さくなる。
そうすると、新しいものが、決壊した川のようにどうどうと入ってくる。
写真には収められないほどの新しい風景。
筆が追いつかないほどの新しい気持ち。
どんどん、どんどん、なだれ込んでくる。
咳き込むようなその洪水に打たれて、一人で電車の車窓から世界を眺めるとき、涙が出るほど、生きていると感じる。
最後まで読んでくださってありがとうございます。 わずかでも、誰かの心の底に届くものが書けたらいいなあと願いつつ、プロを目指して日々精進中の作家の卵です。 もしも価値のある読み物だと感じたら、大変励みになりますので、ご支援の程よろしくお願い致します。