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旅の感触

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旅先では、そのとき・その場所でしか書けない文章が生まれます。 五感が鋭くなって心が開いていくような、あの独特の感触は、何物にもかえがたい貴重な記憶。 それらを忘れないように、手書…
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夜明けの空と町に知る -尾道② 古寺と千光寺公園-

夜明けの空と町に知る -尾道② 古寺と千光寺公園-

(旅ノート1冊目より、2011年2月6日 早朝)

古寺をめぐる。
路地、家々の中を通り抜け、いくつもの古寺がふいに姿を現す。
古(いにしえ)が今の民の暮らしに溶け込み、淡々と建っている。
脇道から寺に入り、正門まで歩くと、眼下に尾道の街が広がった。
明けたばかりの太陽の光が、空に薄紫の絹のような朝焼けをつくり、街は朝靄にうっすらとかすんでいる。
時折車や電車の音が通り過ぎ、その間も、背中の方から

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縁側の思索 -尾道① 志賀直哉旧居にて-

縁側の思索 -尾道① 志賀直哉旧居にて-

青春18きっぷを使った2泊3日の旅。
1泊目は尾道、2泊目は別府。
旅ノートをつけるようになったのも、この旅からだ。
今ではもう旅ノートも10冊目に突入しているが、1冊目を読み返すと、今でも、不安と自由に圧倒されて研ぎ澄まされた、若い自分の感性に出会うことができる。
世間知らずで、不器用で、感情的で、不確かで、つまらない悩みごとばかり抱えて滅入っていた頃。
できれば忘れてしまいたい幼さではあるけれ

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情景の群れ

情景の群れ

初めての一人旅は、関西から九州へ、ひたすら鈍行列車に揺られて、車窓から外を眺める旅だった。
朝早く起きてこの時間に乗る、この時間に乗り換える、と計画していた電車の時刻にはことごとく遅れ、まあそれもいいかと一人旅の気楽さで電車に揺れる。
カタンコトンと線路の感触を感じるくらいの鈍行の速さは、人間らしい呼吸になじむ。人の少ないローカル線のボックス席に腰を落ち着け、本を読む。

時折目をあげると、窓から

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優しい帰路

優しい帰路

旅の帰路、山間を走る電車の車窓から、黄昏を追う。
夕日が沈むと、山々は次第に暗くなり、ガラス窓を挟んだ闇の向こうに姿を消していく。
昼間は圧倒的だった自然の大きさが、徐々に遠のいていく。
木々の輪郭や山々の境界が曖昧になり、一緒くたになって、代わりに民家の光がぽうと灯りはじめる。
人間の生活が、遠慮がちに、光を灯して浮き出してくる。
時折、カーテンを開け放したままの民家や、高架沿いの小さな企業ビル

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土地に近づく

土地に近づく

一人旅が好きだ。
もちろん誰かと行くのも楽しくて好きだけれど、
あまり知られていない場所や、観光客が目を向けないような町、独特なその土地の「匂い」がするところには、一人で行きたい。

誰かと行くよりも、一人旅は、その土地に近づく。
友達や家族と行けば日常も一緒についてくるけれど、一人では、まさにそのとき・その土地で起きている「いま」に圧されてしまって、携えてきた日常はたちまち小さくなる。

そうす

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