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僕らは皆んなマジョリティでマイノリティ! /アクセシブルデザインの発想

あらすじ
 マジョリティに属さない人々が日常を暮らしやすくするための工夫であるアクセシブルデザイン(AD)の開発・普及活動の中心に立ち、国際規格化等のルール作りでも世界を牽引してきた著者がADの可能性を語

声を集める土壌を作る

・「マイノリティ」は気付けない

「類は友を呼ぶ」と言うように人間には似たもの同士が集まる習性がある。

この事象は心理的側面から見ても本当らしい。
「類似性の法則」と呼ばれ、自分と共通点が多い人に対して親近感を持つ傾向を指す。

特にハンデを持つ人々はコミュニケーションにおいて共感を大切にするからこそ、似た属性や感じ方をする人と共にする方が、自分を肯定できるため安心する傾向があるだろう。
コンプレックスに思っている人は尚更この傾向が強くなるはずだ。

多くの人は同級生・同郷・同じ趣味など類友なコミュニティーに属している。
その1つに傾倒しているほど、たとえマイノリティであっても、そんなことには無自覚になり、ADを考える種になる「くらしの不便」も、それをクリアする「知恵」もコミュニティ外に発現しにくい。

多くの人が暮らしやすいデザインを策定するアプローチを当たり前にするためには、社会全体、そしてハンデの有無に関わらず人間関係の幅を広げ関係人口を増やしていくことが求められるのではないだろうか。

・「マジョリティ」を細分化する

社会全体として関係人口を増やしていくためには、社会的動物である人間が社会の中の多様な属性を横断していて、必ずしも「マジョリティ」や「マイノリティ」でないことを知ることが関係人口を増やすことにつながるのではないか。

子供育成の段階で、社会には様々な属性があることを体験的に知り、他者との差異を認めることで社会の中で生きる「自分」という存在の輪郭を確かになり、他者と差異があっても「力関係」の差異に違いがないことを知る。
そうして社会全体として関係人口が増えていくことで「より多くの人が暮らしやすいデザインを策定するアプローチを当たり前にする」ことを可能にする大きな一歩になるはずだ。

企業やブランドの存在価値を高める

昨今の「VUCA」を背景に、社会貢献を考え自社の存在意義を明確にするパーパスを重視する企業が増えている。
消費者心理としても、社会的存在価値の高い企業やブランド・サービスを利用することで社会貢献ができるためパーパス経営をしている企業を支持する消費者が増えていると言われている。

この傾向はADやそれを包括するインクルーシブデザインにとって追い風になっているように思う。

全ての感覚に配慮するという営みは視覚や聴覚や身体性など感覚に制限がある人々にとっても企業やブランドと接する機会が増えることになる。

さらに、そうしたインクルーシブな取り組みが社会に貢献したいと思う全く別の消費者に対する訴求にもつながる。

社会がアクセシブルデザインやインクルーシブデザインに対し追い風となっている今、さらに多くの企業やブランド・デザイナーの参画がし易くなるルールやシステムの構築を推進していくべきではないだろうか。

そして、多くの人がこういったデザインを取り入れることによって、感覚に制限がある人々のニーズを模索するのと同時に、これまで考えられていなかった全く新しいアプローチのイノベーションにつながる可能性も秘めているように感じる。


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