ホテルマン日記『僕、晴れ男なんです』
旅館の懐石レストランで働く私の話
今日担当したのは60代くらいのご夫婦
とても静かなお二人で、最初はひとことも声を発さず、お飲み物も旦那様が勇気を出して質問してくれた
旦那様「日本酒飲み比べで、女性でも飲みやすいものはどれですか?」
とても小さなお声だったが、丁寧な言葉遣いだった
前菜から始まり、どんどん料理を提供する中
やはり、お二人の顔がお堅い
私が席を離れると静かにお話しされてる様子だったが
私が入ると空気が固まり、緊張感が漂う
こういった場合はどうしようと少し考えつつ、丁寧に料理説明をして笑顔と穏やかさを心がける
料理を食べる手をとめては頻繁にお飲み物のメニューを手にする旦那様
この場合、サービスとしてはぐいぐいドリンクおすすめをした方が良いのかもしれない
でも慎重に、お二人の穏やかなひとときを崩さないように
そうして料理が進む中、奥様の表情も和らぎ、
下げものをするときもひとこと「美味しいです」と言っていただけるようになった
最後のお食事の提供へ
懐石の中でもご飯をよそいながらゆっくりとお客様と話せるタイミングだ
私「最近ここらへんは雨続きなんですけど今日は天気がもったみたいで!良かったですね〜」
なにげない返事に困らない言葉をおかけしてみた
すると
「そうだったんですか!」
お二人とも、とても笑顔になったのだ
思わぬ感じのリアクションで私も嬉しくなり
私「そうなんです!今日と明日だけ雨マークが消えたみたいで〜良かったですよね〜」
なんて今日天気予報アプリでみたことをパッと思い出し伝えると
旦那様「僕、晴れ男なんですよ!だからですかね〜!」
先ほどの厳格そうな旦那様が、お茶目な素敵な表情でそう仰った
たったそれだけのことなんだけど
なんだかそれが私は嬉しくて
ああ、良かったなと思った
サービスは正解がわからなくて
全てのお客様に同じように関わることもできず
自分のテンションを押し通すこともできるけれど
私は話しすぎないことも大事なのかなと思う
完璧なんてないけれど
お二人が満足して、ここにきて良かったなぁと思ってもらえてたらいいな
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