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人生を変えた番組『必殺仕事人V』〜絵描きからFFからラジオに好きな俳優を呼ぶまで〜

スカパー!後援で #好きな番組 なる企画タグがあったので、これは呼ばれたと思い込み、馳せ参じました。

私がプロの絵描きになり、文筆家になり、
そして「時代劇が好きなのだ!」というラジオ番組のパーソナリティにまでなれたのは、
1985年のTV時代劇『必殺仕事人Ⅴ』が発端です。

「京本政樹」という理想美

細かく言うと、俳優の京本政樹さんがすべての発端。
ちいさい頃より「日本一美しいのは京本政樹」とよく口に出していて、それは、いまのような熱烈なファン(というか研究者)になるずっと前からのこと。

私はいわゆる今でいうバンギャというやつで(不本意な表現だが)、俳優という存在はとてつもなく遠く、ファンになるというような感覚はありませんでした。
ただ、京本さんがテレビに出ているのを見つけると、かならず最後まで観ていたし、時代劇では京本さんが出ないかな〜と最後まで待っていた子どもでした。

私たちミレニアル世代にとっては、京本さんは時代劇というより、現代劇かバラエティ。
『家なき子』の黒崎先生に衝撃を受け、
あの最低教師で有名な(笑)『高校教師』はパート2世代のため、逆に、クールだけど本当はめちゃくちゃ良い先生の印象さえあります。
(最近確認したら、当時のギャルたちはそう思っている)

とくに火曜サプライズの『都バスで飛ばすぜぃ!』は話題になって、超美形なのに、柳沢慎吾さんとコンビで最高に面白い三枚目キャラという印象が私たち世代にも浸透しました。

カレー煎餅を頬張る京さまと、おかきを頬張る柳沢慎吾さんと、困っている河本準一さん

超三枚目だけど超カッコイイと思ってずっと観ていた私がひとつだけ気になっていたのは、
「どうしてこの人はこんなに綺麗なのに、耽美系にいかないんだろう?」
ということ。

いま考えると、マジで勘違い。
京本さんは、ほとんど元祖・耽美系だった!!!

(元祖ってどこまで遡れば良いのか不明だけど)

まず深作欣二監督『里見八犬伝』(1982年)の犬塚信乃で超耽美な美剣士役でブレイク。
そのブレイクを受けて『必殺仕事人V』(1984年)に、超耽美な組紐屋の竜で大ブレイク。

『里見八犬伝』犬塚信乃
『必殺仕事人V』組紐屋の竜

私たちにとっては30代以降の京本さんが馴染みで観る機会がなかっただけで、彼は10〜20代ですでに耽美の極みに上り詰めていた。
なんなら80年代の大いなる耽美ブームを作った礎のひとりでありました。

京本政樹写真集との出逢い

そんな「京本さん、耽美系やればいいのに」と勘違いしていた私ですが、
ある日突然、目覚めの瞬間が訪れます。

家族に「京さま出てるよ〜〜」と教えられて観た、カズレーザーさんと京本政樹さんが出演した「モシモのふたり」というバラエティ番組。
そこでカズレーザーさんが手にしていた私物の写真集。

その表紙を見て、まさに雷に打たれたような衝撃に、腰を抜かした!

これは腰抜かす。

その名も京本政樹写真集『必殺 The bi-kenshi』。
私が思い描いていた理想の京本政樹耽美像、いや、私がずっと理想としていた美そのもの、人生かけて追い求めるべき美が、そこにあったのです!
こわっ!!!

文字通り本当に腰を抜かしてしまった私は、床に座って壁に凭れたまま、人形のようになって呆けてしまったのでした。いやほんとに。(これは家族にとっても語り種)

我に返った瞬間、ネットで写真集を探しはじめたけれどみつからない。古書店に電話しまくってもみつからない。いてもたってもいられず翌日あらゆる古書店を駆け回り、数日後に土砂降りでびしょびしょになりながら、ついに某所で発見し、ほとんど悲鳴をあげて、大切に守るように懐に抱きかかえて帰宅しました。血眼とはこのことでした。

ページをめくるたびに、ぎゃあああ! という声が出る。
家族がドン引きから爆笑になり、最後はほとほと呆れに入るくらい、全ページに悲鳴を上げる。へろへろになって動けなくなり、またページをめくり、人形のようにへたり込んでしまう。

そして本をやっと置いた次の瞬間、机の奥深くをあさり、シャープペンシルを探しだし、いにしえのスケッチブックを探し出し、写真集表紙の「45歳・組紐屋の竜」を描き始めたのでした。
もはや憑かれたような衝動。
何せ私は10代のとき気が向くと描いていた程度の絵をすっかりやめて文学に傾倒していたので、絵を描くという行為自体が10年以上ぶりでした。
もう二度と絵は描かないだろうなあ〜と思っていたのにです。
(※このあと合計6冊も同じ写真集を所持することになった)

そこからすべてがはじまりました。
すぐにこの「組紐屋の竜」を観たい! という衝動で、TSUTAYAのオンラインレンタルで『必殺仕事人V』を注文しました。

そして訪れた、花屋の政こと、村上弘明さんとの出逢い……。

村上弘明という偉大なる伏兵

そもそもバンギャ(不本意)だった私は、いわゆる中性的な男性美が大好きで、男性ホルモンしっかりめの男性美は、ちょっとだけ不得意でした。

ところが、組紐屋の竜見たさに視聴スタートした『必殺仕事人V』で、竜の隣に、何かやたら背の高い、脚の異様に長い、濃いめのイケメンがいるじゃありませんか??

元花屋の政こと、鍛冶屋の政(村上弘明)

一瞬、「この人が竜の相棒なのか、濃いなあ!」とか思った私でしたが、

1話を観て
「え、なんか、花屋の政、すごいかっこよくないか???」
2話を観て
「え、もう、好き……」
3話を観るころには、
「政と竜、もう無理」(白目)

と、ガッツリ、ハートを掴まれたのでした——。

2023年に出した同人誌『はじめての政竜入門』

こうして出逢ってしまった、花屋の政と組紐屋の竜。
ふたりとも背が高く、竜は178センチ、政は185センチで、まるで理想のカップルのような身長差。
竜は色白で、政は色黒。中性的な竜に対して、男っぽい政。
でもむさ苦しさは皆無で、政も体格はいいのに線が細い。

ふたりとも、これぞ70〜80年代に出てくる理想の少女漫画の美男子……! という風貌で、なのに対極的で、まさに陰陽! 陰陽の美!
これほど三次元において、絵に描いたような美男子が、しかもふたりも、隣同士にいたのか? と茫然としました。

そして私は転がり落ちるように、「政竜」という”沼”にハマりこむことになったのです。

(ちなみに村上さんの影響で、男らしい男性美にも目覚め、いまでは濃い侍の代表格みたいな三船敏郎さんのかっこよさも痺れるほど理解できる。「ハンサム」ってことばさえ苦手だったのに、いまは大好物であります。こんな幸せはありましょうか)

絵描きへの道

それからというもの、絵を描き、二次創作小説を書き始め(笑)、同人活動を始めてしまった私。
そのときですでに約35年も前の作品とキャラクターに取り憑かれ、毎日政竜と村上さんと京本さんのことしか考えない日々が始まりました。(怖い)

さらに、「政竜のいる時代劇は消滅の危機に瀕している! なんとか存続に加勢できぬものか!」とソッコー転職。芸能関係の職場に就きました。

なんといっても、ハマったその年に、放送当初から35年くらい経った2017年に「必殺」のパチンコ台の政竜が復活。なんと新録映像を作ってくれた! それが背中を押しました。運命だ!
これに私は希望を持ち、政竜復活にかけて、何ができるかわからないけど、何かせずにはいられない! とがむしゃらに活動をしました。

とにかく、
政竜を復活させたい、せめてどんな形でもいいからまた共演してほしい、そして、政竜(村上さん&京本さん)と仕事をしたい!
という熱い想いに突き動かされたのです。

(※恋愛感情で推しと近づきたい、ワンチャン狙いたいとかではないことは先に断っておきます。強力な根拠がありますがここでは控えます。お察しの方はお察しください。笑)

政と竜のその後の妄想画

そんな活動を続けて2年ちょっと経ったあるとき、まだぽつぽつ年に数枚イラストを描く程度だった頃。
真剣に取り組んだこの絵を見て、アニメーション監督の佐藤懐智さんが仰ってくれました。
「なぜ絵描きにならないの?」と。

「え???」
となった私。ちっとも考えていなかったし、何より自分が絵が上手いと思ったことはなくて、「まあなんとか形にできるかな〜」程度の自己評価だったので、かなりビックリ。
でも、懐智さんが仰ってくれるのなら、すこしは絵が描けるのかもしれない……と思うようになりました。

それから2020年にコロナ禍に入り、芸能関係の仕事を退職してヨーロッパ放浪の旅をしていた私がロックダウンされたパリから帰国すると、日本もロックダウンに。
時間ができたこともあり、絵を描く頻度がすこしだけ上がりました。

そしてコロナ禍のまま2021年に入り、ふとしたきっかけで、絵の展示をする機会を得ます。

同じ年代なのに、京本さんが師と仰ぐ偉大なる昭和の時代劇スター、大川橋蔵さんの絵を描きまくっているKAE氏に声をかけ、「師弟」をテーマに銀座のギャラリー・ピエニュで初の展示を行う決意をしました。

決まってからはアートについて微力ながら勉強をし、いろんな美術界隈の方にお力添えをいただきながら、がむしゃらに作品を作り始めました。
そして「日本の美術史における美男子」や、京本政樹を描く理由について触れたアーティストステートメントも掲げて展示を行いました。

「日本の美男子」展のDM

ここで私は最高に運が良く、美術界隈の人なら誰もが知る『月刊アートコレクターズ』2022年1月号のコーナーに掲載していただく僥倖に恵まれます。これは私の実力ではなく運であり、テーマとギャラリーの魅力ゆえです。

そこから絵描きとして意識的に活動を始めますが、決して順風満帆ではなく、「芸能人をモデルにする」ことの高すぎる壁に苦しみもがくことになります。

政竜からFF16へ

私の試みは一般常識的には無茶なので、厳しいことを言われもしたし、辛すぎて、ときには涙した!……
そんないろんな苦労については端折りますが、読者様に励まされつつ、小説家の助手なんかをしたりしつつ、いろんな人の助けを得ながらなんとか生き延びて、ようやく2023年の春にほとんど初の商業案件として、いきなりビッグなコンテンツに関わることができました。
それが『FINAL FANTASY XVI』の広告油絵の制作でした。

守秘義務もあるし、あまり触れられませんが、チョコボを描いたときには、「政竜同人からいきなり公式のチョコボなんて、思えば遠いところに来たもんだ……」と感慨深かったです。
この仕事は絵について本当に大いに学びになりました。

そして同時期に、政竜活動をきっかけに知り合った方からご紹介いただき、
雑誌の取材でハワイに行けることになり、最高の時間を過ごすことまでできました🌴(笑)。
ここでも全面のライティングだけではなく、可愛い食べ物の絵も描かせていただきました。

さらには、さきに画像でご紹介した『はじめての政竜入門』をひっさげて参加した「文学フリマ東京36」でお声をかけていただき、FMラジオ「We are movie lovers!」にゲスト出演。

それを聞いてくださった制作会社とプロデューサーが「ラジオやりますか!」と声をかけてくださり、10月よりFMフチューズで「時代劇が好きなのだ!」という番組を始めることになりました。


ラジオパーソナリティへ

まさか自分がラジオのパーソナリティになるなんて、夢にも思ってみませんでした。しかも、その第一回と第二回のゲストには、
『必殺仕事人V』でもおなじみの、筆頭同心田中様を演じた山内としおさんがいらしてくださいました!

『新必殺仕事人』より登場した山内としおさん

第三回には、私に絵描きのきっかけをくださった日本版『Rick and Morty』などを監督した佐藤懐智さんをお招きし、
第四回には、『鎧伝サムライトルーパー』や『ゴジラVSデストロイア』のデザイナーである岡本英郎さんがいらしてくださる!

そしてなんと第五回には、
花屋の政こと、村上弘明さんがゲストにいらしてくださることに……!
なったの、です!

豪華な並びにパーソナリティの私が怯む

ひえ〜〜〜!
遠いところに来すぎている!!

でも、ついに6年の時間をかけて、
「政竜と仕事をしたい!」という夢のひとつを叶えることができました!

もちろんどれも仕事をくださった方にいちばん感謝ですが、
京本さんがいなければ政竜に出逢うことがなかったし、
政竜のおかげで村上さんに出逢うこともなかったし、

だからこそ、いまの自分がいます。

そういう自分を「変わった奴」と面白がってくださる方、「時代劇や必殺を愛してくれて嬉しい」と協力してくださる関係者の方々がいらしてくださる嬉しさとありがたさ。
そして同人誌の熱烈な読者の方々、もちろん友人と家族に支えられて、今日に至ります。

まだまだ大変だけど夢は叶う

芸能生活40年キャリアのおふたりを追いかけるのは結構大変で、過去の映像を発掘するのにはスカパー!に加入するのはマストだし(サブスクでは資料保存できないので)、雑誌などの資料も含めて、実はバンドを追いかけるより資金も根気も体力もいることに衝撃を受けています。

しかもふたりが関わる物事で、あちこちに勉強と出費が派生します。
たとえばロケ地巡り、彼らに影響を与えた偉大なる俳優、時代劇や江戸などにまつわる日本文化などなど。

とにかく大変だけど、これは教養が深まるということで、本当に感謝もしています。

もちろん活動そのものも大変なことはあり、手強い課題も残っています。できなかった仕事もあるし悔しい思いもしているし、許せないことだってある。

でも、いまの自分を誰が想像できたのか。家族も友人もなかなかビックリ。
さすがの無謀な私もラジオは予想できていなかったけれど、絶対に何かしらで文化継承に協力するのだ、面白いことをするのだと決めていたので、ようやくここにきて形になりそうなことが本当にありがたく、嬉しく思います。

村上さんのラジオ出演が決まった瞬間、連絡を受けて、思わず「ああ、私これで死ぬんですかね……」と口にしてしまいました。
それから「夢って本当に叶うんだな……」と、ぼーっとしながら、紅茶を飲みました。絶対に叶えると決意していたけれど。

でも、まだ叶っていない夢もあるし、
最終的に目指すところは”一緒にお仕事”ではなく、本当に(何かしらの形で)政竜を復活させること、あくまでちゃんとアーティストになること、クリエイターとして作品を作り、政竜から学んだ美を残すこと、そして文化継承なので、今後はより一層、自己研鑽に励みたいと思います。


そんなわけで、長文になりましたが、
私の人生を変えた好きな番組は、
政竜を生んでくれた番組、『必殺仕事人V』です。

これからも、なんとか踏ん張り、がんばろうと思います!
どうぞいろいろと応援していただけると力になります……!


もちろん、いつでも絵の仕事、執筆の仕事、お喋りの仕事など募集しております。時代劇に関することでなくても大歓迎なので、ぜひお声かけください! メール:nuiarisawa@gmail.com


Instagram

Twitterは @masaryubabyです!


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