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おばあちゃん達からのおくりもの

「お墓は楽しいところ」
突然こんなことを言うとびっくりされるかもしれません。
だけど、これはわたしが心から思っていることなのです。

沖縄本島の中南部では毎年お墓の前に親戚が集まり、お酒を飲み、ごちそうを食べる行事があります。それを清明祭(ウシーミー)といいます。4月~5月前半の過ごしやすい時期に催され、先祖供養の習慣です。中国の習慣が300年以上前に沖縄に伝わってきたのだそうです。

この清明祭。家によって異なりますが、子供からお年寄りまで数十名がお墓の前に集まり、食事をします。

今思えば、大人は大変だったと思うのです。まずは一番の年長者であるおばあちゃんが日取りを決めて参加する親戚に連絡をし出欠を確認、主に母が重詰めを用意し、姉がお餅屋さんやお菓子屋さんに注文をしていた品を取りに行き、父がみんなで食事をするための大きなブルーシートを用意したりと。家族(主に大人)のチームプレーでした。

子供の私は気楽なものでした。当日はごちそうと、この行事の時だけ買ってもらえる「レモンケーキ」というお菓子を食べることができるのと、親戚のおじちゃん、おばちゃん、いとこ達に会える時間をめいいっぱい楽しめるのです。

「もう5年生になったのか。お姉さんになったねぇ。」と、目を細めて成長を褒めてもらえるのが嬉しかった。毎日会う家族にはなかなかそういう言ってもらえませんから。

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これは実家のお墓です。

家族よりももう少し大きな「一族」というくくりで所有される沖縄のお墓。そのため、県外のお墓よりも大きく、広いことで有名です。

だから大勢で集まって、ピクニックのようなひとときを過ごすことができるのです。

きれいに詰められた重詰め料理
ご先祖様のお金(ウチカビ)を燃やす青い炎
刈られたばかりの草の匂い
5月の沖縄のまぶしい太陽の光
広い木陰を作り出してくれたモモタマナの樹
大人たちの会話

お墓の前で過ごした時間は子供心をわくわくとさせました。

おばあちゃんが亡くなった今、我が一族の清明祭の習慣は、途絶えつつあります。誰かが悪いのではありません。中心となってくれていた親戚は歳をとり、その下の世代は沖縄から離れてしまったりと、自然とそうなってしまいました。
伝統行事はこうしてなくなってしまうのだな、ということをひしひしと感じています。

でもあの日々は確かにあり、心の中に鮮明に残っています。楽しくて、やさしい1日でした。

おかげで「お墓は楽しいところ」という価値観を築けています。

それは当たり前のことではないのですよね。
私はこの価値観を「ご先祖様やおばあちゃんたちからの贈り物」と、思うようにしています。

お墓って、自分が死んでしまったら入る最後の場所。死は誰にでもやってくる…。その場所に、安心感や愛着を持てていることは、自分にとって幸せなこと。

沖縄を離れてしまい、県外の出身の夫と結婚をした私には、かつての沖縄のように清明祭をすることは難しいと思うのです。実家のお墓に入ることはかないません。

だけど、やっぱり「お墓は楽しいところ」

これからも死ぬまでそういう風に思っておきたいし、その思いを次の世代にもつなげて行きたいと私は思います。

まずはお墓参りですね。わたしの夫の家族のお墓は県外にあるので今すぐに行くことはできません。
今日は、心の中で思うことにします。

暖かくなる頃に、お花とお酒とおいしい何かを持ってプチ清明祭をできるといいな、と思っています。

皆さんはお墓への思い、何かありますか?

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。スキ、コメント、サポートがとても励みになっています。また遊びに来てください^^