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とある琉球料理と母の告白。
沖縄でも朝晩は肌寒くなるこの季節
時々、おばあちゃんは真っ黒い汁を作ってくれたものです。
それは「イカスミ汁」という琉球料理でした。
かつお節でとっただし汁に大根や青菜などの野菜と豚肉をいれてしばらく煮込んで、いちごくらいの大きさの小さい袋に入ったイカ墨と塩を入れたら出来上がり。イカの身は必ずではなく、入っていない時もありました。
子供の頃は真っ黒いその見た目が苦手だったので、いただくときは目を閉じて見ないようにするか、目線を天井を向けながら口にしていた記憶があります。
はたからみると変な子ですね。
そうまでしてでも飲んだのは「とにかく身体にいい」という、おばぁちゃんの教えと、意外にも味にクセは少なく、嫌いではなかったからでした。
そういえば、おばあちゃんは作るけど、お母さんが作ったことはなかったのがイカスミ汁。食べているのも見たことがなかった。
その理由が分かったのは先月のこと。
産後の私のために食事を作ってくれていた母が「イカスミ汁 作ってあげたいわ」と言いました。
聞くと、沖縄では昔から産後の母体の回復にイカスミ汁が良いとされていたそうです。
調べてみると、イカ墨は身体の材料になる「アミノ酸」、傷の治癒を助ける「ムコ多糖類」を含むようです。ちなみにムコ多糖類は、ウナギやスッポンにも含まれています。
黒い成分「メラニン」は抗菌作用があるそうです。
墨を加えた「黒づくりのイカの塩辛」が長く日持ちするのは、その作用によるものだそうです。
お産は、自然分娩にしても帝王切開にしても内臓や粘膜に傷を伴い、出血が何日も続きます。そして細菌感染のリスクもあるので、その作用に期待できる効果は大きいなと、今回初めて知ったのでした。
「でも、お母さんが食べているのを見たことがないんだけど。」と言ったら、「イカスミ汁はもう食べたくない」と告白したのです。
4人の子供を産んだ母は、産後に度々イカスミ汁を食しなければならなかったようで、その時に「一生分食べてしまった」のだそうです。
うんざりしながらも断ることもできず渋々食べている母の顔が目に浮かびます。
しかし、母がイカスミ汁と距離をおく理由がやっと分かったところで、私は嫌というほどにイカスミ汁を食べていません。
2ヶ月経ち、産後の回復はだいぶ進んでいるものの、ここまで調べるとイカスミ汁を食したくなっています。
そういえば、イカ墨はどこで買ってくるんだろう?と不思議だったことを思い出しました。
おばあちゃんの買い物には何度もついて行きましたが、それを買うところは見たことがありませんでした。
いまだにおばあちゃんがイカ墨をどこで仕入れていたのかは謎です。
しかしそれで困ることはありません。
今は便利な時代。ネットで検索をかけると、Amazonで買うことができるようです。
レシピを公開してくださっているのも見つけました。
近々、チャレンジしてみようかな。
そういえば、最後に食べたイカ墨料理は新婚旅行で訪ねたベネチアのイカスミパスタでした。
レストラン「フロリダ」
トマトの酸味とマッチして、すごくおいしかったです。
コロナが発生する直前に行った旅行なので、懐かしく思ったり。
心疾患の発症が少ないことで脚光を浴びた地中海料理(イタリア料理)と、世界長寿を誇る琉球料理での「イカスミ」という共通項を見つけて、面白いなぁと思ったり。
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