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『では, 予防歯科の話をしようか』歯科医療に携わる全ての人にお勧めの一冊.

2011年の初め、開業して5年以上経過していた時、様々なところからお声かけを頂いて、講演や執筆をしていました。
その時に、出会った一冊がこの本です。

その頃、予防歯科では『管理型』という言葉が流行っていたのですが(もしかして、今も...)、その言葉に違和感を感じていました。
自分自身が管理されるのが嫌いなので、患者さんを管理するのはどうかと。

実際どうしているかというと、担当の歯科衛生士と共に、基本ベースはあるけど、患者さんの、その時その時の状況に合わせて予防プランを考えていこうと。

ただなんとなくやっていたので文章化が出来ていませんでした。そんな中、この本は見事にまとめられていて、僕のバイブルとなりました。

講演で引用させて頂き本の紹介をしていたら、長崎のある先生が大野先生にその話を伝えて下さり、大野先生から直接連絡を頂きました。それから僕が上京するタイミングで、実際にお会いする事に。

それをきっかけに、現在も色々と導いて下さり、当院の10周年記念講演会で講師として講演して頂きました。大野先生と出会えてなければ、今の僕はありません。僕のマスターの一人です。

写真をみたら解ると思いますが、事ある毎に何回も読み直し、その度に学びがある本です。今回、今の僕が付箋した箇所をnoteします。

1. 健康と病気はあくまで相対的な関係

健康=病気でないこと
病気=健康でないこと

これらは2つのコインの裏表の対極にあるのではなく、連続的な関係にあるという事。それでも治療の介入をすべきかどうかの判断をするときには、線引きが必要になる。そこでクワドランドで考えるという事を示してくれています。クワドランドに関しては、著書に詳しく書かれているので気になった方は、是非読まれて下さい。

2. 歯科臨床では治療が“守備”で、予防が“攻撃”

歯科医師として充実した“予防"に携わるには, まずは治療に長けていることが必要になる.

「パーシャルデンチャーの不具合を訴えている患者に, いくらプラークコントロールの大切さを説いても, 意味はないだろう?」本当にそうで、予防のシステムに一生懸命な先生達は、この視点が欠けているような気がします。歯科衛生士の離職率が高いのは、僕はココにあると思っています。

逆もしかりで、スタディーグループで治療に一生懸命な先生達は、治療終了時がGoal、症例発表になっていて、患者さんが実際に快適に食事が出来ているかなどの報告は、ほとんどありません。

本当に“予防”を必要としているのは, 治療が必要になる可能性がきわめて高い, リスクの高い人たちだ. 君が予防を一生懸命やればやるほど, 君の治療の技術や知識が必要になるし, 治療に一生懸命になればなるほど, 君は予防の知識や技術が必要になる.

3. リスクレベルと予防行動の関係

カリエスの発生や進行の確率は, その時のリスクレベルによって上がり, 未来の患者自身による予防行動によって下がる.

「予防行動に働きかけるのが大切で, モチベーション強化なしのプロフェッショナルクリーニングは要注意だ.」システム重視の予防を進めていると、この問題が出ていると思います。今回、検査の部分は紹介出来なかったのですが、検査、検査に追われ、実際の患者さんと向き合っていないという事が起こっていると僕は思います。

そのために、一生懸命に予防を進めているのに、患者さんが離れていく、そして歯科衛生士も仕事のモチベーションが下がり離職や転職につながっていると危惧しています。

歯科医院で予防に取り組んでいるのに、何か上手くいっていないぞと思われた先生は、是非、この本を読まれて下さい。ヒントがたくさん散りばめられています。

4. 売れないと思われた本が売れている

大野先生が最後に、

この本の内容はとても抽象的だ.
綺麗な臨床写真や, 明日から使えるノウハウは一切ない.
出版の立場からみると, 時代に逆行している"売れない本"の典型だ.

僕が聞いたときは、確か第5版だったかと。重版が続いています。この本が最初に発売されたのは2010年の末なので、もう10年以上が経過しています。
CT、マイクロスコープ、CAD/CAMなど、次々と新しい機器、治療が出ていますが、僕は来月のオンライン講義で、東北大学歯学部の6年生の皆様にも、この一冊は、是非読むようにと強く勧めます。

今回、久しぶりに読み返してみたのですが、前と付箋をつける箇所が変わっていて、本当に奥深い本です。
マーロウ先生のお話を実際に聞いてみたいと思うのですが...。


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