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しっぽのある日常

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愛犬の犬生の日記
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#シー・ズー

そらまめ

そらまめ

「そらまめかぁ……」

 これが最初の印象だった。

 知り合いのおばさんから、

「シーズーの子犬、いたよ」

と、写真が送られていた。

 約二ヶ月前まで、同じシーズーを飼っていたのだが、そのコはまんまる顔で誰が見ても正統派のザ・シーズーだった。

 なので、送られてきた写真に写るこのコの容姿がまさにそらまめだったので、あの呟きになったのだ。

「う〜ん、そらまめかぁ……」

とかいいつつも、

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余命を生きる

余命を生きる

 病院に行かなくなったななは、すこぶる元気だ。

 家の中では前足だけで移動する。

 ときどき、腫れた後ろ足を上手く使って歩くこともあった。

 お散歩は抱っこしておしっこポイントまで連れていき、後ろ足を支えながらではあるが、自力で排泄していた。

 マンマちゃんもモリモリ食べ、おやつも食べる。

 足の異常以外は、入院前と変わらない。

 いつも家族の真ん中になながいる。

 お出かけするとき

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死期に向かうということ

死期に向かうということ

 治療を止めてから、三ヶ月余り。

 後ろ足の腫れがなくなり、元の太さより細くなった。

 免疫力が弱くなり、躰全体がベタベタになってしまった。

 これは、なながもともと持っていたマラセチア(カビの一種)が悪化したものだと思われた。

 マンマちゃんも食べる量が減り、残すことも増えてきた。

 そのうち器から食べなくなり、手から少しだけ食べることが続き、ついには要らないという日が増えてきた。

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中治り現象

中治り現象

 人間には「中治り現象」なるものがあることは知っていた。

 死ぬ数日前くらいに、それまで食べることもできないくらい弱っていたのに、急に食べられるようになったりすることがある。

 まさに、それがななに起こった。

 サークルで寝ていたななが起きたので、

「マンマちゃん食べる?」

と一粒つまんで口元に持っていった。

 パクリと食べたので、一粒づつゆっくりと食べさせた。

 気が付くと片手いっ

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骨になっても、なな

骨になっても、なな

 ななが死んでから夜が明けるまで、家族とななの話をした。

 動物病院が始まる時間に、挨拶を兼ねて棺を貰いに行く車中、ななの話をしながら泣いていた。

 棺に入れる頃には、ななの躰は硬直していた。

 花を買いに行き、マンマちゃんやおやつを棺に入れ、ペット寺院で葬式を執り行うときも、ハンカチが手放せない。

 家族で話をしては涙を流し、お経をあげてもらっている最中も涙を流し、この日はずっと泣いてい

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幽霊は信じないけどね

幽霊は信じないけどね

 ななのいなくなった我が家。

 ときどきななの気配を感じる。

 例えば、自室にいるとき。

 ふと、背後に視線を感じたり、寝ているときに掛け布団の上を遠慮なく踏んづけて歩くのを感じたり。

 耳元でため息をつく音だったり、廊下を小走りで走る足音だったり、とにかく、そこかしこでななの気配を感じる。

 家族も何かしらの気配を感じていると聞いて、ななはまだ、家にいるんだと意見は一致した。

 もし

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集大成

集大成

 一番初めに迎えたコは、マルチーズ。

 名前は、まるちゃん。男の子だ。

 超未熟児で、成犬になっても片手に乗るくらいの小ささだった。

 老衰だったが、寝静まった時間帯にひっそりと死んでしまい、たった八年の寿命だった。

 獣医いわく、

「よく八年も生きたね」

 だった。

 数年後、家族がシー・ズーを飼いたいといい、ブリーダーさんから迎え入れたコの名前は、ぴーちゃん。男の子だ。

 生後

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カテゴリー

カテゴリー

 ななは、シー・ズーだ。

 紛れもなく、シー・ズー。

 子犬と呼ばれる頃くらいまでは確かに、シー・ズーの顔つきだった。

 ところが、成長するにしたがって、どことなくシー・ズーの顔つきとは微妙に違うのか? と思われる独自の路線を歩みだした。

 鼻ぺちゃではなく、マズルが少し長くなりはしたが、雰囲気はシー・ズー。

 横から見るとやっぱりなんか違う。

 尻尾も胴体も長い長い。

 一応、正統

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ご挨拶の三段活用?

ご挨拶の三段活用?

 ななは散歩中、わんこに会うとご挨拶するコ、しないコ、それ以前の問題のコに分けられる。

 おとなしいめのわんこには、控えめにご挨拶をする。

 ちょこっとやんちゃなわんこには、挨拶されても微動だにしない。

 大型犬に関しては、豆粒くらいにしか見えない距離から、ぴたりと立ち止まりしばらく様子を見ていたかと思うと突然、抱っこしろと必死にアピールしだす。

 抱っこが完了すると、大型犬が近づいてお尻

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危険なカーテン

危険なカーテン

 ななは春と秋の季節は、窓辺でお昼寝することがあった。

 ぽかぽかおひさまが窓越しに入り、気持ちが良かったのだろう。

 

 ある日、かすかに何かの鳴き声らしき音が聞こえてきた。

 ななの声か? と声のする部屋へいってみると、後ろ足にカーテンが絡まり、片足が上がったまま、身動きが取れなくなったななが助けを求めて、

「くぅ〜ん、くぅ〜ん」

と、鳴いていた。

 「なな!どうした!?」

 

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ちみっと踏む

ちみっと踏む

 家族で朝食を食べている時間は、たいていななはクッションの上で肉球のお手入れをしている。

 たまに、ぽつんと独りが寂しいときがあるらしい。

 ダイニングテーブルの下、家族の足を踏みつけてアピールをする。

 「なな、痛いよ」

 ちみっと足の指先を絶妙な強さで踏んでいく。

 しかも、往復で。

 家族全員でななの名前を呼ぶと、気が済むらしくまた、クッションに戻り肉球のお手入れをはじめる。

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ドスコイ、なな

ドスコイ、なな

 不機嫌ではないのだが、つまんない顔。

 この写真を見るたびに、なんだか「ドスコイ」の言葉が浮かんでくる。

 

お散歩、行かないとダメ?

お散歩、行かないとダメ?

 あくび、小げぶを一通りこなし、目で訴える。

 ※小げぶ
  やりたくないことや嫌な
  ことがあると小さな
  ゲップがでるのだ。

これが、これ

これが、これ

 うちのコになった当初

 ……さらに、二ヶ月が経ち

 すでに成犬と間違えられていた。