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しっぽのある日常

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愛犬の犬生の日記
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#可愛い

そらまめ

そらまめ

「そらまめかぁ……」

 これが最初の印象だった。

 知り合いのおばさんから、

「シーズーの子犬、いたよ」

と、写真が送られていた。

 約二ヶ月前まで、同じシーズーを飼っていたのだが、そのコはまんまる顔で誰が見ても正統派のザ・シーズーだった。

 なので、送られてきた写真に写るこのコの容姿がまさにそらまめだったので、あの呟きになったのだ。

「う〜ん、そらまめかぁ……」

とかいいつつも、

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目が三角

目が三角

 ななはお出掛けが大好きだ。

 家族が出掛ける用意をすると、自分も一緒に行けるのかどうかで、ソワソワしだす。

 寝ている風を装うななの前をウロウロしていると、関心がなさそうな態度をとる。
 が、明らかに目が動きを追っているのだ。

「ななも行くか?」

 この言葉をかけると、即座に反応して顔もお目々もまんまるになり、お鼻はウルウルの超絶可愛い姿に変身する。

 お出かけの洋服を見せると、自ら頭

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マンガみたい

マンガみたい

 ななのマンマは、四回ほど替えている。
 二回目に替えたマンマちゃんは、軽いパフ状のものにした。
 だが、これを選んだ自分を罵ってやりたかった。
 計量カップに適量を入れ、目の前で少量づつあげる毎朝の光景のはずだった。
 最初は普通に食べていたのだ。
 突然、動きが止まり、硬直し、そのまま横倒しになった。
 最初は何が起こったのか理解出来なかった。
 倒れたななを触ると冷たくなっていた。
 マンマ

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哀愁のミッキーマウスドーム

哀愁のミッキーマウスドーム

 家族がななのために奮発して、ピンクのミッキーマウスドームを買ってきた。
 耳も付いていて、ワッフル素材の可愛いドームだ。
 中には同じ素材の座布団が入っていて、気持ちよさそうなものだ。
 ななもなんの躊躇もなく普通に入ってくれた。
 それから数日ののち。
 中の座布団を掘り始めた。
 ドームが斜めに傾くくらい勢いよく掘る。
 飽きると外に飛び出して、しばらくドームを観察する。
 ついに耳の存在に

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至福のとき

至福のとき

 毎朝、マンマちゃんタイムが終わった六時半から七時の間、クッションの上で肉球お手入れタイムに突入する。
 家族は自分の支度や朝食の支度でバタバタしている。
 ただ一人、その時間に起きる家族がいる。
「なな、おはよ」
と挨拶もそこそこに、リラックスしたななに覆いかぶさり、頭をチュコチュコとチュー攻めしたり、お手入れ中の肉球をグリグリ触ったりする。
 この行為を我が家では「がばちゅー」と呼んでいる。

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小石事件

小石事件

 こども時代のななの散歩は目が離せない。

 地面の匂いを嗅ぎながら歩く姿は、いつもと変わらない。
 ときどきピタリと立ち止まり、動かなくなることがある。

 数秒後、歩き出す。

 かすかに、飴を舐めるかのような音が聞こえてきた。

 音はななの方から聞こえてくる気がした。

 よくよく見ると、ななの口元が動いていた。

 ななをホールドして口の中に指を入れると、ポロリと小石が飛び出してきた。

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小石事件Part.2

小石事件Part.2

 ななの肉球は赤ちゃんの肉球かと思うほど、ぷにぷにで柔らかい。

 これは、毎日の入念なお手入れの賜なのだが、砂利道ではその肉球は命とりだ。

 お散歩終盤、急に後ろ足を庇うような歩き方をし始めた。

 片脚だけ地面に付けられないようだった。
 怪我したのか、病気なのか、親ばかなくらい大袈裟に心配したが、いやいや、冷静になれ、私。

 普通に考えれば、アレかもしれない。

 肉球の中をグリグリ指で

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三段階

三段階

 家族で出掛けて、ななだけがお留守番という場合がある。

「ただいま〜」

と、玄関のドアを開ける。

 最初に足を踏み入れた者には、最上級の縄振り尻尾の恩恵を受ける。
 
 二番目に足を踏み入れた者には、左右に激しく尻尾を振る歓迎を受ける。
 
 三番目以降は玄関にななの姿はなく、家族のいるリビングで興奮で体温上昇した躰を掻くのに必死になるので、なんの恩恵もない。 

 

ときとして、控えめ

ときとして、控えめ

 ワンコちゃんにも、嫉妬なるものが存在するのだと初めて知った。

 お散歩途中の知り合いのワンコちゃんに会ったときのこと。

「可愛いね」を連発し、撫で撫でしていたのを後ろの方で見ていた、なな。

 いつの間にか、撫でられていたワンコちゃんの近くで頭をさし出してじーっと何かを待っていた。

「ななの頭も撫でていいぞ」と言わんばかりの態度に、すっごい控えめな嫉妬を垣間見た気がした。

病は突然に

病は突然に

 ななの喉部分に大きなデキモノが現れた。

 かなり大きなもので、少し臭いもして触るとぬめり感があった。

 どう考えてもオデキではない。

 何かの病気だとしたら、嫌な予感がした。

 病院に連れて行き、待合室で順番を待っている時間はいつも以上に永く感じた。

 先生からは、かなりヘビーな言葉が飛び出した。

「これは、癌だね」

 嫌な予感は当たってしまった。

 検体取って病理検査して、結果

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今日もいっぱい食べましたよ

今日もいっぱい食べましたよ

 手術後、ななは一週間入院を余儀無くされ、初めて家族と離れることになった。

 麻酔から醒めた頃に病院から連絡が入った。

 その日の夕方から毎日、お見舞いに行った。

 手術した日はまだ意識が朦朧としていて、脚には管が繋がったままの痛々しい姿だった。

 名前を呼んでも無表情に近かったが、家族が来たことは分かっているらしく、ゲージの中からじーっと見詰めていた。

 この日は、ななも疲れているから

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はやくお家に連れて行け

はやくお家に連れて行け

 ななが入院中、毎日お見舞いに行っていた。

 手術当日以外は、必ず抱っこしてひとときを過ごしていた。

 ななは、ぎゅっと腕をつかんで離さない。

 毎回、ゲージに戻すのが忍びないほどだ。

 いっそ、泊まり込みができるなら、退院まで一緒にいたいくらいだ。

 来るときは、ななの甘えた鳴き声が聞こえてきたが、病院を出るときは、ななの寂しそうな鳴き声が聞こえてきた。

 病院に置いていかれるから、

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腐っても、抗がん剤

腐っても、抗がん剤

 退院後、いよいよ治療が開始する。

 抗がん剤は十回。隔週一回づつ、注射を打ちに行く。

 あとは飲み薬を三日に一回のペース。

 最初の数回の注射では、さほど体調の変化はみられなかった。

 でも、回数を重ねていくと病院からの帰り道、ななはとてもダルそうな様子をみせるようになった。

 でも、食欲はいつもと同じだったのが、救いだ。

 最後の抗がん剤を打ち終わった頃には毛並みも心なしかパサつい

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あれ、また?

あれ、また?

 抗がん剤治療を終えて、経過観察をはじめてから約一年。

 尻尾のつけ根あたりに、小さなオデキみたいなものが二箇所。

 再び、嫌な予感。

 急いで病院に行くと、再発だと言われた。

 検査結果がでるまでの一週間、毎日、祈っていたが駄目だった。

 腫瘍は早めに取り除いたほうがいいと言われ、二回目の手術をすることになった。

 でも、完治はしないと言われた。

 抗がん剤治療をしても、現状維持。

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