午後ロー放映希望!怪作アクション映画「マンハント」 (2022年映画記録 3)
“マンハント枠”。
数年前、俺が勝手に提唱した単語だ。
世間的評価は低い。俺自身も名作だとは感じない。友人にも積極的には勧められない。しかし、なぜか定期的に観たくなる中毒性を持つ…。
そんな作品を指し、俺は“マンハント枠の映画”と呼んでいる。
この度、その名の由来となったアクション映画「マンハント」を久々に鑑賞した(二年ぶり三回目)ので、noteに記録させて頂く。
(以下、敬称略)
本作は「マトリックス」にも大きな影響を与えた香港ノワール・アクション映画の巨匠:ジョン・ウー監督が手掛け、2017年に公開されたサスペンスアクション映画である。
原作は西村寿行の『君よ憤怒の河を渉れ』。1976年に高倉健主演で映画化されており、本作はその再映画化作品(或いはリメイク)となる。もっとも、内容は大幅に異なっているが…。
「男たちの挽歌」「フェイス・オフ」「ミッション:インポッシブル2」「レッドクリフ」──。
そんな有名作品を手掛けた大御所監督が日本ロケを敢行し、著名な日本人キャストが数多く出演しているにも関わらず、本作はそこまでヒットした様子はみられない。Wikipediaによると、国内の興行収入は3.4億円程に留まったらしい。
この理由については作品の評価以前に、そもそも福山雅治とジョン・ウー、両者のファン層が全く噛み合っていなかったのではないか…?と勝手に想像している。
さて、そんな本作の魅力は“開き直った荒唐無稽さ”、これに尽きる。
現実味よりも“ケレン味”を重視するジョン・ウーの作風が存分に溢れている。いや、溢れ過ぎているのだ。
現代日本を舞台にしているとは思えないほど乱れ飛ぶ多数の銃弾。
リアリティよりも“ジョン・ウー的格好良さ”を優先したアクションシーン。
“ノルマ消化”と言わんばかりに登場する白い鳩(ジョン・ウー作品の恒例要素)。
あまりにも“やり過ぎ”な製薬会社の陰謀。
その結果誕生した、素手でコンクリートをも破壊する“強化人間”。
恐らく福山雅治主演作品で初めて登場する単語:“戦闘力”“超戦闘能力”。
このように、本作は決して真面目な映画ではない。CMから硬派なサスペンス映画を期待した方は、鑑賞後に唖然としたはずだ。
「金曜ロードショー」より「午後のロードショー」向き、また「アカデミー賞」より「ゴールデンラズベリー賞」が相応しい作品…という言い方もできよう。
「マンハント」とは、そんな珍妙な怪作である。
…とあれこれ書いたものの、俺は決して本作を貶しているつもりはない。
俺は「マンハント」が好きだ。そうでなければ三度も観返さない。
本作の魅力を語る上で外せないのは、やはり漫画的でアクの強いキャラクターだろう。
桜庭ななみが演じる流石に新米過ぎる新米刑事、池内博之と國村隼が演じる大物風小物悪役親子、ハン・ジウォンとアンジェルス・ウーが演じる義姉妹の暗殺者コンビなどは特に印象深い。倉田保昭が演じた、人間強化実験の被験者となり大暴走する路上生活者も忘れてはならない。
いずれも、主人公達(福山雅治とチャン・ハンユー)を食ってしまうほどの強烈な個性を発揮する人物だ。
真新しさや新鮮味こそ感じられないものの、アクションシーンも魅力満載。
ジョン・ウー作品に頻出するスローモーション演出は比較的抑えられており、程よく“気持ち良さ”を感じるスピーディーな場面が数多く登場する。
特に暗殺者姉妹が随所で見せる機敏で華麗な身のこなしや、大阪の街中を舞台にした中盤の逃亡シークエンス(特にボートチェイス)は何度観ても楽しい。
更にクライマックス、敵の本拠地内部で反撃を開始してからの展開は壮絶だ。
“絶対安静”と診断された設定はどこへやら、福山雅治演じる主人公:矢村はバールと拳銃を手にし、容赦無く大量の敵(非戦闘員も含む)に鉄槌を下す。
俺は福山雅治主演作品を「ガリレオ」シリーズ程度しか知らないが、矢村は福山雅治史上最も大暴れし、最もキルカウントが多いキャラクターではないだろうか…?
このように、奇妙でありながらもどこか愛嬌と中毒性のある「マンハント」。
いつか「午後のロードショー」で放映される機会があれば、“B級アクション映画の掘り出し物”として、一部界隈でカルト的な人気を博すと思われる。
(見出し画像は公式サイトより引用しました。)