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the pillowsが人生を豊かにしてくれた
ロックバンド:the pillows(以下pillows)が解散した。Wikipediaの冒頭文も、いつの間にか「1989年から2025年まで活動していた日本のロックバンド」などと改訂されている。今や、彼らは過去形となってしまった。
多くのバスターズの皆様同様、発表から一晩経ってもなお喪失感は消えない。だが、いつまでも失ったものを考えてばかりではいられない。今の自分の人生に繋がる思い出を振り返り、俺の人生を豊かにしてくれたpillowsに対する感謝の気持ちを込めて、できる限り前向きに本稿を認めていきたい。
遡ること約15年前、高校生時代。熱心なMr.Children狂だった(今もだが)俺は、彼らがカバーした楽曲「ストレンジカメレオン」をきっかけにpillowsを知った。
特に高校〜大学時代という多感な青春時代を、俺はpillowsの沼に浸かりながら過ごした。その間、幅広い楽曲群が耳を潤してくれたことは勿論だが、pillowsが俺にくれたものは楽曲だけではなかった。pillowsは俺にとって、今の嗜好に繋がる様々な文化の入り口になってくれた、いわば「ゲートウェイバンド」とでも言える存在だった。
例をいくつか挙げよう。
まず、pillowsが主題歌・挿入歌(何と10曲以上も)を務めていたアニメ「フリクリ」を鑑賞した。その瞬間、ジブリ作品以外のアニメをほぼ観ない生活を送っていた俺の人生に、新たな彩りが加わった。鮮烈な映像とふんだんに使われる楽曲、そして幾分かシニカルな物語は、アニメに疎い俺にとっては刺激が強過ぎたかもしれない。しかし、そのお陰で高校生時代に持っていた、あるいは当時の世間を取り巻いていた「アニメ文化に対する偏見」から一気に解き放たれ、以後の人生で様々な名作アニメと出会うことができた。直近の例では、「フリクリ」と出会わなければ、きっと「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」(「フリクリ」監督・脚本家が携わっている作品)を観に行くこともなかったかもしれない。
また、ミスチルが参加しているpillowsトリビュート盤「SYNCHRONIZED ROCKERS」で、ストレイテナー・ELLEGARDEN・GOING UNDER GROUND・BUMP OF CHICKENといった他参加ロックバンドに触れた。その影響もあって、以後はいわゆる「ロキノン系バンド」全般が好きになり、より幅広い楽曲を聴くようになった(無論、ミスチルとpillows好きは据え置きだ)。虚実は不明だが、音楽の趣味は二十代半ば頃までで固定される、という説を耳にした経験がある。その点、俺の音楽的嗜好を決定付けたのは、確実にpillowsと言ってよい。
そして、愛読書となった漫画『惑星のさみだれ』と出会ったのも、pillowsがきっかけだ。pillowsの楽曲名を重要アイテム・必殺技名に引用している本作は、マイナーな出版社・雑誌(少年画報社『ヤングキングアワーズ』連載)から発刊されている。比較的メジャーで触れる機会が多かった出版社(集英社・小学館・講談社・スクウェアエニックス)以外から刊行された漫画を初めて手に取ったのは、この作品が初めてだったかもしれない。自分が知っていた世界と文化の狭さを知る、一つのきっかけになったことは間違いない。
バンドは解散しても楽曲は残る。不祥事を起こして全曲配信停止になるわけでもなく、購入したCDも消えないのだから。
それに、未だpillowsを知らない人々がpillowsへと至る可能性がある、強力な導線も存在する。先に述べた、「フリクリ」の監督・脚本家らが結集して作られたアニメ「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」だ。
劇場先行上映版が大ヒットを記録している本作は、何かと前半の衝撃的な展開ばかりが話題に上げられがちだが(本日正式にネタバレが解禁されたが、念の為本稿では伏せておく)、俺個人は後半のポップな作風をとても好ましく思っている。鬱屈を抱えつつもバイタリティに溢れる若々しいキャラクターや、ヴォーカル入りの劇伴の使い方は、どうしても「フリクリ」を連想せざるを得ない。今後のTV版放映にも非常に期待が持てる作品だった。
そんな本作の大好評がきっかけとなり、スタッフ繋がりで「フリクリ」へと遡り、作中でこれでもかと流れるpillowsに興味を抱く方は少なくない……と俺は考えている。そうすればpillowsの再評価にも繋がり、新世代のバスターズの獲得にも至るだろう。バンドが解散してもなお、リスナーが存在する限り、音楽は生き続けるはずだ。
最後に、これまでの人生で最も聴いたpillows楽曲を挙げ、本稿を締めさせていただく。
「Crazy Sunshine」。特に大学生時代の四年間で聴いていた一曲だ。調子上がりの時も、物事が上手くいかない時も、俺の有線イヤホンからは常に「Crazy Sunshine」が流れていた。俺は疾走感のあるメロディーと「やぶれかぶれ」にも感じる歌詞が合わさったタイプの曲が好きだが、本作もそれに該当する。iPhoneから本作をかけ流す度に、大学生時代に使っていたオレンジ色のiPod nanoの肌触りさえ思い出せてしまうのは、本作が俺の体の中に溶け込んでいるからだろう。
また、本作は「フリクリ」第4話における名場面(隕石型爆弾打ち返しシーン)でも、非常に劇的かつ印象的な使われ方をしている。観た方ならば絶対に耳に残っているだろう。そして、この曲を気に入っている/気に入った方は是非「フリクリ」第4話を鑑賞して頂きたい。当該シーンで視覚と聴覚が奪われ、一生記憶から消えなくなることを保証する。
※サムネイル画像はAmazon商品ページより引用しました。