2021年に観て印象深かった映画を振り返る 14 十一月編 その2
まえがき
2021年も残すところあと十日ほど。現状十二月に観た映画は十作品にも満たずさほど印象に残っていないので、これから月末にかけて観る作品次第で「◯月編」は今回の記事で締めくくることになりそうです。
そして最終的に「2021年に観て印象深かった映画を振り返る 一年間のまとめ(仮)」といったような記事で、今年観た作品の総括をしようかと考えています。どうにか今年中に書ければ良いのですが…。
「シドニアの騎士 あいつむぐほし」(2021年)
────身長差15メートルの恋。
未知の生命体・ガウナに地球を破壊され、かろうじて生き残った人類は巨大な宇宙船「シドニア」で旅を続けていたが、100年ぶりにガウナが現れた。
再び滅亡の危機に襲われた人類だったが、人とガウナから生み出された白羽衣つむぎや人型戦闘兵器・衛人のエースパイロットである谷風長道の活躍により、ガウナをいったん撃退。なんとか勝利をおさめたのだった。
あれから10年──。シドニアの人々は、つかの間の平和を楽しんでいた。つむぎも、今やシドニアの英雄となった長道に想いを寄せながら、穏やかな日々を過ごしている。
だが、艦長・小林は分っていた。ガウナがいる限り、この平穏は長く続かないことを。そして、人類の存亡をかけ、最終決戦を決断する。愛する人を守るため、シドニア最後の戦いがついに始まった。
(公式サイトより引用。)
TVシリーズ二期「第九惑星戦役」(2015)から六年越し、待ちに待った続編かつ完結編となった3DCGアニメ。原作を描いたのはSF漫画界の巨匠:弐瓶勉先生。振り返ってみると今年は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」等々、この手の映画の当たり年だったのかもしれない。
二期以降〜クライマックスに該当する原作部分をアレンジして二時間の尺に収める(そのまま映画化すれば二時間には収まらないだろう)という条件下で作られたことを考慮すれば、本作は奇跡的な収まりの良さだった。テスト前の新型機の活躍、黒幕に操られっぱなしだったライバルの名誉挽回、出撃シーンで流れる主題歌といった王道展開も熱い。SF作品らしく難解な用語・設定が多い割に、万人の心を掴むベタな物語が繰り広げられる…。そんな「シドニア」原作の魅力は、本作でもしっかり活かされていた。
本作の一大テーマとなる異種間恋愛──“ウルトラマンと怪獣の中間的な形状をした巨大人造生命体”と人間男性の恋のてん末は、残念ながら原作通り…少々欺瞞的なオチに終わった印象が残る。とはいえ、その件について歌ったCAPSULEの主題歌「ひかりのディスコ」(アニメ版「シドニア」同様、奇しくもこちらも六年ぶりの新作)が非常に素晴らしく、思わず胸を揺さぶられたので納得しておこう。
また、せっかく所々で原作をアレンジしているのだから、原作通りの運命を辿った“余り物を強引にくっ付かせた的な某カップル”の扱いも映画で変更or補完して貰いたかった。架空の未来世界と現代では倫理・価値基準が違うとはいえ、あのオチは唐突すぎて納得できない…。
↑原作表紙より、身長約17m=ロボット:衛人と同サイズのヒロイン:白羽衣つむぎ。ウルトラマンがドレスを着ているように見えなくもない…?
「ホドロフスキーのDUNE」(2013年)
1975年、アレハンドロ・ホドロフスキー46歳(映画監督)、ミシェル・セドゥー28歳(映画プロデューサー)。2人の男は荒唐無稽で壮大な映画を企画した。
1975年にホドロフスキーによって企画されるも、撮影を前に頓挫したSF大作、ホドロフスキーの『DUNE』。「映画化不可能」と言われた小説、フランク・ハーバートの「DUNE」を原作に、そうそうたる面子をキャスト・スタッフに配し、莫大な予算と、12時間にも及ぶ上映時間を予定していたというその企画は“映画史上最も有名な実現しなかった映画”と言われ、伝説となっている。
本作は、ホドロフスキー版『DUNE』の顛末と、ホドロフスキー、プロデューサーのミシェル・セドゥー、ギーガー、『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督等のインタビュー、膨大なデザイン画や絵コンテなどの資料で綴る、驚愕、爆笑、感涙のドキュメンタリーである。
(公式サイトより引用。)
「エル・トポ」「ホーリーマウンテン」等のカルト映画で知られるアレハンドロ・ホドロフスキー監督が手がけていた“幻のDUNE”の詳細を追い、関係者の証言を集めたドキュメンタリー映画である本作。既にに何度も観ている大好きな作品だが、この度公開されたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督版「DUNE」に合わせて久々に鑑賞した。
本作の内容を端的に語ると、“ものづくり系ドキュメンタリー”でもあり、“バーで偶然隣に座ったおっちゃんが語る武勇伝が滅茶苦茶楽しかった”気分を味わえる映画である。情熱とユーモアと感傷を交えた、とてつもなく魅力的な語り口のホドロフスキートークは必見・必聴。特に自身のDUNEが企画倒れになった直後に製作されたデヴィッド・リンチ監督版DUNE(大失敗作の烙印を押されている。俺個人としては“レトロ風SF映画”と割り切って観ればそこそこの出来だった記憶が。)を鑑賞したエピソードは爆笑必至。リアクションが大人げなさすぎる…。
とにかく本作で語られる“ホドロフスキー版DUNE”の製作経緯は興味深く面白すぎるので、物語調に味付けをし映画化しても面白くなりそうだ。そうそうたる製作スタッフ=“魂の戦士”…ジャン・ジロー、H・R・ギーガー、ピンクフロイド、ミック・ジャガー、サルバドール・ダリetc。数々の鬼才を数々の手段で口説き落として仲間にする過程を、是非とも再現映像付きで見てみたいものだ。
また本作によると、映画の絵コンテやキャラクター・背景等のビジュアルは完成済みで、様々な配給会社に書籍媒体で眠っているらしい。映画関係者しか読むことができない(そして数々のクリエイターに影響を与えたらしい)その分厚い資料集、どうにか出版して貰えないだろうか…?
「DUNE/デューン 砂の惑星」(2021年)
全宇宙から命を狙われる、たった一人の青年、ポール・アトレイデス。彼には未来を見る能力があった。
彼は宇宙帝国の皇帝からの命令で一族と共に〈砂の惑星/デューン〉へと移住するが、実はそれはワナだった!
父を殺されたポールは、巨大なサンドワームが襲い来るその星で、全宇宙の未来のために立ち上がるのだが…。
(Amazonより引用。一部改変。)
先の「ホドロフスキーのDUNE」感想でも触れた、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって撮られた新たな「DUNE」実写版。
2021年中に公開された洋画の中で、個人的に最大級の期待を掛けていたのが本作だった。俺は監督の前作「ブレードランナー2049」(2017)が大大大大大好きなので、そんな監督のSF映画最新作、しかもDUNE再映画化と言われれば観ない理由がない。出来る範囲で最も設備の良いIMAXシアターの良い席をキープし、喜び勇んで鑑賞したのが思い出深い。
IMAXシアターの巨大なスクリーンで味わったのは、「とにかく絵を観て!絵を!」と言わんばかりの美麗映像、そして少台詞量。映画館ではなく、美術館や写真展に居るような感覚を覚えた。
色調が抑えられているからか?衣装デザインが格好良いからか?或いは構図がバチッと決まっているからか?いずれにしても“絵”としての魅力が凄まじかった。パンフレットに掲載された劇中スクリーンショットの美しさにも惚れ惚れしてしまう。それらの画像を壁面に並べるだけで、一つの展覧会が成立してしまいそうだ。
ヴィジュアルが魅力的なのは美しい砂漠の風景や主演のイケメン:ティモシー・シャラメ氏などに限らない。非現実的な肥満体で恐ろしい容姿をした敵キャラ:ハルコンネン男爵ですら美しく思えてしまう。それは言い過ぎか…?
一方、それらの美しさと映画自体の魅力が比例しているかは難しい所。
本作は中盤以降主人公の逃亡劇が主軸となるが、宛のない逃避行がひたすら続くために物語の落とし所を見つけ辛く、上映時間の長さに対して発生するイベントが少なかった印象が残る。むろん魅力的なスペクタクル描写も多かったが、主人公が主体的に行動する場面が数える程しかなかった為にそう感じられたのかもしれない。
さて、いよいよ本格的な戦いが巻き起こる(はずの)続編「Dune: Part Two」の出来と「チャ〜〜〜スカ!」(デヴィッド・リンチ版DUNEの迷言)の有無はいかに?
↑幾度か話題に挙げたデヴィッド・リンチ版ブルーレイのCM。今やベテラン俳優となったカイル・マクラクラン氏の初主演作品でもある。
●「十二月編」もしくは「総括」に続きます!
なお、画像は全てAmazonより引用しました。