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生豆の“水研ぎ焙煎”やった方がいい?

今までの記事は片手鍋焙煎を自宅で行う上で、僕が実際に体験して感じた注意点やコツなど、技術的な部分を僕なりの考察を交えつつご紹介して来ました。(役に立ってれば幸いです)

ところが何度も焙煎を繰り返しているうち、とある“問題”が気になり始めます。

『焙煎中のチャフ(コーヒー豆の薄皮)がウザい…』

コーヒーの生豆の表面には“チャフ”“シルバースキン”と呼ばれる薄皮が付着しており、どんな焙煎方法でも必ずこれが表面から剥がれ落ちるのですが、手鍋焙煎はそのなかでも比較的“散らかりにくい”と言われています。
手網などの直火焙煎のように、網目から全てのチャフがばら撒かれる訳ではなく、ある程度は鍋の中に残るからです。

ところが実際は巷で『散らかりにくい』と言われているよりも、鍋を振ったり蓋をパカパカするたびに、結構な量のチャフが蓋の隙間からコンロ回りに撒き散らかされるのです。

豆表面の白くカサカサしてる部分がチャフ(薄皮)


こんな感じてチャフがコンロの周囲に散らばります。



そんなこんなで、チャフが散らからない様にするにはどうしたらいいか?を調べに調べて辿り着いた結果が生豆をジャブジャブと水やお湯(ぬるま湯)で洗ってから焼く『水研ぎ焙煎』という技法になります。

しかしこの“水研ぎ焙煎”、調べていくうちに『やらない方がいい』とか『やった方がいい』とか、意見が賛否両論別れる情報が多かったので、今回は実際に“水研ぎ焙煎をやっていた”僕の意見も踏まえてご紹介しようと思います。


“水研ぎ焙煎”とは何か?

まず最初に“水研ぎ焙煎”とは何かについて簡単にご説明します。
長ったらしい冒頭でもお話しした通り、生豆をそのまま水やお湯(ぬるま湯)で、お米を研ぐようにジャブジャブ洗ったものを焙煎することを指します。

生豆を洗うメリット・デメリットについて

これが水研ぎ焙煎を行う上で賛否両論に分かれるポイントになります。
ここで紹介するメリット・デメリットをご覧になった上で水研ぎするかしないかの取捨選択を考えてみてください。

メリット

① 焙煎中に散らかるチャフが減る
僕が水研ぎ焙煎を行うようになった最大の理由です。ザルなどを使ってしっかりこすり洗いして落とすことで、8~9割のチャフを除去することが出来ます。
また、焙煎中に鍋の中で焦げるチャフが減ることで煙が少なくなり、燻し臭さが低減する効果も見込めます。

②生豆に付着している汚れを除去できる
コーヒーの生産国、及び精製方法を調べたことのある方なら分かると思いますが、長期間かけて天日乾燥、精製、保管されるコーヒー豆には生産国現地の土埃やゴミなどの汚れが付いています。
コーヒーとして飲む為に200℃を超える高温で焙煎されるので、衛生面では問題ないとされていますが、気になる人もいるでしょう。

③欠点豆が目立つようになり除去しやすくなる
水研ぎする過程で身の詰まっていない比重の軽い豆は水に浮いたり、チャフが剥がれ落ち、生豆の表面が吸水することで透明感が出つつも色のコントラストがハッキリします。これらによって“欠点豆”と呼ばれる状態の良くない豆が目立つようになり、ハンドピックで取り除く際に見つけやすくなります。
コーヒーの香味に悪影響を与える欠点豆をしっかり取り除けるので、より洗練された美味しいコーヒーになります。

給水すると色の明暗がハッキリします

④コーヒーの味わいがスッキリする
これが賛否両論に分かれる最大のポイントかと思います。
水研ぎ焙煎されたコーヒーを淹れると、スッキリとクリアな味わいに感じることが多いように思います。理由としては上記の3つのメリットの効果とも、水研ぎ中にコーヒーの香味に影響する成分も一緒に流れ出してしまうから、とも言われますが、理由がどうであれスッキリしたコーヒーが好みなら試す価値はあると思います。


デメリット

①排水溝の掃除が手間
これに関してはトレードオフと言いますか(汗
水研ぎせずにコンロに散らばるチャフを掃除するか、はたまた水研ぎをしてザルや排水溝のゴミ受けに溜まったチャフを掃除するか…

生豆の精製方法にもよるが生豆150gでこれくらい

②焙煎に関する時間が長くなる
水研ぎをすると、生豆を洗う時間がかかるのはもちろんの事、季節や方法にもよりますが生豆が乾燥するまでに数時間~数日はかかります。
もちろん乾燥を待たずして焙煎する方法もありますが、濡れた状態からだと焙煎時間が極端に長くなるなど、他にも色々と焙煎に悪影響を及ぼしている気がするので、濡れたままの焙煎は、過去の記事でいくつか取り上げた手鍋焙煎の特性上、あまりオススメしません。

③水研ぎの影響で生豆が変形することがある
これは水研ぎをやっていくうちに気付いた事で、生豆の種類や生育状態が影響しているのかは定かではありませんが、水研ぎにより生豆が吸水して膨張→乾燥して縮小することで、生豆のセンターカット(中央の割れ目)部分の上下いずれかが裂けてしまい、ハート形のような状態になります。
これをそのまま焙煎してしまうと、裂けていることで正常な生豆との焙煎具合が異なったり、味のみならず見た目も良くないなどの理由で欠点豆として取り除くハメになります。

水研ぎ前のハンドピック時には無かったが...

④コーヒーが持つ味や香りが抜けてしまう
前項のメリット④とは逆の理由になります。
良く言えばスッキリしたクリアな味わいと表現出来ますが、逆に悪く言うと“味と香りの抜けたコーヒー”と言えなくも無いでしょう。
水研ぎ中にコーヒーの香味に影響する成分が水に流れ出してしまうことで、そのコーヒーのもつ特徴や個性が弱くなってしまうと言われれば、デメリットになっても仕方が無いと思います。

まとめ

実際に水研ぎ焙煎をやっていて感じたことは

『水研ぎをやる“意味”は間違いなくある』
『“やる”か“やらない”かは自分のコーヒーに何を求めるかによる』

この2点です。
自分の理想とするコーヒーに近づけるならやればいいし、遠くなるならやらない方がいい。

ただ、そんなに難しい方法ではないので試してみることで別の発見や閃きにつながるかもしれないですし、経験してみることは大事かなと思います。

ただし、水研ぎ焙煎をやるのであればチャフ掃除にかかる手間だけで物事は考えずに、コーヒーを飲む根本にある『いかに美味しいコーヒーにするか』を忘れないようにしましょう。

最後に

え?

お前冒頭で“水研ぎ焙煎をやっていた”って過去形だったろって?

はい。

“自分の理想とするコーヒー”に近づく為に、水研ぎ焙煎はやめました。

それは片手鍋焙煎とコーヒーの経験を積んでいく中で、『自分の焼いたコーヒーを他の人に飲んでもらって、意見をもらうことが出来た』ことが大きく影響しています。

『自分の好みを理解できるのは自分だけだが、理解するきっかけを与えてくれるのは自分ではない』

という言葉を残して今回は終わりたいと思います。

それでは!!

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