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いのちのエンジニア|コメディカルの役割とは

病院では医師や看護師だけでなく、様々な医療職が一緒にシゴトをしています。この「様々」に該当する人たちはコメディカルと呼ばれていたりします。いのちのエンジニア ー 臨床工学技士もこの中に入ります。Wikipedeiaによるとコメディカルとは、以下のように説明されています。

コ・メディカル(和製英語: co-medical、英: paramedic)とは、医師や歯科医師の指示の下に業務を行う医療従事者を指す。・・・
通例は医師・歯科医師以外の看護師を含む医療従事者の総称として用いられる。

コ・メディカル 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

看護師もコメディカルに含むようですね。それでは医師とコメディカルと呼ばれる人たちの役割の違いとは何なのでしょうか。


1.様々な医療職


病院で働く様々な医療職について、その代表的なものを紹介していきたいと思います。2022年に公表された厚生労働白書では、厚生労働省が所管する医療保健・福祉関係の国家資格と就業者数の現状を掲載しています。(※注釈はリンク先を参照)👇これだけの資格があるんですね。👇

厚生労働省所管国家資格一覧(保健医療・福祉関係)
出典:令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保- 第1章 図表1-2-1

他には都道府県が所管する准看護師栄養士、資格はなくても看護補助者(看護助手など)や医療事務をはじめとした事務職メディカルアシスタントなど、多くの人が医療に携わっています。

2.法律上の住み分け


それぞれの資格は法律で実施可能な業務が定められています。法律では医師すべての医療行為看護師療養上の世話診療の補助を行うことができ、さらにはこれら以外の者は行ってはいけないとされています。なお、診療の補助は、次のように定義されています。

診療の補助とは、医師または歯科医師が患者を診察・治療する際に看護師・准看護師が行う補助行為であり、診療に伴う苦痛緩和、症状出現の予測、状態変化への対応なども含む。

JANSpedia– 看護学を構成する重要な用語集 –

次に、コメディカルの例として臨床工学技士で説明します。臨床工学技士は臨床工学技士法により、看護師に認められている診療の補助の一部を実施することが認められています。

第三十七条
臨床工学技士は、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助として生命維持管理装置の操作及び生命維持管理装置を用いた治療において当該治療に関連する医療用の装置の操作として厚生労働省令で定めるものを行うことを業とすることができる。

臨床工学技士法(昭和62年06月02日 法律第60号)
※一部注釈等は省略

このように、臨床工学技士などの他の医療職は、看護師だけに認められている診療の補助からその一部が解放される形で、それぞれが専門とする業務を実施できることになっています。次の図は診療の補助について、看護師とそれ以外の医療職の関係を表しています。

医療関係職種と診療補助行為の関係模式図
臨床工学技士標準テキスト 第4版(金原出版)p39

ここまでをまとめると、医師が行うことができる医療行為のうち、看護師診療の補助を行うことができます。臨床工学技士などの他の医療職は診療の補助の一部専門的に実施することができるということになります。

3.コメディカルに求められる役割とは


臨床工学技士などの他の医療職は診療の補助の一部専門的に実施することができるということになりますが、これは見方を変えると、看護師は臨床工学技士・臨床検査技師・理学療法士・救命救急士などのシゴトも実施できるということになります。

そうすると、この部分にのみ注目し、臨床工学技士じゃなくてもできるシゴトなら、臨床工学技士は「不要」とか「いなくても問題ない」という表現がされることがあります。しかしこれは大きな誤りです。臨床工学技士をはじめ、様々な医療資格は必要な理由があったから誕生したんです。

そもそも臨床工学技士が誕生したのは、既存の医療職種だけでは医療機器の操作や管理を安全に実施することができなかったからです。しかも、臨床工学技士が誕生する前は、無資格のスタッフが医療機器に関する業務を行っている場合もありました。これらによってさまざまな問題が生じていました。
看護師は診療の補助を広く行うことができます。しかし、臨床工学技士が行うことができる生命維持管理装置や医療機器に関する専門的な教育は受けていません。
つまり、法律上できることと、正しく理解して安全に実施できることは違うのです。臨床工学技士のシゴトは臨床工学技士にしかできないのです。コメディカルの役割はこの専門性にあります。

コメディカルはそれぞれの分野の専門家です。その分野においては医師とコメディカルは対等でなければならないのです。医師がコメディカルに指示するのではなく、コメディカルの専門的知識を活かしながら、最善の検査や治療を選択して行っていくのです。
病院の中では医師と看護師、コメディカルは上下の関係ではありません。司令塔として医師が存在しますが、それぞれの分野の専門家の集まりであることを知ってほしいと思います。

👇臨床工学技士の歴史については、次の書籍にも紹介されています👇なかなか購入してまでご覧になる方は少ないかと思いますので、臨床工学技士の歴史についてもいずれご紹介していきたいと思っています。

4.まとめ


最後までご覧いただきありがとうございました。

医療に関わる人は大勢います。それぞれが持つ専門性を活かすことで、今の医療は成り立っており、どの職種も欠かせない存在です。医師とコメディカルがお互いの専門分野を尊重し、活かしながら医療が行われている現状を知っていただけたらと思います。

臨床工学技士という専門職のひとつとして医療の中にいるからこそ、コメディカルとされる人たちの役割が分かります。医師や看護師だけでなく、その陰には多くのコメディカルが「いのち」を支えているのです。