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「5G時代のエンタテインメント」は”ライブのクラウド化”、そしてマルチバースへ

エンタテインメントは常に”テクノロジー”による環境の変化にさらされながらも、それを活用する新世代のアーティスト、クリエイター、ビジネスマンが出てきて、彼らが次世代のメインストリームになる、という歴史の繰り返しを経ています。
(ピンク・フロイド、小室哲哉、ジャスティン・ビーバー、西野カナ、GReeeeN、あいみょん、そしてLil Nas X)
これが『エンターテック』の考え方で、そうした歴史を知っている/知らないアーティスト、業界人他と一緒にエンタテインメントの未来を作る”勢い”を生み出したい、という考え方で提唱しています。

テクノロジー環境の中で通信方式の要素は大きく、今まで”G”が変わるごとに、エンタテインメント、特に音楽は翻弄され進化をしてきました。
これはいつも使っているスライドです。


私は幸運にも、2G開始後のiモード、EZWeb他の携帯電話向けコンテンツビジネスがスタートする黎明期に仕事をしていたことが、現在までのキャリアに繋がっています。
ざっくり言うと、2Gでは最初の着メロプロバイダーの1社として事業戦略、事業計画を作り、3GではAppleと携帯ネットワークからの直接ダウンロード(とDRM解除)に関する交渉を行い、4Gではストリーミングに対応したビジネスのアップデートに取り組みました。

2020年からスタートする5Gで、エンタテインメントがどのように進化するのかをここで考えていきます。

5Gネットワークの特長は、
- 超高速大容量
- 超低遅延
- 超同時多接続
です。
4Gの時点で既に凄いのですが、こちらの記事が4Gとの比較もあり非常に分かりやすいです。

巷では「5Gは動画の時代」と言われています。
上の図のように"xG"は約10年のサイクルで進化しています。その間にネットワークのカバレッジ拡大、対応端末の普及、費用の適正化といった、普及に必要な要素が整えられていきます。
2020年から最初の3〜5年は正に「動画の時代」になるでしょう。
ただし、それは音楽ダウンロードが早くなるから普及する、と同じで、実際には音楽ストリーミングが普及したことによる、”サブスクリプション”で”所有ではなくアクセス”で音楽を楽しむ事で、新世代のアーティストや国境や世代を超えたヒットが次々と起こり、音楽業界の構造変化に繋がるなど、パラダイムシフトが起こりました。
5G時代にはそれは何になるのか?

5G時代のエンタテインメントの3要素

1.  xR→ VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)
2. A.I.(人工知能)
3. ブロックチェーン

これらの3要素が組み合わさって5G時代ならではのエンタテインメントが産まれてくること考えています。
それは、、、

5G時代のエンタテインメントは”ライブのクラウド化”

1998年をピークに日本の音源市場は縮小し、一方ライブ市場は拡大をしていることから、「音源はデジタル化でコピー可能なので価値を失い、コピーできない体験のライブやフェスの価値が増加した」とまことしやかに言われています。

私としてはチケット販売がインターネット流通で流通量が拡大したのがその要因だと考えていますが、ライブ体験の素晴らしさが拡大の最大の要因である事は間違いありません。

ライブのクラウド化の例

実はちょうど1年前の2018年8月31日、5G時代のエンタテインメントに繋がるエポックメイキングな出来事が日本とアメリカで起こっていました。いわば”VRライブ記念日”です。
まず、日本ではVTuber輝夜月(カグヤルナ)が、バーチャルイベント空間「cluster」(クラスター)内に出現したZepp VRでライブを行いました。

このライブは非常に話題になり、VR空間内でライブを観られるチケットも即完売。この後、cluster内では多くのVR音楽イベントが開催されています。

そしてタイムゾーンが変わり、日本時間では翌日になったアメリカ時間の8/31夜から、グラミー賞受賞歴があるシンガーソングライター、そして自ら音楽テック・スタートアップにも参画する現代らしいアーティスト、Imogen Heap(イモジェン・ヒープ)のVR空間内のライブがアメリカのプラットフォーム「Wave」(TheWaveVRから改名)で開催されました。

日本はアニメ、キャラクターの延長にあるVTuberによるライブ、アメリカではアーティスト本人を登場させつつVR空間ならではの演出を加えていくという、大きなコントラストのある出来事が同じ日に起こっていたのを観て、偶然とは言えとてもエキサイトしました。

AR→ホログラムによる亡くなったアーティストのライブ

ホログラム=ARだと捉えていて、それを活用したライブエンタテインメントが国内外で立ち上がり、進化しています。
ホログラムと言えば、残念ながら2020年4月に閉館することを発表した「DMM VR THEATER」での各コンテンツが有名で、特にオープン時のコンテンツだったホログラフィックライブ「hide crystal project presents RADIOSITY」は、私も実際に観て自然と楽しめたのを今でも覚えています。

これが2015年で、2008年にはX JAPANの東京ドーム公演でホログラムによるhideが出演し私はそちらも観ています。

前後して海外ではマイケル・ジャクソン、2PACといったアーティストがホログラムで再現され、日本では初音ミクのホログラムライブが定着しています。
ただし、これらは大体がワンオフ、もしくは年に1〜数回の”スペシャル”な出来事か、DMM VR THEATERやマイケル・ジャクソンがホログラムで出演するラスベガスの劇場のような常設施設で実現されてきました。
ところがここ1,2年でホログラムによる亡くなったアーティストの”ライブツアー”が行われています。

2019年4月にフランク・ザッパ(1993年に死去)がホログラムにより復活し、北米、欧州ツアーを行いました。これはフランク・ザッパの息子アーメット・ザッパも役員を務める企業「Eyellusion」(アイリュージョン)によるもので、2ヶ月に渡って北米はニューヨーク、ボストン等に続いて、イギリスのロンドン、マンチェスター他、そしてベルギー、オランダと計16箇所の公演がラインアップされています。

私は縁あって4月19日、ニューヨークの郊外で開催されたプレミア公演を観てきました。公演は撮影禁止だったので会場の風景とプレビューの動画をアップします。実際の公演はホログラムだけに頼らない、オーディオ/ビジュアル演出が非常に凝ったエンタテインメントになっていて、リアルなフランク・ザッパのファンと思しき世代の方を中心にライブは大盛況でした。

このEyellusionは天才ピアニストとして有名なグレン・グールドのホログラムツアーを発表している他、ハードロックバンド「DIO」(ディオ)のボーカル、ロニー・ジェイムス・ディオのホログラムツアーを2019年5月から全米20箇所で開催しました。
先程のVRの例と同様、日本ではVTuberがリアルの音楽フェスティバルに出演しています。初音ミクはオリジネイターとして海外からも知られている他、2019年のサマーソニックにはキズナアイが出演しました。彼女もホログラムによる出演ですがVTuberらしくリアルタイムのモーショントラッキングで、VTuberらしいインタラクティブなパフォーマンスでした。

ゲーム内のエンタテインメント

近年盛り上がりを見せている”バトルロイヤル”系のゲームでは3DCGにより一つの世界(島や都市)が仮想空間=メタバースとして再現され、その中で100人のプレイヤーが同時接続でゲームをしています。私も個人的にPUBG MOBILEにハマっていますが、これらのゲームで遊んでいる間はちょっとした旅行気分も味わえる程、没入できます。
そんなメタバースの中でDJプレイを行い多くのプレイヤーを沸かせたのが、マシュメロ(Marshmello)です。

ゲーム「フォートナイト」内で行われたこのイベントは、フェスさながらのステージをゲーム空間内に”設営”し、そこに普段はゲームをしに来ている参加者が集まって入手したスキン(自分の姿を変えるアイテム)をまとい、エモート(挨拶などの交流の身体の動き。ダンスの動きも)を駆使し、仮想空間内の”フェス”を楽しんでいます。また楽曲に合わせた演出も凄く、トラック「Fly」がかかると、突然仮想空間内の重力が変わり皆が飛べるようになる等”エモい”演出が目白押しです。
記事によるとこのイベントに1,000万人が集まったと言われています。この数の信憑性は分かりませんが、多ユーザーを収容できるのはマルチプレイヤーゲームならではの強みと言えます。

センサーの活用と変化するエンタテインメント

5Gの特長である”超多接続”、”低遅延”で盛り上がるエンタテインメントもあります。
2019年1-3月に開催されていた「FLOWERS BY NAKED 2019 ー東京・日本橋ー」ではプロトタイプとして「HUMANOID DJ project -ANHD零号機」が、会場にいる観客の表情から、AIにより性別、年代や感情の起伏を解析し、会場の音楽をコントロールし、常に変わる空間を音で演出していました。
これを担当された油井氏にもインタビューをした時に、とてもインスピレーションを受けました。

このようなセンシングによるデータを演出側にフィードバックして、最適化した演出を出力するエンタテインメントは数年後には当たり前になってくると考えています。

5G時代のエンタテインメントはこうした取り組みに冒頭にあげた、
xR、A.I.、ブロックチェーンが組み合わさることで、
新たなエンタテインメントが産業レベルで
拡大していく。

「マルチバース」と「マルチアイデンティティ」

マルチバースとは”多元宇宙””多元空間”と呼ばれる概念ですが、私はこれをスパイダーマンから得ました。昨年公開された映画「スパイダーマン:スパイダーバース」で、多元空間に様々なスパイダーマンが存在(中には女性や豚だったり)し、それらが交錯、衝突する世界観が描かれていました。これはマーベル・コミックにある世界観で、私はスマホゲームの「スパイダーマン・アンリミテッド」にハマった時にこの世界観を知り、大きなインスピレーションを得ました。

今回のテーマにこの考え方がどう絡んでくるか、と言うと

センシングによる感情やその他のデータをA.I.が解析、演出にフィードバックし、xRでリアルタイムに出力する

ことで、観ているファンごとに違う世界が観えているようなエンタテインメントになっていくのではと予想しています。
例えば、VR空間内では皆で共有している瞬間も実は観ている自分に最適化された”マルチバース”かも知れません。そう正に映画「マトリックス」の世界です。
「ミラーワールド」「デジタルツイン」という概念が提唱されていますが、スマートフォンネイティブなZ世代、そしてその後に続く「α世代」(アルファ)は、現実が中心軸という観念に囚われず、様々な空間とアイデンティティを楽しむのでは、と妄想も含めて予想します。

ブロックチェーンの役割

”5G時代のエンタテインメント”の要素として挙げたブロックチェーンはどのような役割を担うのでしょうか?
それは”マルチバース”に散らばったアイデンティティや権利を購入、保有している資産(アイテム、音楽、映像など)を保証する役割が求められます。
我々はつい最近、”音楽配信バース”において購入したはずの音楽が、何らかの理由で配信停止になり、再びダウンロードできなくなる世界を既に体験しています。

許諾、徴収、分配といった権利処理もブロックチェーンの必要性が高まっていくでしょう。なぜなら最適化された空間では著作物がどのように使われているかは、その空間を利用している人しか分からないので、権利団体が状況を把握する事ができなくなります。これを避けるために、事前にスマートコントラクトで利用許諾が行なえ、利用状況がトラッキングできるとされる、ブロックチェーン技術の活用が本格化されると睨んでいます。

5G時代のエンタテインメントのキーワード

xR、A.I.、ブロックチェーンがテクノロジーのキーワードになる一方、エンタテインメント=”体験”のキーワードはこれらになると考えています。

Generative – 生成
Autonomous – 自律
Adaptive – ユーザーの反応に応じて変化
Archive – 追体験

これらの要素が”体験”を設計する時に重要になるでしょう。

一緒に「5G時代のエンタテインメント」を作りましょう

私はエンターテック・アクセラレーターを名乗り、エンタテインメントとテクノロジーが重なる領域で、日本、アメリカ、ヨーロッパの企業をクライアントにコンサルティング、アドバイザリー事業を行い、日米のエンターテック・スタートアップのアドバイザーを務めています。
ParadeALLを立ち上げる前は、ユニバーサル・ミュージック、MTVジャパンで事業戦略、新規事業の企画、立ち上げ、グロースをやってきました。
こうしたエンタテインメントの未来に想像、妄想を馳せながら、著作権、テクノロジーといった現実とうまく組み合わせ、実際に事業化する事を続けてきており、5Gが正に次世代のエンタテインメントを作るタイミングです。
実際に今回まとめた文脈でいくつか事業化を進めています。
一緒に未来を作りたい!という企業、アーティストの方は気軽にTwitter、Facebook等でご連絡ください。

読んでいただきありがとうございました。


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