Casanova.S

インディーファジー 音楽ライター / スパーズファン /ele-kingでディスクレヴュー書いてます 仕事等 https://linktr.ee/novacasanova

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  • インタビュー記事

    インタビューした記事の

  • ロンドン〜So Young Scene〜

    2010年代後半に起こったロンドンシーンについて

最近の記事

Fat Dogと素敵な犬の仲間たち

Dog、Dog Race、Dog Unit、世界に犬があふれている。犬派猫派の永遠の論争に20年代のUKインディーバンドたちは犬を突きつけた。今パッと思いつく猫のバンドはいるか?いやいない、いるのは犬だ。そんな中で一際存在感を放っているのがこのFat Dogだ。 「ドミノに言ったんだ。バイオなんていらないって」と名付けられたバイオからしてめちゃくちゃ面白い。音楽からもそんな気配はあったけれどFat White Familyのリアス・サウディ的なユーモアとそして反骨精神が漂っ

    • 大切にすること −インタビュー Soren Bryce(Tummyache)−

      作り込まれた素晴らしさもあればそうでないものに宿る魔法もある。テキサス出身、現在UKを拠点に活動する Soren Bryceのソロ・アルバムには魔法が宿っている。エイドリアン・レンカーの諸作を彷彿とさせるようなフォーク・ミュージック、ライブレコーディングされた楽曲はほとんど何も足されずにそのものが持つ魅力を静かに醸し出す。まるで手帳に描かれるラフなスケッチのように白と黒の線が結びつき不確かな像が作られていく。色づく前の、完成された未完成。それらはただその場所に存在する。寄り添

      • [インタビュー] Lil Chop Record Shop

        新しい音楽レーベルを意識するのはまず音楽が先で、いいなって思ったバンドの曲を出しているこのレーベルはどんなレーベルなんだろうと興味を持つのがほとんどだと思う。あぁこれもそうなんだ、これ好きだと繰り返しているうちに、いつしかそれが逆になりこのレーベルの出している音楽だからチェックしてみようかってそんな状態になるというのがよくある形なのではないだろうか。ジャンプっぽいとか、サンデーっぽいとか漫画雑誌になんとなくのカラーがあるのと同じように音楽レーベルにもカラーがあって、聞いている

        • 謎と文脈 -bar italiaとgreat area-

          ミステリアスなbar Italia、謎に包まれたgreat area、謎が謎を引き寄せ香りを放ち、僕らはその匂いに吸い寄せられる。調べれば全てがわかりそうに思えるインターネット時代において、わかららないというのはなんとも新鮮で魅力的に思えてくる。神秘のベールに包まれているから知りたくなって、追いかけてわかったように思えてもすぐさま煙に巻かれてまたわからなくなる。その繰り返し。Dean Blunt and Inga Copelandの時代からそれらはずっと続いている。 そんな

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          7本
        • ロンドン〜So Young Scene〜
          5本

        記事

          [インタビュー] Otala -静かに爆発する感情の奔流−

          スリリングなサックス、耳を切り裂くギターの音、時に感傷的に時に爆発するように、スポークンワードのヴォーカルに寄り添う演劇的な楽曲。青白い炎がほとばしるノッティンガムの Otala のなんと刺激的なことか。バンドは1年前、23年1月にデビュー曲、「Tennov」を送り出し、その後3曲入りのEP「Tell the Bees」をリリース。そして今年、24年3月に新曲「Commedia」を 〈Lil Chop〉からリリースした。「Commedia」は混迷を極める世界で、唇を噛みしめな

          [インタビュー] Otala -静かに爆発する感情の奔流−

          2023年ベストソング あるいは2024年期待するバンドたち

          まえがき 振り返ってみると2023年は自分にとってフォークを感じる年だったのかもしれない。それ以前から続いている流れがあって、フォーク・バンドだけではなく、フォークに影響を受けたバンドがそのエッセンスを受け取って新しいものを作り出しているってなんだかそんな流れを感じている。 だってみんな Big Thief 好きでしょ?みたいな言わなくてもわかる当たり前の空気感が共有されて、今までそこにあったけど見えていなかったものに気がついたり、コントラストがはっきりして自分はどんな音

          2023年ベストソング あるいは2024年期待するバンドたち

          2022年のベストアルバム

          1位 Black Country, New Road ー Ants From Up There 「Black Country, New Roadの第一章がここに完結した」 2021年の年間ベストの記事を読み返したらBC,NRの1stアルバムについてこんな言葉が書いてあったけど、その第二章はあっという間に終わった。 この2ndアルバムのリリース直前にボーカル/ギターの Isaac Wood の脱退が発表されて、だからこのアルバムのことを考えるとどうしたってそのことが頭をよぎ

          2022年のベストアルバム

          [インタビュー] Ugly ー少年時代の終わりと新しい季節の訪れー

          ここから先が新しいチャプターだ。 So Young Magazineの編集長 Sam Ford が日本のメディア(The Sign Magazine)のインタヴューに対して真っ先に名前をあげて、Sports Teamも自身のレーベルが契約する最初のバンドに選びそこにメッセージと期待を込めた。King kruleを通過したBabyshamblesのような、The Smithsやさらにその先、60年代から続くUKの伝統的な部分も併せ持って……ケンブリッジのバンドUglyには浪漫が

          [インタビュー] Ugly ー少年時代の終わりと新しい季節の訪れー

          Pet GrotesqueとKaty J Pearson ー友達の友達と最近の興味とDan Careyー

          ここまでのPet Grotesque 誰だかよく知っているわけではないけれど、よく見かけるからなんとなく知っている、そんな人っている。駅やコンビニ、友達の友達、隣のクラスのやつ、スタジアムのカメラに抜かれる会長の隣にいる人、僕にとってのPet Grotesque。 Pet GrotesqueことCallum Armstrong、Slow Danceのコンピ(たびたび話題にしちゃうオレンジ色した19年)に入っていてGoat GirlのサポートメンバーでTiñaのアー写に写る

          Pet GrotesqueとKaty J Pearson ー友達の友達と最近の興味とDan Careyー

          SistertalkとTenderhost

          Sistertalk 思い返すのはそう、Sistertalkのこと。 今から4年前の2018年の2月、フレッドペリーのサイトに掲載されていたライヴ映像を見た。それはまるでSF世界の未来のクラブで演奏するジャズバンド、あるいは月で起こったロックバンドのムーヴメントのようで、知的で熱く、暴力的でスリリングで、ゾクゾクとした快感なのか不安なのかわからない感情が心の内側からジワジワとせり上がってくるようなもので、格好良くてたまらなかった。当時はShameが1stアルバムSongs

          SistertalkとTenderhost

          ベストトラック 2021

          ベストトラック2021こと2022年に期待するミュージシャン・リスト、優しさ、色彩、白黒、緑、ちょっとした流れを感じるそんな10曲。 1位 Martha Skye Murphy ー Stuck幽玄で荘厳、厳かで儚く力強い、矛盾を抱えたゆらぎのような美しさ。SquidのNarratorで見せた叫び声とはまったく違った魅力があって、まるで浮遊霊になったみたいな感覚がある。Ethan P. FlynnのプロデュースでBlack Country, New Roadのサックス男 Le

          ベストトラック 2021

          2021年 ベストアルバム 10

          1位 Black Country, New Road ー For the first timeBlack Country, New Roadの第一章がここに完結した。ボーカルが性的な問題を起こし解散を余儀なくされたNervous Conditionsから続く物語、失われた時間への後悔が滲み、こんな風にならざるを得なかったという苦悩が漏れる。残されたメンバーでバンドを続けることを決意してステージの隅っこでギターを弾いていたIsaac Woodの前にマイクがおかれる。「僕はなんに

          2021年 ベストアルバム 10

          Shady NastyとInjury Reserve、ジャンルの境目ポスト・ジャンル

          Shady Nasty、最初に知ったのはSo Youngのプレイリストだったんだけど、ヒップホップの感性でdeathcrashをやってるみたいでこのバンド最高だった。 ここをこんな風に混ぜて来るのか?マジか?最近のロックに寄ったYves Tumorもそうだけど違うジャンルのものを違う感じでアプローチしていって混ぜて、それでそこから取り出すっていうのは何か可能性を感じる。もちろんそれは常套手段ではあるけれどリスナー側もプレイヤー側もジャンルの幅を狭めていっている現代(それはサ

          Shady NastyとInjury Reserve、ジャンルの境目ポスト・ジャンル

          2021年上半期ベストEP

          出た順、聞いた順 意味のある小さなまとまり 最近EPって単位が好き Personal Trainer ー Gazebo みんなで集まって音を出す、感覚を伝えて変えていく、形は可変で、新しく面白いものを常に探し求めている。Personal Trainerには音楽の楽しさが詰まっていると思う。ユーモアと遊び心があってそしてなにより曲がいい。Muscle Memoryに奇妙に体を揺すられてランナーズ・ハイみたいな気分になって、Cropsでエンジンを一気にふかされる(Polit

          2021年上半期ベストEP

          スーパーリーグとスポーツチーム 〜シーンとファンとコミュニティ〜

          スーパーリーグ構想、ビッグクラブ同士の大きなリーグ、ファンに質の高い試合を届ける為にいうお題目で提示されたそれ。でも結局は金の為でしかないとファンや選手、監督たちからの猛反発にあって発表からあっという間に頓挫した。 議論されるべき問題点は色々あるのだろうけど、個人的には設立12クラブが20年間無条件でリーグに参加し続けられるというのが一番問題だと思った。チャンピオンズリーグはチャンピオンズリーグでシステムや利益の分配についての問題があるのかもしれないけれどそれでも参加権を勝

          スーパーリーグとスポーツチーム 〜シーンとファンとコミュニティ〜

          [インタビュー] Drug Store Romeos 〜バンドという名の物語〜

          イングランドはハンプシャー、フリートの三人組、Drug Store Romeosは不思議な魅力を持っていて、僕らはそれに引き寄せられる。 Slow DanceにSports Team、Drug Store Romeosはロンドンの外からやって来て、音楽性だって違うのに、シーンを引っ張って来たバンドや人に活動初期から称賛されて仲間として迎え入れられた。根底にあるのはたぶん価値観が共有されているってことで、それがコミュニティを作っていく。自分の好きな人たちが好きだって言っている

          [インタビュー] Drug Store Romeos 〜バンドという名の物語〜