知ってはいけない○○の正体
「最近ではサトウキビの卸売価格が下げられてしまい、将来が見えない。」
「自分たちでは到底買えないような、機械を借りているため依存関係から抜け出せない。」
これは、ウガンダにあるサトウキビ畑に訪れたときに農家から聞いた言葉。今回は、ウガンダのサトウキビプランテーションに訪れ、なぜ私たちが安価に大量の砂糖を手に入れられるかを綴る。
このnoteの内容は音声でもお聞きいただけます(stand.fmの音声リンク)
結論
奴隷という安い労働力で生産を拡大させた歴史があり、砂糖は簡単に人を虜にする魔法の粉である。しかし、大量の砂糖生産を可能にするサトウキビのプランテーションは持続可能ではない。
ウガンダで見た衝撃
私は2011年からイギリスのマンチェスター大学院に留学し、農村開発学を専攻していた。
クラスメイトは5人でうち3人はアフリカ人と、今思えばかなり特殊な環境。
そんなクラスメイトと共に、フィールドワークの一環としてウガンダに飛んだ。
農村の現場や地域の経済を学ぶためにウガンダ西部にある「マシンディ」という村に訪問し、広大なサトウキビのプランテーションを見学した。
そこでは、見渡しきれない広大な農地で多くのウガンダ人が手作業やら機械やらでサトウキビの収穫をしていた。
農地の奥へ進むと巨大な工場が白煙を上げて稼働しており、それはインド人による海外投資で作られた製糖工場である。
ビジネスモデルは、ウガンダ人が生産したサトウキビをインド人が買い取り、砂糖に精製するというもの。
オーナーであるインド人の元を訪れると、いかにも成金のような風貌で、金のネックレスや指輪をしていた。
「売上は堅調に伸びていて、さらに農地を拡大していく」
と鼻息荒く語っていた。
私は話を聞きながら大きな違和感を抱いたが、その正体は掴めずにいた。
その違和感の正体はすぐに晴れることとなる。
それは冒頭でも紹介したサトウキビ生産を手掛けるウガンダ人の農家の方の放った数々の衝撃の言葉である。
「インド人との契約によって5年間はサトウキビ以外の作物を栽培できず、自分の食べる食糧を作れない。」
「最近ではサトウキビの卸売価格が下げられてしまい、将来が見えない。」
「自分たちでは到底買えないような、機械を借りているため依存関係から抜け出せない。」
その農家の方の腕や足を見てみると、サトウキビの葉っぱで切ったような無数の傷が刻まれていた。
本来、広大なサトウキビ畑はウガンダ人の所有する農地のため、何を作るかは自由であったはずである。
恐らく、契約当初、サトウキビに転用すれば、今よりもお金が稼げて生活が豊かになるようにそそのかされたのだろう。
確かに、二束三文でしか売れない、ウガンダで主食のバナナやトウモロコシより、サトウキビの方が単価は高いだろう。
一方で、サトウキビの単一栽培だと食料自給や持続可能性の観点からデメリットが多すぎる。
砂糖は合法的な麻薬!?
分かりやすい事例を「金儲けのレシピ」という本を引用して記載する。
レシピ6 合法的に麻薬を売る
砂糖は、別名「マイルドドラッグ」とも呼ばれており、非常に中毒性の高い粉である。
例えば、私たち日本人が大好きな回転寿司。お寿司のシャリには大量の砂糖が使われている。
結果、「100円」という安価なお寿司であっても、砂糖の効果で脳内のドーパミン報酬系を強く刺激し、脳に強い記憶を残す。
そのため、CMやネットで目にすると、そのときの強い記憶がフラッシュバックする。「金儲けのレシピ」に記載のある衝撃的な一文を紹介。
「オシャレっぽい雰囲気を出して白い粉を客の口にぶち込む」ことができれば、それだけで原則儲かると言っても過言ではない。
「金儲けのレシピ」はAudibleで無料で1冊無料で読めるためオススメ。
ファーストフードを提供する企業のように、低単価で大量に売るビジネス実現にとっては、砂糖は欠かせないアイテム。
資本主義と砂糖は非常に親和性が高い
では、なぜ砂糖はここまで拡大したのか?
砂糖は、一昔前まで貴重な薬として扱われていた。
仮に、砂糖が昔のように貴族だけの貴重な嗜好品であったなら、飲食業はここまで発展しなかったと考える。
では、どのような歴史を辿って、安価でいつでも買えるようになったのか?
日本で砂糖が広がり始めたのは今から400年ほど前からである。
一度、口にすると忘れられない味のため、どんどん需要が増えていく。
世界中に植民地を持つヨーロッパの国々が広大な農地のある南米やアフリカで「奴隷」という安い労働力で安価で大量生産を実現。
18世紀における「砂糖」は現代でいう「石油」のように、貿易における戦略商品であり、作れば作るだけ儲かる商品であった。
日本では国内で取れる金や銀を原資に砂糖の輸入大国でしたが、資金が底をついた18世紀に国内生産に切り替えた。
実は日本でも沖縄県や鹿児島県でサトウキビを大量につくっていたという歴史もある。
こういった背景からサトウキビの量産と精製技術が進化し、いまはあらゆる食品に使用されて多くの人を虜にしている。
とは言いいつつも、プランテーションは土地の消耗や、キツい労働が不可欠であるため持続可能とは言えない。
ではどうすれば、持続可能な農業が実現できるのか?
この答えは「アグロエコロジー」というキーワードに隠れていると考える。
次回は、持続可能な農業という観点で綴りたい。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
今回、本文で紹介した著書「金儲けのレシピ」は儲けるための15のレシピが載っており、買い手と売り手として知識を得るためにオススメの1冊である。