2023年に映画館で見た映画ベストテン
図らずも2023年の最後(12月29日)に映画館で見た映画が『ヘル・レイザー』(監督:クライヴ・バーガー/1987年)であったことが何をか暗示しているのかどうか、いまこの段階では考えあぐねているところだけれども、昨年からはじめて1年ほど経ったところでピタリと更新を行っていたnoteをひさしぶりに開く口実に今年もカレンダーに記された記録を遡りながら順不同で10本を選んでみる。
『カード・カウンター』(監督:ポール・シュレイダー)
とても地味な作品と言えるだろうが、今年幾度となく思い出してはもう一度見たいと思った一本。ことによるとオールタイム・ベストに入るかもしれない。
『聖地には蜘蛛が巣を張る』(監督:アリ・アッバシ)
今年は自分が男性であることを恥ずかしく思う映画が多かった。同じところに『アシスタント』(監督:キティ・グリーン)や『バービー』(監督:グレタ・ガーウィグ)もある。
『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』(監督:デヴィッド・クローネンバーグ)
クローネンバーグの映画について語るのは私には困難である。それは愛に近いものだから(愛とは何かをクローネンバーグの映画から学んでいたら問題であるが)。
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(監督:チャド・スタエルスキ)
なぜ3時間近くも必要なのか見終えるまで分からなかったのだが、見終わってみればまた見たい場面が思い起こされる。これはダンス、もしくはミュージカル映画の現在形なのだ。
『三人の男―鈴木竜也短篇集』(監督:鈴木竜也)
我が町には「宮城県芸術選奨」なる由緒ある芸術家の表彰制度があり、それにはしばらく前から「メディア芸術部門」というものが設けられ、今年の受賞者である。
『aftersun/アフターサン』(監督:シャーロット・ウェルズ)
11歳の娘と二人で旅行したことがある父親ならば涙せずにはいられないことはもちろん、うまくいかなかった、もしくは、うまくいっていない人生の断片を持つ人ならば誰しも涙するだろう。
『ニッツ・アイランド』(監督:エキエム・バルビエ、ギレム・コース、カンタン・レルグアルク)
ひさしぶりに仕事復帰した山形国際ドキュメンタリー映画祭2023で見た一本。ゲーム世界しか映らないのだが、確かにそこには生身の人間が映っていたように思えた。
『別れる決心』(監督:パク・チャヌク)
『カード・カウンター』とは逆に、今年幾度となく思い出したもののしばらく見たくない(すっかり忘れるまで)という気持ちになった一本。過激さとは一切無縁のまま、極めて過激な感情が描かれている。
『ザ・ホエール』(監督:ダーレン・アロノフスキー)
名作『レクイエム・フォー・ドリーム』ふくめ、これまでの彼の映画を思えば非常に希望に満ちた映画のようだが、すでに冒頭で主人公は死んでいたのでは?とずっと勘ぐっている。
『映画の朝ごはん』(監督:志子田勇)
画面の奥の人たちがせっせと働いている映画は心地よい。
番外1:『共喰い』(監督:青山真治)
1年越しの追悼として2月に仕事場で青山監督の特集上映を組んだときにご一緒してくれたフォーラム仙台で見直した。公開当時は何となく好きになれなかったのだが、あらためて見て唸った。
番外2:『ビデオドローム』(監督:デヴィッド・クローネンバーグ)と『ヘル・レイザー』(監督:クライヴ・バーガー) 4Kリマスター版
この2本を映画館のスクリーンで見ることができた年として2023年は記憶されるだろう。小学生のころの自分に教えてあげたい。夢は叶うのだ。