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アルフィーとゴジラとコビトカイマンとパレオパラドキシア

売れていないフォークグループ、アルフィーの高見沢さんと坂崎さんと桜井さんはお腹を空かせていました。

給料日前夜、残っていた食糧は3つの卵だけ。

お湯を張った鍋の中で気泡に包まれた3つの卵が茹であがるのを、3人は固唾を飲んで待っていました。

バリバリ バリバリ バリバリ

音を立てて卵が割れると

1つ目の卵からは、小さな小さなゴジラが
2つ目の卵からは、小さな小さなコビトカイマンが
三つ目の卵からは、小さな小さなパレオパラドキシアが顔を出したのです。

食べられる茹で卵ではなくけったいな生き物だったことにがっかりした3人。
だけど3匹の珍獣は三3人にとても懐きました。

台風で屋根が飛びそうなアパートでクーラーを止めて汗を流しながら録音するときも。

レコーディングも。

ライブハウスで演奏するときも。

テレビ局の楽屋でも。

雑誌の取材でも。

麻雀をする時も。

いつでも3匹は3人に付いていき、その度にぐんぐん成長していきました。

3匹が成長するのに合わせるように、3人のレコードの売上もライブの動員数もメディアの露出も増えていきました。

しかし、とうとう手に負えないほど3匹は大きくなって、ついには日本武道館の屋根を突き破りそうに成りました。

それでも、3匹は大好きな3人に構って欲しくて、あるとき凄まじい速度で追いかけてきました。

3人は走って走って走って逃げ続けると、気温はだんだん蒸し暑くなり、気が付くと辺りは見慣れない海辺でした。

目の前の海から突然モササウルスの長い首と細長く伸びた口が飛び出して、メガネカイマンに食いつこうとしました。

ゴジラが大きな唸り声をあげると、地響きがするほどの雄叫びでティラノサウルスが激しく体をぶつけます。

パレオパラドキシアだけは、静かに草を食べていました。

高見沢さんはまだティラノサウルスと戦っているゴジラを案じながら言い始めました。
「『君に逢ったのはいつだろう』って恐竜博みたいなののテーマソングだったよね。走って逃げている間に、理由はわからないんだけどその曲思い出してさあ。あっ、でもさ、坂崎の血流良くなったんじゃないの?」

「そりや、こんなひどい目に遭ったんだから確かに血流は良くなったけどさ。高見沢がその曲思い出したのが引き金になってワームホールを通過しちゃったんだよ、きっと。」
なんとか補食されずに逃げてもどってきたメガネカイマンを眺めながら坂崎さんが答えました。

桜井さんは眉間にシワを寄せて考え込んだままでしたが、しばらくして何かを思い出したように叫びました。
「この風景に似たようなのをジオパーク秩父で見たことがある。ここは古秩父湾だ!秩父は大昔海だったんだ。俺たちは約1700万年前に来ちまったんだよ!どうやって帰るんだよ!」


 GODZILLA🐊🦛GODZILLA🐊🦛GODZILLA🐊🦛

「ワームホール」とは、簡単に言えば別の時空間へ行くトンネルのようなもの。

「パレオパラドキシア」は約1,300万年前に絶滅した哺乳類の一種で秩父からも発掘されています。

モササウルス 中生代
パレオパラドキシア 中新生代
古秩父湾が形成され始めた頃 新生代
と、実際には年代がずれているので、実際にこれら全てが一緒に登場するのはあり得ないのですが、あくまでもお話なのでお許し下さい。

*Wikipedia、ジオパーク秩父ホームページを参照させていただきました。

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