メイド服のタカミー 第四話


夜の森の上、謎の屋敷の周りを三つ首の龍がメイド服を伸せて舞う。
実に不思議で、夢のように美しい情景は、怪奇的でもあった。

屋敷の一室に明かりが灯ったのが見えた。部屋に入ってくる数名の人影。
子供だ。子ども達が窓に近づいて夜空を見上げている。
普通、子ども達が大空を見上げるなら、嬉しそうな顔をするものではないか。
それなのに真っ赤に泣き腫らした目元。いったい何があったのか?

髙見澤の胃が、しくり、しくりと締め付けられる。
成し遂げなければいけないのは、新型コロナウィルスをただ解決することだけではない。
この子ども達は何かを知っている。そして必ず助け出さねばならない。

秩父の櫻井の【邸宅】からここに来るまでの間、休めたのは秩父鉄道の中くらいだった。4本ネックギターを片腕で持てるほどの力を持つ髙見澤もさすがに疲労を感じた。

「お前も疲れただろう。夜警に見つからないところに降ろしてくれ。」 
キングギドラはすでに理解していたかのように、髙見澤が言葉を発する瞬間には下降し始め、音もなく着陸した。
始めはあんなに抵抗して暴れたのに、もうすっかり髙見澤に懐いている。

「また、お前の力を借りると思う。その時はよろしく頼む。こんなに言い方相棒に出会えるなら、坂﨑に生き物の扱い方を聞いておけばよかったよ。」
孤独だと思った敵地で心を許せる友が出来たようで、髙見澤は内心嬉しくもあった。

キングギドラの口に土産の秩父饅頭を2_3個投げ入れて体を撫でた後、漆黒の空に向かって手を振り、友を見送った。

さあ、いよいよ出陣といくか。
疲れた体とは逆に頭の中には、目的を成し遂げよと鼓舞するように、陣太鼓と法螺貝が鳴り響いていた。
俺の兜はこの巻き髪、鎧はメイド服、刀はアーク・エンジェル・ギターだ。

森の奥、屋敷の使用人入口が髙見澤を無言で待ち構えていた。緊張で白い肌に深紅の血が脈打つ。奇譚の始まりである。

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