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#小説 記事まとめ

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2021年12月の記事一覧

ゴールデン街のボニーとクライド

この物語は、新宿ゴールデン街「月に吠える」店主のコエヌマカズユキが、この街で経験した出来事や、出会った人々について描いたものです。事実をもとにしていますが、あくまでフィクションと認識のうえお読みください。 『俺たちに明日はない』という映画がある。大恐慌時代のアメリカを舞台に、実在した男女・ボニーとクライドが、銀行強盗をしながら逃避行をする物語だ。ラストシーンで、二人が87発の銃弾を浴びて死ぬシーンはあまりにも有名である。ボニーとクライドは、アメリカの犯罪史に名を刻んだだけで

ショートショート67『だれかがだれかを』

ショートショート 『だれかがだれかを』 「よしよし!売れる!これで売れる!」 20歳から始めた芸人。 その男の名前は山下一座。 一座、というのはもちろん芸名であり、ファンのみんなもぼくの一座ですよ、というダサめの意味も込めたピン芸人だ。 30歳のときに、初めて出たテレビ番組で爪痕を残した山下は、分かりやすく有頂天になっていた。 お笑い芸人、ピン芸人として、初めて掴んだ分かりやすいチャンス。 10年間、誰にも見向きもされなかったイチ芸人が遂にものにしたチャンス。 田舎

【試し読み】斜線堂有紀の恋愛小説『彼女と握手する』なら無料

クリスマスなので昨年に続き、斜線堂有紀さんに恋愛小説を頂きました!! 恋人たちの記念日にふさわしいお話を、という依頼をしたのですが……果たして。斜線堂さんの恋愛小説『愛じゃないならこれは何』発売すぐに重版もかかり、大変な好評頂いています……感謝!! 今回は、その『愛何』の1編『ミニカーだって一生推してろ』に登場する地下アイドル『東京グレーテル』のメンバーのお話……。『愛何』をもっと楽しめる一品です。刮目してご覧ください……!!  斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)第23回電撃

犬の遠吠え

今となっては昔のことだけれど、この動物園にはある犬がいた。 彼の名は「ルーフ」 どこにでもいる、普通の柴犬だ。 しかし彼は、名だたる動物達を抑え、この動物園の 「顔」になった。 「人気って聞いたからきたけど、普通の犬じゃん」 これは噂を聞きつけ来園してきた観光客が最初に言う、いわば決まり文句のようなものだ。 彼の見た目があまりにも普通だったのか、拍子抜けした声がたくさん飛び交う。 しかし間も無くして、彼らはその人気たる所以を即座に理解する。ショーが終われば、彼らは自然と称賛