バイク川崎バイク(BKB)

バイク川崎バイク(BKB)です。ショートショートが好き。バイクは普通。すぐ読めて2回読みたくなる話が好き。2023年4月また素敵な本を出せました→https://amzn.asia/d/7S1YqOx

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ショートショート27 『電話をしてるふり』

『電話をしてるふり』 まただ。 もう。 しつこいってば。 「ああ、もしもしごめんパパ。もうすぐ帰るよ。うんうん。そうだねうん。迎え?あ、どうしようかな。来てもらおうかな。ええと、今はね…」 私はよくナンパされる。 特に男受けを狙った格好はしてないつもり。 でもそりゃあ、かわいい服は着たいし、メイクも好きだし、見た目には気をつかっているつもり。 夜一人で歩いていると、繁華街、駅前、最寄り駅から家までの徒歩15分の薄暗い道、ところ構わず声はよくかけられる。 見た目に隙があ

    • 短編小説『ネオシーダーを吸ってたのは誰だ?』

      ※今回はいつものショートショート小説ではなく、この物語はノンフィクションです。実在の人物・団体・事件と、すべて関係してます。 2023年10月9日に芸人の楽屋で起こった事件、事実を元に、ほぼそのまま小説にしてます。全部で三章あります。お楽しみください。ヒィア。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  『ネオシーダーを吸ってたのは誰だ?』 【第一章〜気になりだしたら止まらない〜】  これずっとなんの話やねん!もうええわ!どうも、ありがとうございました〜! パチパチパチ

      • ショートショート72『死神のジレンマ』

        ❮ジレンマ❯ 相反する選択肢によって、板挟みになり、しかしどれかを選ばなければならず、かつそのどれを選んでも不利益を被りかねない状態のこと。 * 自身を“死神”と名乗るその主は、見た目には普通の人間に映った。 黒装束を身にまとっているわけでもなく、大きなカマを振りかざしているわけでもない。ごく普通のスーツ姿。顔立ちは、鼻筋がよく通っており切れ長の瞳がとても中性的で、男とも女ともとれた。 俊介〈しゅんすけ〉が、目の前の主を死神だと信じざるをえなかったのは、先ほど間違いなく

        • ショートショート71『その赤いソファー』

          男が散歩がてら、散策もかねて、普段あまり通ったことのない道で帰っていたときのこと。 ふと、粗大ゴミ置き場を発見した。 そこには“ゴミ”と呼ぶには似つかわしくない、まだまだ綺麗で使えそうな、高級感のある赤いソファーが捨てられていた。 一人用だがゆったりと座れるサイズ感。 そこは郊外で、ひとけもない場所だった。 とはいえ、しっかりとあたりに誰もいないことを確認する男。そして、何の気なしに腰をかけてみた。 「……ああ……なんだこれ。いい。いいぞ」 フカフカだがそれでいて、し

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        ショートショート27 『電話をしてるふり』

          ショートショート70『とある若手漫才師が解散する理由』

           とある若手漫才師が、公園で壁に向かいあいながら、ネタ合わせをしていた。 ●「どうも~エメラルズです~」 ■「拍手すごー!ああ痛いでしょ、手がね、もういいですよ~そんなそんな~」 ●「誰も拍手してへんがな」 ■「いや、アイツだけしてる!」 ●「やめやめ。お客さんに指さすな。ま、突然やけどね、我々もええ歳やんか」 ■「ああ今ちょうど33歳でね」 ●「ちょうどてなんや。中途半端やろ」 ■「まあいいじゃないですか、ねえ~?」 ●「ねえ~やなしに。でね、結婚とか考え

          ショートショート70『とある若手漫才師が解散する理由』

          ショートショート69『あなたに捧ぐショートショ○ト』

          突然のお手紙、失礼いたします。 お元気ですか?僕は元気です。 毎日、早起きもしてます。 卵好きなので朝食には、たま○焼きや、○玉焼き、スクラ○ブルエッグを食べたりします。 さて、僭越ながら、上記の穴埋めの言葉が読めましたら、手紙の続きを読み進めてほしいです。 ーーー読めましたか? きっと読めましたよね。 人間の脳というのは、ある程度の文字列を面でとらえて、勝手に補正して埋めてくれるようにできているのだそうです。 まあ、もちろん、そもそもの単語や言葉たちを知らなかったら

          ショートショート69『あなたに捧ぐショートショ○ト』

          ショートショート68『My Life Book』

          例えば自分のこれまでの一生が、 例えば自分の歩んできた人生が、 一冊の本になるとしたら。 例えばそれを死んでから読めるとしたら。 この出来事は一体、どんな物語となっているのだろう。 それはそれは甘くて、悲しくて、苦くて、酸っぱくて。 読者(私)が、ページを捲るたび引きつけられて仕方がない。 そんな物語になっていることを、切に願う。 * 昇(のぼる)と出会って、私の白黒だった人生は一気に色を帯びた。 カラーテレビが日本に現れたときのことはよく知らないが、きっと

          ショートショート68『My Life Book』

          ショートショート67『だれかがだれかを』

          ショートショート 『だれかがだれかを』 「よしよし!売れる!これで売れる!」 20歳から始めた芸人。 その男の名前は山下一座。 一座、というのはもちろん芸名であり、ファンのみんなもぼくの一座ですよ、というダサめの意味も込めたピン芸人だ。 30歳のときに、初めて出たテレビ番組で爪痕を残した山下は、分かりやすく有頂天になっていた。 お笑い芸人、ピン芸人として、初めて掴んだ分かりやすいチャンス。 10年間、誰にも見向きもされなかったイチ芸人が遂にものにしたチャンス。 田舎

          ショートショート67『だれかがだれかを』

          ショートショート66『専売特許』

          「はい!喜んでぇぇぇ!」 ダメだ。これじゃ店員仲良し居酒屋の掛け声だ。アダ名と趣味を名札に書いたタイプの。 「………」(無言でコクリと小さく頷く。と同時にできれば涙を浮かべる) いやこれもダメ。キャラじゃない。もたない。てか、できれば涙を浮かべるってなんだ。できねー。 「あー、おっけおっけ。よろしくね~」 逆に軽いのがいいって思ってるやつ。ないない。 「う…嬉しい…。わたしで…良ければ」 うーん。悪くはないけどな~。でもなあ。なんかな~。 「はい。幸せに、してよね」

          ショートショート66『専売特許』

          ショートショート65『ラブソングの秘密』

          『ラブソングの秘密』 (A) コンパで出会ったとある若い男女。 二人は盛り上がった。 とにかく話が合った。 いや、厳密に言うと、合わせていた。 お互い、顔が好みだったから。 中身なんて二の次。 顔が好みの相手の言うことは多少、的が外れていても受け入れることができた。 男は冗談交じりに、奇跡という言葉を乱用した。 出会いは奇跡だね。乾杯できるのも奇跡だね。 女は笑った。 少し“奇跡ノリ”がしつこいな、とも思ったが笑うことにより男の尊厳が保たれるのが分かっていたから。 男は強く

          ショートショート65『ラブソングの秘密』

          ショートショート64『アラじーちゃん』

          混乱している。 今───なにが起こった? 今───なんて言われた? ええと……ちゃんと思いだしてみよう。 まず…大好きな祖父が亡くなりました。 で、 悲しみました。 で、 思い出などを反芻しました。 で、 ひと通り悲しみにくれました。 で、 ふと祖父の部屋に行きました。 で、 祖父の写真を見つけました。 で、 わたしと一緒に笑顔で写ってました。 で、 で、  また悲しみました。 また思い出などを反芻しました。 またひと通り悲しみにくれました。 で、 手紙を見つけました。 わ

          ショートショート64『アラじーちゃん』

          ショートショート63『ひとりごとごと愛してる』

          俺はひとりごとを言う。 かなり言う。 らしい。 らしいというのは、その、つまりあれだ。 本来、ひとりごととは無意識に言うもので、 言った瞬間は無自覚で、 たまたま聞かされた相手は無関心で。 けれど、そのひとりごとの内容次第では、聞かされた相手もおよそ無関心ではいられなくなる。 そうなると、ひとりごとを言ってしまったことに初めて気づかされる。 ーーーこの前のひとりごとは恥ずかしかった。 ショッピングモールのエレベーターに乗っていたときだ。 もうここで勘のいい人な

          ショートショート63『ひとりごとごと愛してる』

          ショートショート62『間が悪いやつら』

          「……ほんと、間が悪い……」 時刻は深夜2時をまわった頃。 親友のユミから、“ナギサ~!告白してめでたく彼氏できたよ~”っていうLINEと、 わたしの彼氏のリョウ君から、“ナギサごめん。疲れた別れよう”っていうLINEが、 同時にきた。 間が悪い。 脳の処理能力が追いつかない。 別にユミは悪くない。ずっと相談にものってたし。めでたい。 リョウ君は……少し悪いかな。LINEで言ってくるなよ。会って言え。気持ちは分かるけどさ。せめて電話してこい。 何にしても“間が

          ショートショート62『間が悪いやつら』

          ショートショート61『がんばれがんばれ』

          薄暗い照明と小粋に流れるジャズが、店の雰囲気を盛り立てる。 「一人でも飲みに来れる感じのいいバーだね」 初めてきた客は、カウンターに座り一口お酒を嗜むと、大抵こう呟いている。うん。ワタシもそう思う。 初対面で仕事の愚痴を語る者。 失恋したと嘆く者。 様々なお酒をとにかく味わう者。 出逢いを欲っしている者。 ワタシはそんな多種多様な客の、夜の音を聞いていた。 すると、いささか緊張したマスターの声。 「あちらの…お客様からです」 言いながらカウンターの端で静かに飲んでいた女

          ショートショート61『がんばれがんばれ』

          ショートショート60『僕は友達が少ない』

          僕は友達が少ない…… こんなふうに意識してしまうようになったのはいつからだろう。 友達、親友、連れ、知り合い、顔見知りなど、自分と関わった人達に様々な、“呼び方”が溢れているものだから、こんな悩みが生まれるんだ。 当たり前に呼び方一つで関係性の“差”は明白となるのだから。 元々、人と接するのは苦ではなかった。 子供の頃は、友達100人できるかな的な歌に準じ、やっきになって皆と仲良くした。 物心や知識がつくと、八方美人的な言葉を覚え、そう思われないよう皆となるべく

          ショートショート60『僕は友達が少ない』

          ショートショート59『五等分の花嫁』+近況報告

          『五等分の花嫁』 四人でケーキを食べたいなら四等分。 八人でピザなら八等分。 そうやって人々は昔から“平等”という愛すべき平和なやり方で一つのものを分けてきた。 では 『愛する一人の女を五人の男が欲した場合は?』 答えは簡単。 女を五等分にすればいい。 一応、先に言っておくが、ケーキと同じように文字通り“五等分に女を切り裂く”みたいなシリアルキラーなそれではない。 男全員が女を花嫁にして、女も幸せになる方法を探ろう、ということだ。 女は「みんながそれで幸せなら」と

          ショートショート59『五等分の花嫁』+近況報告