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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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#HipHop

不良ラップを創出した男。SCHOOLLY D①

約40年前、1枚の12インチ・シングルが街角リリースされた。シルバーに黒文字で描かれた手書きのグラフィティー(というには可愛すぎるが)。シンプルなTR -909のビートと荒いスクラッチ、「そこの彼女、街角の怪しいものには手を出さないで僕のメルセデスに乗りなさい」とラップされる不良のための楽曲だった。 ラッパーの名前は、スクーリーD(本名はジェシー・B・ウィーバー・Jr.)。西フィラデルフィア出身。 フィリーの地元紙(?)〈City Life〉によれば、彼が少年だったとき、

¥100

ドゥーム/サイケデリック・ラップ

ロック~ハードコア~ノイズを飲み込んだ鬼ドープでヘヴィーウエイトなヒップホップを追求しているアメリカのDälekが5月10日にデビュー作『Negro Necro Nekros』の再発盤を発表する。1998年にCD/LPでリリースされた『Negro Necro Nekros』に6曲のボーナストラックが追加され、LPには12PGのブックレットが付いてくるという豪華仕様。現在、DälekのBandcampにて予約が開始している。 今作は90'sアンダーグラウンド・ヒップホップにお

【Dontae Winslow】カマシ・ワシントンのトランペッターを掘り下げる

カマシ・ワシントンの新作『Fearless Movement』がリリースされましたね。 カマシについてはいろんなところでいろんな人が書いていると思うので、ここでは先行カットの「Prologue」で鮮烈なソロを披露していたトランペッター、ドンテ・ウィンスローのキャリアを掘り下げていこうと思います。 ドンテ・ウィンスローはジャズ・トランペッターでありながらエミネムやDr.ドレのオーケストレーションを手掛け、ジャスティン・ティンバレイクの右腕としてツアーを回っている、という話を

interview Jun Iida - Evergreen:日系アメリカ人トランぺッターとNujabesとの出会い(2,900字)

新譜をチェックしていたら、このアートワークが目に飛び込んできた。 和服の若者がトランペットを持っている写真なのだが、なんとなく写真の感じも含めて日本で作ったアートワークじゃない予感がした。そこで、はっと思い出した。「あ、この人、会ったことあるな…」 僕はイイダ・ジュンさんと東京で会っていた。オーブリー・ジョンソンというジャズ・ヴォーカリストが日本に来た時に彼女たちと食事をしたのだが、その時に彼女の友人のひとりとしてその場にいたのがイイダさんだった。 普通に「はじめまして

¥300

J Dilla聖地巡礼地図(1):デトロイト編

イントロデトロイトは2020年時点で人口約439万人という米国中西部の大都市で、Jディラ出生の地である。ダン・チャナスによる評伝『Dilla Time』は、はじまりの場所としてのデトロイトをたいへん重視しており、同書はデトロイトの発展史に関する詳細な記述からはじまる(第2章)。  エミネムを筆頭に、D12、ビッグ・ショーン、ダニー・ブラウン、ティー・グリズリーら、いまや多くの著名ヒップホップアクトを輩出する街となったデトロイトだが、Jディラがキャリアを開始した1990年代

BABA a.k.a. “BB”SHOT (THINK TANK)インタビュー

いよいよ来週3月2日(土)に渋谷Circusで開催されるMURDER CHANNEL VOL.29。 今回はTHINK TANKのオリジナル・メンバーであり、MUROCHIN(WRENCH)とのユニットDOOOMBOYSとしても活躍するBABA a.k.a. “BB”SHOTのインタビューを公開します。 BABAさんとは個人的にも付き合いが長く、THINK TANKの頃から追いかけていて、自分が10代の頃からずっと憧れ続けている本当にカッコいい人です。MURDER CHA

anon records スタート記念! anon pressレコメンド音楽座談会

MON/KU「Long, Long, Long October」 KYLE MIKASA「Trash Metal Gabber」 メンバー紹介平大典(以下、平):今日は、anon recordsの開始を記念して、編集部メンバーで去年の音楽で印象に残ったものやレコメンドなどをざっくばらんに話せればと思います。まず、12月から始まったanon recordsについて、てーくさんから紹介をお願いします! てーく:てーくです。編集部内で音楽の話することが多くて、いつかのミーティ

アンドレ3000 『New Blue Moon』解説 寡黙にして、雄弁な

Hiphop 50に際し、ラッパーの年の重ね方に想いを巡らせたらアンドレ3000の奇襲に遭いました。 まず、2023年の音楽状況。昨年の大物のリリース・ラッシュから一転、新作フィーバーはなかったものの、これ、ちょっと新しいな、という萌芽を感じさせる良い作品がプチプチ生まれた年でした。私はといえば、秋口までヒップホップ50周年関連の原稿が続いて忙しく、なんだか緊張していました。いきおい、90〜00年代の名作を聴き返す時間が長かった。 それは、自分の半生と、ゴールデン・エラに活

BEST ALBUMS OF 2023

リホです。 2023年リリースのアルバム(EP含む)から年間ベストを選んでいきます。毎年同様で、16作品順不同とさせていただきます。 Janelle Monáe - The Age of Pleasure近年は俳優業もめざましい、Janelle Monáeによる4枚目のアルバム。自身、パンセクシャルを公表している彼女は、以前から「愛」やセクシャリティに関連した楽曲を多数リリースしています。今作はアフロビート、レゲエ、カリビアン的な要素も織り交ぜながら、一層多様化した音楽性

2023 / 年間 BEST RAP ALBUM

こんにちわ、SHADYと申します。 2023年も終わりが近づいてきました。 今年もアーティストの方々が素晴らしい音楽を届けて下さり、私としては感謝の意しかありません。 特にHIPHOPにおいては、数々の新鋭アーティストが台頭してきた印象が強いです。有名アーティストや、べテランアーティストも素晴らしい作品を出していましたね。そんな中から私が最も記憶に残ったBEST  ALBUM20枚をランキング形式でご紹介させていただきたいと思います。 20 . NODUO, Nonazz

Interview by KUVIZM #11 塩田浩(マスタリングエンジニア)

ビートメイカーのKUVIZMが、アーティスト、ビートメイカー、エンジニア、ライター、MV監督、カメラマン、デザイナー、レーベル関係者にインタビューをする"Interview by KUVIZM"。 第11回は、マスタリングエンジニアの塩田浩氏にお話をうかがいました。 【塩田浩】 SALT FIELD MASTERINGのマスタリングエンジニア。多数のHIP HOP作品や、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの作品を手掛ける。古くはキングギドラ『空からの力』(1

【Review】BEACON/KEMUI - 上げろ、復活の狼煙

生息地はアンダーグラウンド。だがいつだってサグでもギャングでもない、市井の目線から無二の言葉を紡いできたMC・KEMUIが遂に現行HIP HOPシーンに帰還する。1996年より朧車(OBORO)としてキャリアをスタートし、漢やRUMIといったハードコアなMCsの中で鎬を削りながら牙を磨き続けてきたKEMUI。その武器はワンワードに何層もの意味を含ませる筆力と、そのヘヴィな世界観を軽快に聴かせてくれる歯切れの良いフローである。 これまでに『BLUE SCREEN』(2007)

Death Gripsについて

Zach Hill、MC Ride、Andy Morinの3人によって2010年にアメリカはカリフォルニアのサクラメントにて活動を開始させたDeath Gripsは、ヒップホップとパンクを主軸に様々なジャンルの要素を乱雑に繋ぎ合わせ、人間の本質的な破壊衝動を呼び覚ますカオティックでサイケデリックな作品を発表し、熱狂的なファンを生み出し続けている。 2011年4月に自主リリースされたMixtape『Exmilitary』は瞬く間に広がり、2012年4月にメジャーレーベルである

【Review】MAD MIKRIS Soundtrack/MIKRIS "MADSKILLを持つのは誰だ!?"

厭世主義が蔓延る狂った世の中で正気を保つためには、『時計じかけのオレンジ』よろしく逆説的に自身が狂わなければいけないのかと思うことがある。そんな時、耳元から唯一無二のMADな世界へ誘い、行き場のない鬱積を晴らしてくれるのが完全無欠の”MADSKILL”を持つ千葉のMC・MIKRISだ。 90年代前半にヒップホップと出会い、15歳からリリックを拵え続けたMIKRISが2003年にデビューEP「Who’s The MADSKILL!?」を世に放ってから今年で20年。その周年を記