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R&Bを中心に音楽を聴いています。

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最近の記事

『シビル・ウォー』とテキサス共和国

映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』がまもなく公開されますね。 「内戦が勃発した合衆国」という設定が現実世界の緊張の高まりと相まって話題となっていますが、当初から突っ込まれまくっているのが「カリフォルニアとテキサスが同盟を組んで連邦政府と戦っている」という点です。 こちらの引用は公式サイトから。 なぜカリフォルニアとテキサスとの同盟設定が突っ込まれるかというと、現実世界ではカリフォルニアは民主党、テキサスは共和党それぞれの強固な牙城であり、両者が手を組むなんてとても

    • Aya Nakamuraとパリ・オリンピック(続)

      フランスのシンガー、アヤ・ナカムラがパリ・オリンピックの開会式でパフォーマンスすることが伝えられて国中で大問題になっている、というnoteを書いたのが3月のことでした。アヤ・ナカムラを巡る基本的な文脈はこちらを参照していただければと思います。 あれから4ヶ月、紆余曲折を経ながら無事にステージを成功させたアヤ・ナカムラ。 さすがオリンピックとあって、アヤ・ナカムラを全く知らない人に一気に届いたインパクトは大きかったようです。 フランスがオリンピックを開催するまでに大きな問

      • 【Dontae Winslow】カマシ・ワシントン×ドンテ・ウィンズロウ【対談】

        カマシ・ワシントンの新作でトランペットを吹いている、いま要注目のミュージシャン、ドンテ・ウィンズロウ。 今回はカマシのyoutubeチャンネルで公開されているドンテとの対談をすこし翻訳していこうと思います。 ドンテって誰?という方はまずこちらからどうぞ。 以下、カマシとドンテの対話です。 カマシ(以下K): 今日は素晴らしいブラザーであるダンテに来てもらいました。ダンテは教育者でもあり、体系的なミュージシャンでもあり、常に自分自身のやっていることを理解していますよね。

        • 【Dontae Winslow】カマシ・ワシントンのトランペッターを掘り下げる

          カマシ・ワシントンの新作『Fearless Movement』がリリースされましたね。 カマシについてはいろんなところでいろんな人が書いていると思うので、ここでは先行カットの「Prologue」で鮮烈なソロを披露していたトランペッター、ドンテ・ウィンスローのキャリアを掘り下げていこうと思います。 ドンテ・ウィンスローはジャズ・トランペッターでありながらエミネムやDr.ドレのオーケストレーションを手掛け、ジャスティン・ティンバレイクの右腕としてツアーを回っている、という話を

          【ERYKAH BADU】North Sea Jazz Festivalアーカイブ【D'ANGELO】

          ゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしょうか。 連休ということでまだ観ていなかった映画やらなんやらをまとめて観てしまおうと考えている人も多いかと思います。 そんな計画をぶち壊そうとしているのがNorth Sea Jazz Festivalのyoutubeチャンネル。 North Sea Jazz Festivalは1970年代から続くオランダのロッテルダムで毎年開かれている音楽フェス。 ジャズと冠してはいますが、2000年代にはエイミー・ワインハウスやアデルがいち早く

          【ERYKAH BADU】North Sea Jazz Festivalアーカイブ【D'ANGELO】

          【アンメット】【アンチヒーロー】【夜のクラゲは泳げない】 劇伴で見る2024春ドラマ(1)

          4月も終わりに近づき、新しいドラマも出揃ってきましたね。 みなさんはドラマを見始めるとき、何を基準に選んでいますか? だいたいはメインの俳優陣、それか月9、日曜劇場といった放送枠。 詳しい人なら脚本家で見るドラマを決めているかも知れません。 ここでは、ドラマ中に流れるBGM、いわゆる「劇伴」を作っている作曲家を軸に2024年の春ドラマをいくつか見ていこうと思います。 【アンメット ある脳外科医の日記】【fox capture plan】杉咲花の主演で今期の大本命ドラ

          【アンメット】【アンチヒーロー】【夜のクラゲは泳げない】 劇伴で見る2024春ドラマ(1)

          Nas『Illmatic』30周年記念に思い返す、20周年記念ライブ

          Nasの『Illmatic』30周年を記念してDJプレミアとタッグを組んだ新曲「Define My Name」がリリースされましたね。 曲の終わりで「It's Album Time」とシャウトしているのでジョイントアルバムも期待されます。 Nasは最近、2023年にリリースした『Magic 3』からのMVを立て続けに公開しており、個人的にも聴き直す機会が多くNas熱が高まっていたところでした。 DJプレミアといえばスヌープ・ドッグとも新曲を制作しています。プリモは今年で

          Nas『Illmatic』30周年記念に思い返す、20周年記念ライブ

          Young Jeezy、46歳、かく語りき。

          2000年代半ばに豪快なダミ声とストリート上がりのタフなスタイルでヒットを連発したアトランタのラッパー、ジージィ(Jeezy / Young Jeezy)。46歳になった今も健在で、先日タイニーデスク・コンサートに出演した様子をこちらで紹介しました。 実はジージィ、2023年に初の著書となる回想録『Adversity For Sale』を執筆しています。今回は出版に合わせて行われたジージィのインタビューを抄訳しながら紹介していこうと思います。 名前が挙がっているマスターP

          Young Jeezy、46歳、かく語りき。

          エイコン、50歳、かく語りき。

          00年代半ばに彗星のように現れ、特徴的な歌声を武器に「Lonely」などなど大ヒットを連発していたシンガーのエイコン。 久しぶりに聴きましたが独特の明るさと切なさがないまぜになったいい曲ですね。  エミネムとの共演が記憶に残っている人も多いでしょうか。 そんなエイコン、今では50歳を迎え、BBCのインタビューに答えています。 (ということはデビュー作『Trouble』をリリースした2004年には既に30歳を過ぎていて、わりと遅咲きだったんですね。) エイコンは合衆国

          エイコン、50歳、かく語りき。

          【Dontae Winslow】ジャスティン・ティンバレイクを支えるトランペッターを掘り下げる

          ジャスティン・ティンバーレイクのタイニーデスク・コンサートが公開されましたね。 ジャスティン・ティンバーレイク自身についてはいろんな人がいろんなところで書いていると思うので、ここではジャスティンが起用しているあるミュージシャンに注目しようと思います。 それがドンテ・ウィンスロー(Dontae Winslow)。 ドンテ・ウィンスローはボルティモア出身のジャズ・トランペッター。タイニーデスクではドレッドを頭の上でお団子にしており、"Selfish"の終盤にウィンスローがト

          【Dontae Winslow】ジャスティン・ティンバレイクを支えるトランペッターを掘り下げる

          George Duke, Jeffery Osborne

          前回書いたように、最近また存在感を増してきているのがR&Bプロデューサーのブライアンマイケル・コックス。 コックスのツイッターを見ていて気になった投稿がこちら。ジョージ・デュークは過小評価されている、特にジェフェリー・オスボーンとのアルバムは傑作という内容です。 ジョージ・デュークは70年代から80年代にかけて活躍した鍵盤奏者。 こちらの動画は近年のディアンジェロやヒップホップのサンプリングソースになる演奏なんかも含めて「ジャズピアノの歴史」を再解釈したものですが、その

          George Duke, Jeffery Osborne

          Muni Long「Made For You」、Dupri、Cox

          R&Bシンガー、マニー・ロングの「Made For Me」が2023年9月のリリースながらここにきてR&Bチャートで1位を獲得するロングヒットになっています。 ビルボード・ホット100でも20位と、マニー・ロングの一番のヒット曲だった2021年リリースの「Hrs and Hrs」に並ぶチャートアクション。 「Made For Me」を手掛けたプロデューサーのジャーメイン・デュプリとブライアンマイケル・コックスもにっこり。 なぜかブラジルのサッカー選手、ペレの言葉を引用し

          Muni Long「Made For You」、Dupri、Cox

          Tiny Deck Concerts: Jeezy & Berhana

          最近のタイニーデスク・コンサートから良かった回を2つ紹介していこうと思います。 まずはジージィ(Jeezy)。Young Jeezyとして00年代半ばのアトランタからゴリゴリのトラップでヒットを連発していた彼も今やキャリア20年のベテラン。  喉の奥から絞り出してるようなしわがれた声はそのままに、楽曲のトレードマークだった派手なシンセリフは繊細な弦楽四重奏に置き換えられているあたりに時の流れを感じます。 そしてその編曲を担当したのが、このバンドでベースを弾いているデリッ

          Tiny Deck Concerts: Jeezy & Berhana

          Aya Nakamuraとパリ・オリンピック

          パリ・オリンピックを巡って、シンガーのアヤ・ナカムラが国家規模の騒動に巻き込まれています。 ことの発端は、ナカムラが2月にマクロン大統領と面会した際にオリンピックの開会式でエディット・ピアフの曲を歌わないかと打診された、という報道。これに反移民の右派が大反発、それを受けてナカムラへの人種差別容疑で検察が捜査を開始した、という構図です。 アヤ・ナカムラは「Djadja」など、文字どおり「桁が違う」大ヒット曲を持ち現代フランスの音楽シーンを代表するシンガーです。ナカムラはドラ

          Aya Nakamuraとパリ・オリンピック

          日記: ファレルの思い出

          ファレルが主催のフェス、Something In The Waterを見ました。ストリーミングでフェスを見るのはコーチェラ、ルーツ・ピクニックに続いて今年3つめ。いい時代です。 アッシャーやらT.I.やら往年の大スターが出てきたのも懐かしかったですが、最終日大トリのタイラー・ザ・クリエイターがファレルに向かって「あんたがthe Greatest of All Timeだ、ありがとう」と両手を合わせて頭を下げていたのが印象に残っています。 フェスの一番の出し物だったのが2日

          日記: ファレルの思い出

          スーパーボウルに見る黒人音楽の多様性 〜 ハーフタイム・ショーだけじゃない

          「Lift Every Voice and Sing」スーパーボウルのハーフタイム・ショーの盛り上がりは凄まじく、Dr.ドレの話は至るところでされていると思うので、ここでは試合が始まる前に歌われたブラック・ナショナル・アンセムの話をしましょう。 ブラック・ナショナル・アンセムこと「Lift Every Voice and Sing」は1900年代初頭に書かれて以来ブラックコミュニティで長く歌い継がれてきた曲で、近年のBLM運動の盛り上がりとともにその象徴的な歌詞で再び注目を

          スーパーボウルに見る黒人音楽の多様性 〜 ハーフタイム・ショーだけじゃない