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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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2023年5月の記事一覧

THE GOOD KIDS:原広明・茂木欣一インタビュー「ほんと音楽ってマジックだと思うよ」

 期待の「THE GOOD KIDS」の誕生である。結成されたばかりの新バンドが来たる7月8日の初ライヴでついにヴェールを脱ぐ。  元KING BEES→元The 3peaceで現在は作曲家としても活躍する原広明(vo,g)とフィッシュマンズ/東京スカパラダイス・オーケストラの茂木欣一(ds,vo)、レピッシュのtatsu(b)、元KING BEES→現東京スカパラダイス・オーケストラの大森はじめ(Perc)、さらに20代の女性ヴォーカル・デュオWAY WAVE(choru

【Track Review】 YOASOBI, 「アイドル」 (2023)

Artist : YOASOBI Track : アイドル Label : The Orchard Released : 2023.04.12 Genre : J-Pop 原本記事 音楽クリエイターグループのYOSOBIが発表した「アイドル」は、芸能界を舞台に扱った漫画原作アニメシリーズ《推しの子》(2023)オープニングテーマ曲で制作された。編曲面で興味深いのは、導入部と連結部にK-Popで流行っていたEDM/ヒップホップ・トラップ・サウンドと、サビ部にJ-Pop特有の

Gia Margaret "Romantic Piano"

アメリカ・シカゴ出身のシンガーソングライターによる、約3年ぶりフルレンス3作目。 ふと思い返すと、最近はピアノをフィーチャーした作品に惹かれることが多い気がする。シンセではない、なるべく加工されないままのアコースティックなピアノの音色。昨年末にリリースされた Duval Timothy "Meeting with a Judas Tree" は、実験的なエディットを多用する彼にしては意外なくらいストレートなクラシカル作品で、時に軽やかに、時に厳かに鳴らされるピアノの音色は狂

《今君が"そこ"にいることを 僕は忘れないから》 BUMP OF CHICKEN、「be there」ツアーファイナル公演を振り返る。

【5/28(日) BUMP OF CHICKEN @ さいたまスーパーアリーナ】 BUMP OF CHICKENにとって、そして僕たち一人ひとりのリスナーにとって、ライブとは何か。先に結論から書いてしまえば、この日の公演は、その問いに対する確信をお互いに深め合うような、あまりにも輝かしい時間・空間となった。 僕自身、今まで数え切れないほどBUMPのライブを観てきたけれど、その本質が、これほどまでに深く鮮やかに浮き彫りになったのは、今回のツアーが初めてだったかもしれない。も

芝生の上、志村正彦を想う

こないだ久しぶりに夏フェスに行ってきた。アーティストが発表される前にチケットは購入していたのだが、トリがフジファブリックと知りそれだけでもこのフェスに行く意味を感じた。 学生時代から邦楽ロックが好きな同世代ならみんな知っているバンドだと思うが、私が好きになったのは2008年に発売された3枚目のアルバム『TEENAGER』がきっかけだった。今や誰もが知る名曲となった『若者のすべて』も収録されている。 このアルバムで彼らを知った人も多いと思うが、他のアルバムと比べるとだいぶポ

脱兎「IN DA HOUSE」全曲解説

岡山のラッパー、脱兎がリリースしたEP「IN DA HOUSE」のプレスリリース文章を担当しました。各種配信サイトで聴ける・ダウンロードできます。 岡山を拠点に活動するラッパーの脱兎は5月30日(火)、新作EP「DAT IN DA HOUSE」を配信リリースする。 脱兎は地に足の着いたリリックと力強いフロウを、サンプリングベースのオーガニックな質感のものが中心のビートで聴かせるラッパー。地元レーベルのTHE WEST CLASSIC RECORDSに所属しており、これまで

¥100

オデット・ツールの「Isabela」はPlay It Loudで!

ECM以前の作品もよい  昨2022年にリリースされたオデット・ツールの「Isabela」をようやくじっくり聴くことができた。内容はもちろんのこと、しみじみとCDを買ってよかったと思わせてくれるプロダクションであった(理由は後半にて)。ECMが信頼できるレーベルであることを証しする緒要素が詰まった作品と言える。  オデット・ツールは2017年に出た前々作の「Translator's Note」を愛聴していた。デビュー作の存在も知らず、どこかの媒体で紹介されたのを目にして聴

interview Antonio Sanchez:"Shift"で示したプロデューサーとしての進化とメキシコ人としてのルーツ

アントニオ・サンチェスといえば、2010年代以降のパット・メセニーの音楽に欠かせないパットの音楽の最重要パーツのひとつであり、世界最高のジャズ・ドラマーのひとり。 そんなアントニオは映画『Birdman』の音楽を担当し、そこから徐々に音楽性が変わってきた。 ドラムだけで様々なシーンの感情や意味を表現した前代未聞のサウンドトラックだった『Birdman』での作業はアントニオ・サンチェスに作品を作りこむことの魅力を発見させることになった。その結果、ひとりで多重録音と編集を駆使

¥250

陰りは、飾りだ。

そう書いていたnoteを、3月末くらいにあっという間に放棄して今に至る。正直、書いても意味がないなと思ってしまったんだ。 2ヶ月経った今、久しぶりにnoteを書いているのは、ワンマンライブを迎えるにあたって自分の心が定まったからだ。 今日のnoteは、 ワンマンをやると決意して契約して書いた3月の自分へ、 そして歌を始めると決意して悶え苦しんだ自分への、 禊(みそぎ)とケジメだと思ってもらえたら嬉しい。 アルバムをリリースして、変わったこと4月5日に、leift名義での

【Review】Golden Ratio/Kowree × chop the onion "らしさと意外性 黄金比"

 時は未曾有の緊急事態、コロナ禍と同時期に製作が始まった、島根を背負うMC・Kowreeのアルバムが奇しくもその終焉と共にリリースされた。タイトルは「Golden Ratio」。即ち黄金比、人間が最も美しいと感じる比率のこと。そのシンボルはジャケットの中心に配置され、中にはこの作品を構成する物々や記憶、盟友の姿が刻まれている。その全ては黄金比なるバランスで作られたという強い自信を伺わせるビジュアルだ。  前作「Gene And Thought」はMitsu the Beat

People In The Box 『Camera Obscura』 小論

初出: 2023/5/10 「あなたのノイズ、わたしのミュージック。」 People In The Box 『Camera Obscura』 音楽を止めるのは、他でもないあなただ。  現実をもとに書き起こされた詞世界で、役は演じられる。現実にて鳴った音が変換された録音で、振動は再現される。言葉を歌うのであればなおのことであるが、音楽作品には複数の軸によって織られる、バーチャル的な特性が付随する。  わざわざこれを示したのは、その特性に着目したときあらわれてくる像が、幾度再

【Track Review】 XG, 「LEFT RIGHT」 (2023)

Artist : XG Track : LEFT RIGHT Label : XGLAX Released : 2023.01.25 Genre : K-Pop / J-Pop / Alternative R&B XGはメンバー全員が日本出身もしくは日本系で構成された7人組の(K-)Popグループである。XGALXプロジェクトの出資が日本の大手企業のAVEXから始まったところ、そしてグループを見る中で日本というアイデンティティーを消去しにくいところなどから、私は彼女らの音楽

interview Gretchen Parlato:極上のデュオで紡ぐ「まずは自分自身を見つめてみる」ための歌

前作『Flor』はなんと10年ぶりのスタジオアルバムだった。ついにグレッチェン・パーラトが動き出した!と思っていたら、間髪入れずに2作目『Lean in』が発表された。 グレッチェンは2010年代のジャズの隆盛を支えた最重要人物のひとりだ。彼女のリズムのアプローチの確かさやその表現の豊かさは「声」を必要としたジャズ・シーンに不可欠なものだった。だからこそ、グレッチェンの参加作を聴いていれば、現代ジャズの重要アーティストに出会うことができた。 そんなグレッチェンが自身の音楽

¥250

編集部が語る!「行きたくない」とぼやいていたback numberのライブが、愛で溢れていた話

「あー、ライブ行きたくない。」 これは、back numberのライブを前日に控えた私のツイート(抜粋)である。 もちろんこれは本心ではない。ライブも自分の意思で申し込んだし、昨年のアリーナツアー「SCENT OF HUMOR TOUR 2022」のTシャツを身に纏って羽田発・福岡着のフライトに乗り込むほどには気合い十分である。 ……それでも、back numberのライブのことを考えると溜め息が漏れてしまう。 それは、back numberの音楽に触れるといつだって