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視点が変われば世界が変わる!〜上川高校と地域協同で育む、子どもたちの生きる力〜
こんにちは!上川町地域おこし協力隊インターンシップの河口七海です。
上川町学園構想に関わる人を知りたい!知ってほしい!そんな思いで、前回に引き続きインタビューをしてきました。
第三弾は、上川高校の方々。アカデミックプロデューサーの大城さんも加わり、生徒の興味関心を育む学びについて語っていただきました。
■プロフィール
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右)近藤 伸 校長:今年度上川高校に赴任。教育アイデアがありすぎて妄想が止まらない!
真ん中)大須田 翼 先生:上川高校で教師ライフをスタート!担当科目は英語
左)大城 美空さん:上川町地域おこし協力隊 アカデミックプロデューサー。上川町にある KINUBARI COFFEEのカフェラテが元気の源!
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左)なぎとさん:上川高校1年生。世界で一番美味しそうにご飯を食べられる自信あり!
右)みずきさん:上川高校1年生。JO1にハマり中
みんなが同じ目線になって考える、探究の授業
― 上川高校ならではの特色ある授業について教えてください。
大須田先生:総合的な探究の授業(大雪基礎)ですね。僕が高校生の頃にはこんな授業はなくて、総合の時間では先生が用意したトピックを進めていました。
上川高校の探究の授業は、勉強が苦手な子でもハンデがなく、むしろ得意で輝けるチャンスだと思います。地域の方の協力無しではできないので、すごく恵まれてますね。
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大城さん:アカデミックプロデューサー(地域おこし協力隊)のような教育コーディネーターがいて、地域と何かを協働することについてはどう思いますか?生徒たちにとっては恵まれた環境かもしれませんが、先生方は調整が大変だったり、通常授業よりもやることは増えると思うんですよ。
大須田先生:増えますねー。全部の学年で同じことをしているわけでもないので、担任の裁量が大きいんです。
ただ、探究のような授業では正しいとか間違いがないので、人間同士楽しく生徒と関わり合いができるんです。生徒と一緒になって同じ目線で物事を考えられるのが僕は好きですね。
大城さん:それはとても嬉しいです!探究の授業には教科と違って正解がないので、「まずやってみたらいいんじゃない?」「失敗してもそこに学びがあったよね」と振り返れますよね。そこに対して、先生と生徒が対等な目線というのは、すごく素敵だなと思いました。
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生徒たちが語る、授業で見つけたおもしろさ
ー 今まででどんな授業が面白かった?特に、地域の人と何かをした授業についてきいてみたいです。
みずきさん:未来型公民館「ヌクモ」館長の松井丈夫さんとやったプログラミングの授業が面白かったです!参観日に地域の人と協働して学ぶ授業で、プログラミングツールを使って翼先生を喜ばせるコンテンツを考えるワークショップをしました。
大城さん:どんなところが面白かったの?
みずきさん:入学して1ヶ月くらいだったけど、この授業をしたことで、ほぼ初対面のクラスメイトと「この言葉の方が良いかな?」とお互いに意見を交換し合いながら、色々なアイデアが出てきたのが楽しかったです。あと、たけっちょ(松井さん)の話も、面白かった!
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大城さん:あまり話してないクラスメイトとも、意見を交換しながら良いアイデアが出てきたってかんじだったんだね。なぎとは何の授業が楽しかった?
なぎとさん:印象的だったのは「大雪基礎」という総合的な探究の授業内の林業をテーマに扱った授業かな。上川に15年間住んでるけど、知らないことが多いことに気づきました。
高校から歩いて15分の「上川ファミリーオートキャンプ村」っていうキャンプ場も、子どもの頃1回くらいしか行ったことがなかったからさ。
そこでずっと場内に何があるのかを冒険してたんだけど、知らない川とか植物があって、上川ってこんなかんじなんだって視野が広がりました。町を見る目がちょっと変わったと思います。
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大城さん:生活圏で見る上川からちょっとはみ出たところが、意外とあったんだね。
なぎとさん:そう、意外とあった!それと自分自身が冒険するのが好きっていう発見がありました。
気になったところに行きたいっていう好奇心旺盛な性格だから楽しめたし、上川のこともよく知れたから印象深いです。
大城さん:当日真っ先にキャンプ場で茂みの奥に突入してたよね!
この授業では「あたらしい林業」について考える中で、ゴミになってしまうような木をどうしたら活かせるだろうか。より良いキャンプ場にするには、どうしたら良いかを考えたよね。探検はその後どう繋がったの?
なぎとさん:「四葉のクローバー」「細長い葉っぱ」など9マスの中にあるお題を歩いて見つける『森のビンゴ』を作りました。
キャンプ場だから親子で来る人が多いと思うんだけど、小さい子って好奇心旺盛だから探検とかしたがるじゃん。俺もそういう人間だからこそ、子どもの心で楽しめてる時の感覚を大切にして、このキャンプ場に来る子たちがどうやったら楽しめるのかなって考えてかたちにすることができたと思います!
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一歩踏み出して見えてきた”新しい自分”
ー 上川高校に来て、自分がちょっと変わったかもなと思うところはありますか?
みずきさん:めっちゃある!中学の時に比べて、積極的に意見が言えるようになりました!
中学校の時は、発言する時に周りの目を気にしがちだったんだけど・・・。上高に来てからはグループ活動が多いから、自分から発言しないといけない時も必ずあるんです。
最初は「これ言ったら周りの人はどう思うだろう」って気にしてたけど、地域の人と話していくうちに自分の意見を受け止めてもらえたり、言葉を引き出してもらう過程で考えていることを言いやすくなったんですよ。
「生き生きしてるね。上高行って良かったんじゃない?」って、親にも言われました。
なぎとさん:考えることの幅が広がったことかな。
町の補助のおかげで、上川高校の1年生は希望者全員が無償でフィリピンへ1週間の海外研修に行けたんだけど、初めて海外に行ったら自分が色々なことに対して好奇心があるなって気づきました。
中学校の時は、自分に何ができるんだろうって漠然とした不安の感覚があって、自分とあまり向き合えてないなという自覚もありました。だけど、高校でフィリピンに行って日本にはない文化を目の当たりにして、良い機会だなと思って生徒会や部活など色々なことへチャレンジしました。それを機に視野を広げて考えられるようになって、他人や社会についてもそうだけど、何より自分自身とちゃんと向き合えるようになってきたと思います。
元々外国の文化には興味があって英語教師を目指してるんだけど、その思いも深まったかな。一人の人間として成長できてるかんじがします。
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地域みんなで子どもたちの視野を広げるサポートを
ー 大城さんがアカデミックプロデューサーとして授業に関わる中で、大事にしていることは何ですか?
大城さん:生徒たちが言ってくれたことがまさになんですけど。”自分が一歩踏み出すと世界が変わる・自分の視野が広がる”というワクワクする感覚を大事にしています。
これまでの失敗体験などから「自分はこういう人間だ」って決めつけていたり、「上川は何もない」と思うなど自分の中での”思い込み”が探究授業の体験を通して変わる。本人の持ってる固定概念が揺らがされて、やってみたら面白かった。そして、先生や地域の人たちといった、応援してくれる人がいると感じてもらえると良いなと思っています。
大須田先生:僕は担任1年目なんですけど、大城さんや町の人がいなかったら、移住したての町で自分で地域探究の教材を準備してやらないといけないのですごく困ったと思うんです。
町の人が一緒になって良い授業をしてくれるから、担任の技量や上川町とのつながりの有無に関係なく、質の高い授業を実施できているということに感謝しています。
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ーお二人から見て、探究の授業を通して生徒たちがどう変わったと感じますか?
大須田先生:人見知りは段々しなくなってると思います。元々人懐っこい子たちなんですけど、よりコミュニケーションが楽しめるようになっていると感じます。
大城さん:私もそう思います。この前3年生のクラスにお邪魔して、町の事業の関係で小樽商科大学と社会人数名でビジネス立案をする授業を行ったんです。生徒たちは、やったことがないことに対しても「とりあえずやるか」ってすごく乗り気で。短い時間でアイデアを沢山出してまとめて、発表まで堂々とできていました。ざっくりいうと創造力やコミュニケーション能力がすごく伸びていると感じます。
3年間を通してちょっとずつ顔つきも変わってきてますね。どんな授業の内容を持っていっても、あの子たちとなら自分たちがやりたいように仕上げてくれるという安心感があります。
1年生は、フィリピンへの海外研修後に変化を強く感じましたね。町が保険やパスポート以外の渡航費用を負担してくれて、希望者は全員行ったんですよね。
大須田先生:たしかにすごく変化がありましたね。英語の授業も、最初は苦手意識の方が高くて英語を話すこと自体が嫌だってかんじだったんですが、帰ってきてからはとりあえず話してみようという態度になりましたね。羽田空港に帰ってきて、コンビニで「ありがとうございました」の代わりに「Thank you」って言っちゃうみたいな。そういうところが変わったなーと思います。
あとは、海外で旅行したから修学旅行は大丈夫だって。ちょっと辛いことがあったとしても「フィリピンを乗り越えたからなんとかなる」って。行かせてもらって何言ってんだよってかんじなんですけど、ありがたいことだったと大人になってから気づいてほしいですね。
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大城さん:(日本とは文化が全然違い新興国である)フィリピンを乗り越えて、という言い方が良いのか分からないですけど、宿泊でお湯がでないとか部屋に虫が出てパニックになる!などの海外あるあるに対しても、良い意味で挑戦をして帰ってきました。
前は授業で「こういうのどう?」って提示しても「うーん・・・」と殻に篭ってて、授業終わる頃にやっとエンジンがかかるかんじだったんですけど。
帰ってきてからの授業は、新しいことを提示しても「まあやってみるか」とか「失敗しても大丈夫」「なんだか面白そう」と思える好奇心が育まれたと思います。
大須田先生:数字に出るわけではないので難しいですけど、みんな積極的になりましたね。
例えば、部活に入ってなかった子が3人くらい急に入部したり。フィリピン研修や探究授業が直接関係あるかは分からないですけど、何かしら影響があったのかなと思います。
みんな強くなったな、一皮むけてきたなって感じてますね。
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上川で育んだ力を地域に還元。目指したい教育のサイクル
― 校長先生が学園構想のワークショップに参加して感じたことを教えてください。
近藤校長:上川町の人は、色々な分野から教育に熱心・興味がある方が多いと感じました。
自分が持っていない角度から「こうした方がいいんじゃないか」という意見を聞けるのは、すごく刺激になりましたね。自分の凝り固まった価値観だけではないものを吸収できるので、(学園構想)は非常に良い集まりなんじゃないかなと思います。
ただ、どうかたちにするかはとても難しい課題ですね。色々な思いがある方が集っている分、一つにまとめるのはすごく大変だと思います。
今は、小中高・こども園それぞれに思いがあって、分断されていると思うんですよ。それをどう繋ぐかが、学園構想を一つにするためにとても大切な視点かなと思います。
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大城さん:そうですね・・・。個人的には、高校のすごく素敵な活動も地域の方がまだ知らなかったりすると思うので、今回の集まりを通して色々やってることが伝わった気もしますが、いかがですか?
近藤校長:僕も赴任して半年ちょっとしか経ってないですけど、これまで高校の活動が町の方にあまり発信されてなかったのがとても不思議なんです。次年度は、もっと町に出る活動を増やすとか、高校生の様子を見てもらえる機会を増やしたいですね。
大城さん:先生たちとも、高校生が地域で何かするイベントやお祭りができたらいいなと話し合ってるんです。商品を開発するとか、困りごとを解決するとかでも良いですし。
本人たちのやりたいことがエネルギーとなって、地域に還元されるとすごく良いなーと思っています。
近藤校長:たしかにそうですね。地域の人たちが生徒を色々なかたちで育ててくれて、それを繰り返し経験することで、今度は生徒自身が地域を育てるという力をつけてほしいです。彼らの力が町に還元されて、町の創生にも繋がってほしいですね。
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「子どもたちにとって良いこととは?」を一番に考える先生たち。その思いが授業を通じて生徒たちに届いていることに、胸がじーんとなりました!
魅力的な取り組みが増え続けるであろう上川高校。そして、教育に携わる人たちが一丸となって進める”上川町学園構想”にぜひご注目ください!
(文章・写真:上川町地域おこし協力隊インターンシップ 河口 七海)
(写真提供:上川町地域おこし協力隊アカデミックプロデューサー 大城 美空)