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13歳からの「自己理解ってなんだろう?」

「あなたが将来やりたいこと」
「叶えたい夢」
これらをテーマにした作品を作りなさい。

夏休みの宿題を机に放り投げ、
そのままベッドに転がり込んだ。

やりたいこと?将来の夢?

よく聞かれるけど、そんなことわからない。
だって自分になにができるかわからない。

好きなことはあるよ。絵を描くこと。

でも1番になって賞をもらったことはないし、
眠るのが惜しいくらい夢中になれるわけでも、
みんなからすごい!って言われたこともない。

「得意なことや好きなことをやってみたら?」
って言われても、特別な才能なんか見当たらない

ちょっと待って。
「得意なこと・好きなこと」ってなんだろう。

1番にならなくても、上手にできること。
やっていると、なんだか楽しい気持ちになること。

それがあなたの「得意なこと・好きなこと」。

そしてもうひとつ「大事なこと」がある。
それは、あなたが大切にしている考え。
価値観、とも言うよ。

この3つが重なり合う小さな部分に、
あなたがやりたいこと・目指す方向」のヒントがある。

「得意なこと・好きなこと・大事なこと」が分かると、
「自分の心地いい居場所」を見つけやすくなる


3つが重なり合う部分にヒントはある

いきなり、なんなんだ?
もしかして、夢の中にいるのかな。
夢で宿題のネタが見つけられたらラッキーかも!

どう、なにか浮かんできた?
こんな風に自分自身のことについて考え、
知っていくことが「自己理解(じこりかい)」。

考えるときに大事にしたいのが、
他の人と比べなくていい」ということ。

絵は得意だけど、〇〇さんよりも上手くない。
歌うのは好きだけど、歌手みたいにキレイな声じゃない。

他の人と比べてしまいそうになったら、
自分にとって、それはどういう意味がある?」って
自分に質問してみて。

絵を描くのが得意。特に色付けがワクワクする。
歌うのが好き。嫌なことがあっても元気が出る。

自分が得意だと思うことで、
 自分が好きだなあと感じることで、
 自分の大事にしてることが叶えられること


それは、あなたにとってどんなこと?

そう言われても、急には考えられないよ。
特に「得意なこと」って探すのが難しいし。

いつもなにげなくやってることで、
まわりの人から喜んでもらえたことはない?

褒めてもらったのに「こんなこと、たいしたことない
って決めつけてしまっていることはない?

簡単にできてしまうから、
自分ではまだ気づけていない「得意なこと」もあるよ。

「得意なこと」はまわりの人も教えてくれる


そうか。もしかしたら気持ちを言葉にしたり、
分かりやすい言葉で伝えるのが得意なのかも・・・・。

人から褒めてもらったことは、
大事に覚えておいてね。

「笑顔がいいね!」「一緒にいると元気になれる」
「話をちゃんと聞いてくれる」「嘘をつかない」
「すぐに犬と仲良しになれる」
「ご飯を美味しそうに食べる」などなど。

他の人が見つけてくれたあなたの「良いところ」は、
「たいしたことない」って決めつけずに、
「教えてくれてありがとう」って受け取ろう。

いつかきっと、自分を助けてくれる種になる。

ちょっとだけ、分かってきたかも。

好きなことは絵を描くこと

 得意なことは、絵の色付け。
 手紙の書き方や教えるのが上手って
 言われたこともある。

 大事にしてるのは、最後まで諦めないこと

そうなんだね。もっと聞かせて。

「絵を描くこと」のなにが好き?
「得意なこと」はどんな風に得意?
「大事にしてること」はどうして大事?

絵を描くことのなにが好きって・・・・
えーっと、そうだ。

不思議なんだけど、ライオンを描いてると
すごく強くなった気持ちになれるし、
笑ってる人を描くとこっちまで笑顔になったり。
いろんな気持ちになれるのが楽しい。

「得意なことは色付け」。
この色とこの色を混ぜたら良いかもって、
すぐに頭に浮かぶんだ。

大事にしてることは「最後まで諦めない」。
途中でやめちゃったら苦手なままだけど、
続けてたら変わるかも、って思うから。

・・・・こんなことを考えてなんになるの?

たとえばこの先、なにかを
選ばなくちゃいけない場面に出合うとする。

「赤くて・丸くて・やわらかいもの」が欲しくても、
そこに希望とまったく同じものはないかも知れない。

でも「赤くて・丸くて・やわらかいもの」を
欲しい理由が分かっていたら、近いものを選べる。

赤いのがいい➡元気になれるから➡じゃあ、オレンジ色でも?
丸いのがいい➡可愛いから➡ハート形はどう?
やわらかいのがいい➡安心できるから➡じゃあ、いい匂いがしたら?

「どうしてもここだけは譲れない!」
ということと、
「近いからこっちでもいいかな」
ということを
知っておくと、選択肢や可能性がぐんと広がる。

じゃあ「絵を描くこと」と同じように、
「いろいろな気持ちになれること」なら、
好きになれるかもしれないってこと?

最終的には「やってみないと分からない」けれど、
なにかを選ぶ時や探す時の道しるべになる

「絵を描くこと」「いろいろな気持ちになれること」
がある方向に歩いて行けば、同じ「楽しい」の要素を
持つのものと出合える可能性も高くなる。

もちろん、今までとまったく違う方向へ行ってみても良い。

新しい「好き」「得意」「大事にしたいこと」
と出合えるかもしれない。

「自分はこうなんだ」って決めつけてしまわずに、
いつだって新しく変わって良いんだよ。

大切なのはあなたが
「どんな時にリラックスした元気な自分でいられるか」
を知っていること。

いつでも、どんな時にも、
自分らしさを取り戻せるスイッチを持っておこう。

そうすれば宿題の「夢ややりたいことが見つかる」
っていう話?

やりたいことや夢を叶えるのも素敵だけど、
この先、学校や仕事、毎日の生活の中で
いろんな波が押し寄せてきても、

自分のことが分かっていれば波を乗りこなしたり、
 やり過ごせる力になる


ってことを知っておいてほしいんだ。

自分はどんな時に落ち込んでしまうのか、
 そしてどんな時にまた楽しい気持ちになれるのか


それが分かっていれば、苦しい時や、
もうどうしたらいいか分からない時にも、
目の前の波に対処する方法が考えられる。

波と出合わないように泳ぐのは難しくても、
波と出合った時にどうやって泳げばいいか、
波がおさまるまでどうやったら浮いていられるか


そのための力を身につける一歩が、
「自己理解」なんじゃないかと思うんだ。

そうして試行錯誤しているうちに、自分が辿り着きたい
場所にも少しずつ近づいていけるんじゃないかな。

「夢を描け!!夢を叶えよう!!」とか言わないんだ。

ちょっとガッカリっていうか、ううん。
ほんとはホッとしたかな

特別な才能や没頭できるもの、
夢ややりたいことがない自分のこと、
ずっと引け目に感じてたから。

1番になって賞をもらったことはなくても、
眠るのが惜しいくらい夢中になれなくても、
みんなからすごい!って言われなくても、

自分が楽しい気持ちや元気になれるものを
知っていることは、大きな力になるんだね。

ねえ、また会える?
また、お話を聞かせてくれる?

いつかもしあなたと同じように、
「自分の好きなこと・得意なこと・大事なこと」
に自信が持てずにいる人がいたら、声をかけてあげて。

その時は必ず、あなたのそばにいるから。
会えるのを、楽しみにしているよ。

起き上がるとすぐに画用紙にペンを走らせた。

タイトルは
「13歳からの、自己理解ってなんだろう?」

やりたいことも夢もないひとりの少年が、
夏休みのある日、不思議な夢を見る。

「もしかしたら気持ちを言葉にしたり、
 分かりやすい言葉で伝えるのが得意なのかも」

と気づいた少年は、自分と同じように自分に
自信を持てずにいる人たちに向けた
メッセージを絵本に綴り・・・・・・

おっと、これ以上はまだ秘密。
あなたの笑顔を想像しながら描くよ。
絵本が完成したら、また会おうね。

              (おしまい)


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かりん
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