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【読書】『悪女について』有吉 佐和子(著)
謎の死を遂げた美貌の女性実業家、富小路公子。一代で巨万の富を築いた公子の人生は、数々の謎とスキャンダルに満ちたものだった。
この物語は、彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで構成されており、それぞれの異なった証言をつうじて、彼女の多面的な人物像が浮かび上がるというもの。彼女の死の真相を探ると同時に、彼女が本当に「悪女」だったのかを問いかける。
「悪女」という言葉に惹かれ、それを見抜こうと意気込んで読みはじめたのだが、これは結局のところ、美と正義に生きた人間の物語だったのではなかろうか。特に、最後に登場する次男の証言が、富小路公子という人物を最も正確に表している気がする。うーん、彼女が悪女だったとはどうも思えないんだよなあ。
「主人のお金で、宝石を買うのは悪妻でしょう?私は自分で働いて、それでダイヤモンドを買うのよ。だって、美しいものを身につけていると、胸を張って歩きたくなるでしょう?」