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国連平和大学での第一週目

のたりのたりのなまけもの 2021.10.1

ブエノスディアス。

夫と坊に、「いってきまーす」と、溢れる朝日の中に向かって歩き出す。
私の二度目の大学院生活が始まった。

8時10分の通学バスに乗り込み、山を登っていく。
車窓から、つやつやした葉とまだ若い実をつけたコーヒーの木々が見える。
コーヒーの実の収穫時期っていつ頃なんだろう。
そんなことを考えていると、バスは緑のトンネルを抜け、ガタガタうねうね道を進み、国連平和大学のキャンパスへ到着する。

8時45分から10時までは、全学部共通のPeace and Conflic / 平和と紛争 の基礎講座がある。
コロナ対策で教室に入れる人数が限られているので、グループに分かれて対面とオンラインに分かれて授業をする。対面グループは日毎にローテンションする仕組みだ。
オンライングループは、ズームライブがされている教室、カフェテリア、外のテーブルなど、各々の場所で受講をする。
私は、オンラインの時は、最初は教室で受講していたが、結局カフェテリアの外のテーブルに落ち着いた。

紫、ピンク、紅、オレンジ、の花々の周りに、蝶々がひらひらの舞い、時たまハチドリも花の蜜を吸いにくるが、気まぐれなのかすぐにどこかに飛んでいってしまう。

朝の空気と山の香りを纏った風が吹き、たおやかに枝葉を揺らす大きな木々。
その木々の向こうに見える立派な山々。
その頂に沿って広がる白い雲。

テーブルの上にいた、足が赤くて胴が青いコオロギのような虫が、特大ジャンプで草の中に帰っていく。

おっと。いかんいかん。先生は今どこまでお話しをされてたかな。

慌ててパソコンのズームの画面とノートに視線を戻す。

講義といっても、先生がずっと話すのではなく、質問やコメントがぼんぼん飛び交ったり、先生が学生に話をふったり、とてもインタラクティブだ。
学生からの発言に、Peace and Conflictというものへ対する、それぞれの視点が見えて、それもまた興味深かったりする。
あっという間の75分だ。

そして10時15分から11時45分は、25人くらいのグループに分かれてのセミナーが始まる。

「平和とは、、、である」という4つの定義を見て、
どの定義が自分に一番しっくりくるかを選び、同じ定義を選んだ人たちで、そして最後は全体で、なぜそれを選んだのか、なぜ他のを選ばなかったのかをディスカッションしたり、

AとBの間に起きているコンフリクトのケースシナリオが配られ、AかBのどちらかの役になり、お互いが求めるものを得るために、その役の立場で話し合いをし、解決策を探すというロールプレイをしたり。

先生がファシリテーターとなって、学生主体で、その日のトピックに関する議論がどんどん深められていく。

グループにいる学生たちは、日本、フィリピン、アメリカ、フランス、キプロス、グルジア、キルギス、メキシコ、オランダ、インド、などなどなどなど、文字通り世界中からコスタリカに「平和」を学びに集まってきた人々だ。
国籍だけはなく、様々なバックグラウンドを持った人々が、一つの教室に集まって、それぞれの意見、視点、想いを共有していく。

異文化や多様性といったものが凝縮された空間の中で、「違い」だけでなく「同じ」もたくさんあることを、知ることができる。

そしてもう一つ、このセミナーで良いなぁと思うのが、
ファシリテーションスタイルだ。

みんな発言したいことがたくさんあってウズウズしていて、最初は、質問が投げかけられ、各々がボンボン言っていたのが、ファシリテーターの手腕で、いつの間にか挙手した人が順番にリズムよく発言していくようになっていき、気づけば、少しピリッとした適度な緊張感と高揚感のある雰囲気が出来あがっていて、問いに対する学生たちの思考がどんどん深められていく。
そして、笑顔を見せながらジョークを挟んで空気を緩ませたり、授業が終わっても心にエコーするような言葉を引用してディスカッションを締め括ったりと、緩急のつけ方が、何とも絶妙なのだ。

前半のレクチャースタイルもそうなのだけど、この後半のファシリテーションスタイルも、学ぶことが多く、私もこういう授業やファシリテーションができるようになりたいなぁと思う。

Peace and Conflictの内容だけでなく、ティーチングスタイルも非常に勉強になり、お得感満載な授業が受けられて、とても満足だ。

週の終わりには、早速グループプレゼンテーションがあった。
それぞれのグループに違う論文が割り当てられ、それを10分キッカリでプレゼンするというもの。
私たちのグループの論文は60ページもあった(白目)。
そして発表は二日後の金曜日だ(さらに白目)。
日々のリーディング課題も普通に追いついていない状態なのに60ページは辛い。

大学始まって最初の週で、早速早起き戦法を試みるも、朝起きるのがなかなか辛い。坊と一緒に早く寝たのに、全然寝足りない。
早く勉強のリズムを整えねばなぁと、ヨボヨボしながら何とか準備を終え、プレゼンもまぁまぁOKレベルで終わった。

ホッと一息。友達とランチを食べていると、大きなクチバシのカラフルな鳥が木の上にいるではないか!大興奮で飛び上がり、ジッと見ていると、3羽もいるではないか!オオハシ君だと思ったら、それはオオハシの親戚の「チュウハシ」という鳥だった。

最初の一週間ようがんばったねぇ、と、姿を見せに来てくれたに違いない。

15時のバスに乗って、コロンの町に降りる。

この場所で、 APSの仲間たち、そして、国連平和大学に世界中から集まってきた人々と、今からこんな風に「違い」と「同じ」を知り合っていき、一緒にたくさんのことを学び、深め合っていけるのだ。
バスの座席に腰を沈めると、疲れた体に充足感が満ちていった。

バスを降りて、てくてく歩いて坂を登り、家に帰る。

「おかえり~」

穏やかな夫の声と、カレーの香り。

よし。来週からも、またがんばろう。

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