ウクライナ、ロシア、ベラルーシ、リトアニアなどこの小説に関わる地域の臭いを今少し勉強したいと画策していてNHKのサイトに分かり易い記事を発見しました。
『元駐ウクライナ大使で『物語 ウクライナの歴史』の著者の黒川祐次さんに、キエフ・ルーシの歴史について話を聞きました。』として書き始められる記事です。私の今回の投稿記事のバナーの背景写真はこの記事から頂いています。
1. 殺害された児童の母親の住まいの前で、心に潜む反ユダヤ人的感情を煽るような証言をするよう官憲たちから求められます。
児童の死体が発見され、その葬式も終了し、Yakov が容疑者として逮捕され拘置所で尋問を受けていた期間内に、Yakov が勤務していたレンガ焼成工場に在る馬小屋が、その二階にあった Yakov が寝泊まりしていた部屋もろとも火災で焼失しました。その後あまり日数の経たない、雨模様の一日のことです。秘密警察組織に所属する法廷検事 Grubeshov を始めとする官僚や警察官たち、更には教会の神父までが集まって来て、犯人を特定するための証言聴取の集会が開かれました。
工場の管理人Proshko の申し立てにあっては、次から次へと、これまでに語り手が読者に伝えた出来事、それらの大小に関わらず取り上げられます。しかしそれらは少しずつ、この反ユダヤ人の恣意的な動機によって歪められ紡ぎ出されます。その幾つかにあっては Proshko の意識に昇ることもなく歪んでしまうようでもあります。「歪められること」は特別な明確さを持って読者の印象に残ります。シンボリズム Symbolism と言われる小説の特性・技法の好例です。現実の世界ではこの手の犯罪的工作が、これほどまでに人の目に露呈されることはないでしょう。
2. 殺害された児童の母親 Marfa の証言。何度も急かされるものの出てくるのは自分が目にした事実ではなく、今は亡き自分の子供から聞いたとする話が大部分。
集会を切り盛りする法廷検事の Grubeshov は Marfa の話が途切れる度に Go on, please, we are listening! と急かせます。そこで出てくる話は、今は亡き息子の Zhenia と、隣の家の息子 Vasya が言っていたと言った話ばかりです。子供たちは 12 才。母親の Marfa は自分の息子が自宅に戻らず行方不明になった後、6-7 日が経っても警察が死体が見つかったと自宅に乗り込んでくるまで警察に助けを求めすらしなかった母親です。
自分の子供の世話どころか、子供と接触している時間がほとんどない生活をしている女が、殺害されたこの児童の母親です。上記引用の部分はこの母が必至に作り上げた物語のようなのです。法廷検事に命じられて、また同検事にその核として適当と考えだされた出来事の例を記憶させられ、それを種にして話を作ってでもいるようです。
3. 《英語の学習》 "infer something from something" なる言葉の意味を丁寧に読み取る。
教会のリーダーである神父が、ユダヤ教徒への嫌悪感を煽り立てる(inflammatory な)説教を始めます。
ボヤッと聞いていると論理的な説明、これぞ学問をしている人の博識を持ってこそと思ってしまう、勉強になるお話のようですが、その内容を自分で考え、その正当性を判断しようとする人には、直ぐに「その理屈が破綻している」と解る訓話です。
この訓話ですが、一月ほど前に読んだ "The Four Horsemen" の中にあった聖職者・宗教集団のリーダー達とアセイスト達の間の議論を思い出さずにおれません。
4. Study Notes の無償公開
今回の読書対象は Chapter IV, Pages 109-137 です。これまで同様に A-4 用紙に両面印刷して左を閉じることで冊子状に整理できます。
《以下に公開の Study Notes は 2024/10/25 に一か所、最終ページの最後尾部分を訂正しました。》