読書対象は「エピソード 21」 "Drainage and the desert 鼻と喉の切開手術と参加者ゼロの子供会議” と、「エピソード 22」 "Jamila Singer ジャミラは歌い手" です。
中国がヒマラヤ山脈添いの国境を越えて来た結果武力衝突が発生(1962年9月9日)、インドが敗れて終戦。そんな騒動に興奮するのですが、父アーメドの緊急入院や子供サリームの鼻の手術、更にはアーメドと母アミナの仲直り、これらの出来事は自国が進める戦争とは違って、自分たち家族の一人ひとりにとって話題にしているだけでは済まない一大事なのです。
1. 中国とインドの国境で戦争が始まる中、ボンベイに残した父の雇人からラワルピンジに居候する母に電報です。
戦争が始まり、無邪気なとしか言いようの無い興奮、戦意を鼓舞する言葉が社会に氾濫します。そんな中、ボンベイに残った父が不摂生な生活に身体を壊し緊急入院です。母のアミナは15才のサリームと 14 才の妹の二人を連れて即刻ラワルピンジを出発します。サリームにとって鼻の手術をするなんてこと、そんなオプションがあったなんて全く知らなかったのです。
2. 鼻水が止まらない鼻の手術、その効果はサリームの世界を変えるにとどまらず、著者の持論を展開する口実になります。
生まれた時以来続く鼻のトラブル。この病気の所為でサリームの頭の中に子供たちの交流の場ができていたのですが、終戦の解放感の中、両親は 15 才のサリームに鼻の障害除去手術を強行します。子供たちの会議が立ち消えになるのですが、それに代わって世間に充満する悪臭がサリームの脳に良く届くようになります。
3. 鼻の手術の結果である嗅覚の獲得。そんな出来事を私はこんなにうまく利用するのですとラシュディー氏は自信満々です。
この小説を読まれない方にもこの一節だけは、その存在をお教えしたく思いました。話題をつなぎ発展させんが為の、著者の「強引なこじつけ」に拍手したくなります。ちなみに、ここに出てくる grandfather とはドイツに留学して医者となった、権力者にへつらうことなく生きた男です。
4. Study Notes の無償公開
これまでと同様に私の Study Notes を無償公開します。今回は二つの Episodes 21st と 22nd、”Drainage and the desert” と "Jamila Singer" です。原書の Pages 409 - 453 に対応するものです。適宜ご利用ください(辞書引きの手間を節約できる以上の役には立つものと信じております)。