今回の読書対象は原書 "Midnight's Children" by Salman Rushdie, 40th Anniversary Edition, a Vintage Classics paperback、25 番目のエピソード "In the Sundarbans、502 - 521 ページです。
1971 年にパキスタンの西側部分から東側部分が分離独立してバングラデシュが誕生することになる内戦を背景にして展開するある物語がこのエピソードの中心です。
小説作品ただ一つの中にも社会に暮らす人々の気持ちの多彩な側面が描かれているのが一般的です。読者それぞれはそれぞれに異なる高低ランクを与え、それらを自身の心の内に納めることになります。
今回の読書対象のエピソードを読むにあっては、この小説において繰り返し現れる命令の根拠である「正義」と末端の兵士たちが自身で目にし頭の中に描く「世界」とが議論すらできないまでにすれ違っている状況に私の関心は向かいます。今回はこの観点に高いランクを与えることにします。
1. 戦場に連れ出される直前の状況が前回に読んだエピソード "The Buddha" の中にあります。
ブッダと呼ばれる私はその嗅覚を武器に「望ましくない輩」を街からつまみ出す役割を与えられます。部下には3人の少年兵があてがわれました。 "Number 22 Unit 第 22 組" と命名された4人で成るひと組です。西側パキスタンに所属する彼ら4人が戦う相手は東側パキスタンの地区に住まう人々、主として同じイスラム教徒です。
2. 命令をする側と受ける側、その双方が棚上げしていた戦場・前線のリアリティが生の人間である4人を襲います。
戦場からの逃亡なのか、命令に従い不良分子を追い詰めているのか、南を目指した4人組はとっくに市街地域を通り過ぎ、ボートを調達してサンドラバンズ(熱帯雨林・マングローブと潮の満ち干が支配する地)の奥へ奥へと進み続けます。
以下に引用する箇所ではこの4人がそれぞれに自分の心に膨れ上がる葛藤が描かれます。覆いかぶさる雨林と満ちる潮の圧倒的な破壊力が彼らの良心の代役として自身の蛮行を懲らしめることになります。夢に懲らしめられもします。
3. Study Notes の無償公開
原書 502 ページから 521 ページのエピソード "In the Sundarbans" に対応する部分の Study Notes を無償公開します。A-4の用紙に裏表印刷するとA-5サイズの冊子ができる様に調整しています。