今回投稿での読書対象はエピソード 18 ’Commander Sabarmati's baton' pages 350-370 です。
1. Midnight Children's Conference なる会議。
この会議は、語り手サリームの頭の中に大勢の 10‐11 才の子供たちが全国から集まって来て時々開催されます。積極的に発言する子供がいる一方、集まり来たものの何をするところかさえ頭にない子供までいます。その様子、今回の会議にあっては次の如くです。読者は誕生後10年になるインドの国家の状態を子供会議という隠喩によって学ぶ・復習することになります。
この時に開催された Conference のもう少し具体的な様子が半ページほど後に描き出されます(ここに引用します)。いつぞの事であったか、遠い昔に読んだ「動物農場 "Animal Farm" by George Orwell」の雰囲気を思い出させます。
しかし、この小説にあっては、「動物農場」を思わせた上記文章に続いて、すかさず現実の政治が引き合いにだされます。ラシュディ氏であるからこその「リアリズム」と言うべきでしょうか?
上に引用した文章に "active-metaphorical" と "passive-literal" なる記憶に留まるフレーズがあります。これらに加えて "passive-metaphorical" と "active-literal" なるフレーズが取り上げられ、このエピソードでは議論されることになります。
2. 語り手のサリームが抱いた正義感・憤怒が、新聞記事で見ているだけだったはずの殺人事件を引き起こす元凶になります。
この小説、これまでの物語とは次元を異にする、生々しいシーンが、突然に読者の心に衝撃を加えます。幸いなことに、すぐあとに続くコミカルなシーンのおかげで、衝撃から回復は可能です。
きっかけはちょっとした悪戯の「メモ書き」のような置手紙です。新聞紙の活字を切り抜き張り合わせてあります。
"COMMANDER SABARMATI
WHY DOES YOUR WIFE GO TO COLABA CAUSEWAY ON SUNDAY MORNING?"
『 サバルマティ司令官 殿へ
奥さまが日曜日の朝、コラバ通りにお出かけになる訳をご存じですか? 』
このメモ(密告メモ)が引き起こした事態は次の通りです。事実を伝えるだけの単純明快な文章のようでいて、読めば読むほど、工夫をこらしたこの文章、不気味であると共にユーモラスでもある文章には感心させられます。
この後には、このシーン、このひと騒動にとどめを打つ滑稽この上ないシーンが用意されています。ご自身で本文をお読みになるようお勧めいたします。
3. 読者をこれでもかこれでもかと引き付けて放さない仕掛け。
聞き手である王様に飽きられては命がなくなると必死で面白い話を繰り出すシエラザーデに負けじとサリームの話は興味深い話題が満載ですが、もう一つ、読者の関心をキープする秘訣が、読者に折を見て質問を投げかけることのようです。「以前に出てきた話を記憶していますかか、そうでないと面白いところを気付き損なうぞ」と授業時間の始めに復習テストをする中学校の先生のやり方です。
4. Study Notes の無償公開