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80歳の誕生日前に見直したい。映画『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』積みDVD鑑賞⑧
2024年12月10日
見ようと思いつつナンダカンダ言って見ずに積んでた映画(DVD)を見ると、なぜか「見るべき時は今だったんだ」と思うことが多い。「映画がその時になるのを待っていてくれた」「これって引き寄せ?」なんて妙なことを言ったりして。
が、たぶん違う。先延ばしにしていた「やましさ」がそう思わせるのだ。
「見るべき時は今じゃなかった」 今回は珍しくそう思った1本を。
映画『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』(1971年)
裕福な家庭に育ちながら鬱屈した自己を抱えるハロルド。趣味は自殺ごっご。そんなハロルドがこれも趣味の一つである赤の他人の葬儀に参列し、老女モードと出会う。モードもまた他人の葬儀に参列を趣味にしていたが、厭世的なハロルドとは正反対の自由奔放さ。行動を共にする2人にはやがて愛が芽生えー。
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ハロルドは19歳、モードはもうすぐ80歳。年の離れた恋愛というのは珍しくはないけれど、ここまで離れているのは映画の世界でもそうない。
祖母と孫の関係にも「愛」はあるんだけれど、この2人の愛はそうじゃなくて恋、しっかり恋なんスよ。
この映画が作られたのは1971年。アメリカはベトナム反戦運動とカウンター・カルチャーの時代。それまでの価値観や物質主義を批判し精神的な自由を求めた時代。ハロルドの悲観さもモードの自由へのこだわりもそんな時代に根ざしている。
「見るべき時は今じゃなかった」と思ったのは「そんな時代」でもない今と、ハロルドのようなモラトリアムでもなく、かといってモードのような達観の境地にも達していない中途半端な自分だからかもしれない。
思想的にも、ルールや習慣、モラルや常識に対しても極端な姿勢をとらない中途半端な自分。それはそれで気に入っているのだけれど、目の前に広がる小さな草花に「世の中の不幸は、この花のように考える人がもたらす。他人と同様に扱われても、何とも思わない人々が…」というモードの一言はキツい。トンチキを装って結構な痛言をかませてくる油断ならない作品だ。
後半、カメラが捉えるモードの腕の刻印。「生きる」というメッセージを強く印象つけただけにあのラストの行動には、ん?となった。けれどもその「ん?」は、2024年のこの国で平和に生きている自分だから思ったこと。
当時(1971年)だったらどう思っただろう。戦争や大災害を体験した立場だったら、あるいは、20年後、30年後にはどう思うだろう。モードと同じ80歳を前にした自分はどう思うのだろう。
この映画は1971年に劇場公開後、何度かリバイバル上映されカルトムービーとして知られる存在に。そして2012年にDVD化。TSUTAYAのレンタル閉店セールを経てわが家の積みDVDになった。
80歳の誕生日の前にぜひ見直したいので、再び積み処へ(覚えておく自信ナシ)。
キャット・スティーブンスの音楽とレトロな衣装もイイ。
なんといってもイケてるモード婆ちゃんのルース・ゴードン(1985年没)がイイんだけど、映画『ローズマリーの赤ちゃん』のあの隣家のババア、ミニー・カスタベッドだったとは!ヤラレタ。
映画『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』 原題:Harold And Maude
1971年/91分/アメリカ
監督:ハル・アシュビー
出演:ルース・ゴードン、バッド・コート、ビビアン・ピクルス、ほか