TVの正義は過去の栄光? 映画『グッドナイト&グッドラック』 積みDVD鑑賞⑦
2024年12月6日
「TVは人を欺き、笑わせ、現実を隠している」
「#ネットで真実」と”目覚めた人”みたいな言葉だけど、ちょっと、いや、だいぶ違う。
映画『グッドナイト&グッドラック』(2005年)
1950年代、米ソ冷戦下のアメリカ。
ジョセフ・マッカーシー上院議員が煽動した「赤狩り」 により、共産主義者とみなされることを恐れ、当たり障りのない番組作りでやり過ごすTV業界。そんな中、自身の番組『See it Now』でマッカーシー批判を行い、やがて失脚に追い込んでいくCBSの報道キャスターのエドワード・R・マローを描く。
モノクロ映像とダイアン・リーヴスの歌うジャズ、そして煙草。
マッカーシズムが過ぎ去った1958年のマローの講演を冒頭とラストにおき、主体はTV番組での論争と局内だけの93分。監督は2作目となるジョージ・クルーニー(番組プロデューサー、フレンドリーとして出演)。マローを演じたデヴィッド・ストラザーンの存在感も相まって映画としての完成度は高い。
が、この報道の自由が守られた英雄譚が絵空事のように思えてしまう悲しさ。その原因は映画じゃなくて自分自身のほうにある。
先のアメリカ大統領選においても、兵庫県知事選においても、個人的にはまさかの結果になった。TV報道では反対のヨミだったのに民意は違ったのだ。
だからといってTVが極端な偏向だとも思わないし、何かを隠蔽したり歪曲しているとは思わない。ただ世間のしがらみを映しているのだ。
マローは「TVが娯楽と逃避のための道具なら、元々価値など無い。TVは人を教育し、啓発し、心さえ動かすもの」言ったけれど、もうその役目は終わっているのだろう。
では何が人を教育し、啓発し、心を動かすのだろう。
SNS? それはない。
メディアが権力の闇を暴いた系の映画は見ごたえがある。予備知識があればより楽しめるのだろうけど、後付けでも充分勉強になる。見たい映画も含めて、まとめ。
『大統領の陰謀』(1976年)
ウォーターゲート事件を暴くワシントン・ポストの若手記者を描く。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年)
ベトナム戦争を分析、記録した最高機密文書(通称「ペンタゴン・ペーパーズ」)を暴露したジャーナリストを描く。こちらもワシントン・ポスト。
『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2017年)
2002年、イラクが大量破壊兵器を保持していることを理由にイラク戦争に突入したジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)。そこに疑問を持ち真実を追い続けた記者たち(ナイト・リッダー社)を描く。
ジョージ・クルーニーが『グッドナイト&-』を製作した背景にはこの一件があった、とも。
『ニュースの真相』(2015年) ←もう一度見たい! 多分積みDVDあり
ジョージ・W・ブッシュ大統領が再選を目指していた2004年、CBSがブッシュの軍歴詐欺疑惑をスクープする。が、その証拠は「偽造」されたものだった、というメディアの誤報疑惑を描く。CBSはこの映画の解釈に批判的。
『インサイダー』(2002年) ←未視聴 見たい!
CBSニュース番組が巨大タバコ産業のタブーを暴く。
『グッドナイト&ー』ではタバコ会社が番組スポンサー、マローもカメラの前でもタバコを手放さないのに。