『イン・マイ・ライフ』 吉本由美 あの頃も、これからも憧れの人
10代の頃に見ていた『オリーブ』や『アンアン』。おしゃれで可愛くてセンスが良いインテリアや雑貨たち。その世界(誌面)を作っていたのがインテリア・スタイリスト吉本由美さんです。
『イン・マイ・ライフ』は、その当時の話と2011年に3月に熊本に移り住んでからの日常が綴られたエッセイです。
『イン・マイ・ライフ』の内容紹介
評)あの頃も、これからも憧れの人
1948年生まれの吉本由美さん。もうそんなお年なのかと驚いたものの、『オリーブ』や『アンアン』を読みまくっていた私も50歳を超えているのだからそうだよな、とあらためて時の流れを感じました。
本書の前半は吉本さんがインテリア・スタイリストになる前の子供時代から始まります。当時から興味の中心は「部屋」のこと。
やがて、あの『セツ・モード・セミナー』に通い始め長い東京生活が始まります。映画雑誌『スクリーン』の編集部を経て、『オリーブ』や『アンアン』で活躍するようになる吉本さん。
学生運動が盛んだった時代のサブカル界隈の話は、中野翠さんの著書『コラムニストになりたかった』でも読んだことがありましたが、このお二人には同じ仕事に携わるという接点もあったよう。中野さんは『コラムニストに―』の中で吉本さんについてこう記されています。
そうそう!本書にはその当時のお写真がちょっとだけ掲載されているのですが、当時、時々誌面に登場する吉本さんはホントにキュートで可愛らしくて、「都会の人は違うな」とひどく憧れたことを思い出します。もちろん吉本さんが熊本のご出身とは知らずにー。
理想の暮らしを求めて住まいを転々としたこと、そのなかで猫たちと出会ったこと、仕事のペース、スタイルも変化し文筆活動にシフトしたこと、両親の遠距離介護、いつまで東京で暮らすのだろうという思い、引っ越しを決めた直後に起こった東日本大震災。知らず知らずのうちに自分のこれまでと重ね合わせて読んでいました。
そして、本書の後半は故郷の熊本に移られてからの暮らし。
両親を見送り、引き継いだ実家と庭、そして東京から連れてきた猫と新しく迎えた猫。その世話に追われながら、長年再開できなかったチェロ(名付けて”ヒルデガルド”)の練習に励む吉本さん。70代のその日常は微笑ましく、穏やかで、でもちゃんと現実的で、あの頃とはまた別の憧れを抱きました。
熊本で「橙書店」の田尻久子さんとの縁ができ、そこから生まれた本書『イン・マイ・ライフ』
私もこんな風に歳を重ねたい、と思う1冊です。