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【日本史×化学】文系でもわかる放射性炭素年代測定法について-福井県の水月湖が世界基準になっている-
はじめに
放射性炭素年代測定法ってご存知ですか?
化学で登場する用語なんですが、実は日本史でもこの用語が登場します。
ここでクイズです。あなたは今何歳ですか?
29歳です。
それはなぜわかったのですか?生年月日から逆算したからですよね。もし仮に生年月日を忘れても戸籍や住民票を見れば確実にわかりますよね。
では2問目です。もし生年月日がわからず、戸籍や住民票もないとき、どうやって年齢を割り出しますか?
こういったときもう見た目で判断するしかないですよね。シワの感じとか、肌の感じとか、髪の感じを他の人と比べて「大体〇〇歳かな」というふうに判断しますよね。
「今何歳なんですか?」
「いくつに見える?」
とクイズ出されたときを想像すれば容易でしょう。
地中から土器とか遺物が出土したとき、それが「何年前のものか」を判断するときに用いる方法として放射性炭素年代測定法が、現在では最も正確に近い年代測定の方法として採用されています。
これから古い物の年代を科学的に測る方法として、主に化学として扱われる放射性炭素年代測定法を文系でもわかるように解説していきたいと思います。
放射性炭素年代測定法とは
我々の身近にも炭素(C)は存在しています。鉛筆の芯に使われている黒鉛とかダイヤモンドが代表的によく知られていると思います。
放射性炭素年代測定法というのは「炭素14」(14C)という放射性物質に注目した測定法です。「炭素14」の他に「炭素11」「炭素12」「炭素13」もありますが、質量の違いと思ってください。
この世のあらゆる物質には原子で構成されていますが、その原子をさらに拡大してみると、中心部は非常に非常に小さい粒が集まってできているのです。
この粒の集まりが安定なものがあれば不安定なものが存在します。粒の集まりが安定しているものに関してはそのままおとなしくしているわけですが、不安定なものに関していえば、安定した状態になるように変化する性質があります。粒の集まりが不安定な原子もエネルギーを放出することで安定しようとします。このエネルギーが放射線というわけです。炭素14も放射線を放出することで安定した後は窒素14(14N)という別の原子ができるのです。
この別の原子ができるまでの期間を半減期といいます。建物や土器などの遺物に付着した炭素14(14C)がどれだけ残っているのかを調べることによって、おおよそを年代が判定できるわけです。炭素14の場合、5730年ごとに半減期を繰り返していくので炭素14の残り具合で年代の測定が可能となるのです。
上図はその模式図を描いたものですが、木をイメージするといいと思います。木が生きている間は光合成しますよね。二酸化炭素(CO2)に炭素が含んでいるので、光合成により木に炭素が引っ付きます。
しかし、木が伐採されると光合成が行われなくなり、木に残った炭素14が半減期を経て窒素14に変化していく様子を表したものです。これは動植物や建物でも同様です。
世界基準を生んだ水月湖
福井県若狭町に水月湖という湖があります。この湖のすごいところは近年「年縞(ねんこう)」と呼ばれる湖底の堆積物が発見されたのです。それは自然科学のみならず、人類史の解明をも促す画期的なものだと言われています。
この年縞の年代を測定するのに放射線炭素年代測定法が用いられたのですが、日本・イギリス・ドイツの合同研究チームが調査を行った結果、年代測定の誤差が極めて少なかったという発表がなされ、学会において、地質学的年代測定の世界基準となったのです。つまり地球の歴史の年代測定のものさしとして福井県の水月湖が選ばれたのです。
文系でもわかりやすくということで、文系出身でもある私ができるだけ簡略に放射性炭素年代測定法を解説しました。化学の知識が少なくても、どうして放射性炭素年代測定法が用いられるのかについて理解してもらえれば幸いです。
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