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骨まで沁みる、飲むマインドフルネス。

日本茶にハマっています。

今飲んでいるお茶はこちら。

「骸骨、、、、カッコいい、、、。」
という小学校四年生の男子並みの動機でお取り寄せをした、

「狭山白棒茶 鬼の白骨 The Bone」

をご紹介します。


●狭山茶とは

埼玉県西部、東京都西部にまたがる狭山丘陵地帯で生産されるお茶です。この地域では鎌倉時代からお茶の生産が始まったと言われています。

東京出身の私は、やはり近隣の地域で作られるお茶に親しみを感じます。(東京都で生産されているものは「東京狭山茶」と銘打たれてもいます)

京都・宇治にて新芽を蒸して作る「煎茶」の製法が確立されたのが元文三年(1738年)。
狭山は関東の中でいち早く煎茶の製法を取り入れ、江戸をはじめ各地で広く親しまれるようになりました。

ちなみに、煎茶の製法を考案したのは永谷宗円という人で、その煎茶を絶賛していたのが江戸の茶商・山本屋の山本嘉兵衛という人です。
永谷家は後の永谷園。山本屋は後の山本山。老舗というイメージは勿論ありましたが、日本茶界のレジェンドだったのですね。

狭山はお茶の産地の中では寒冷な地域、冬になると霜がおります。
寒い冬の間に栄養を蓄え葉は厚く、味は濃くなります。
そして「狭山火入」と呼ばれる強火の乾燥処理によって香ばしく仕上げられます、葉が厚いので強火で行けるのですね。

そうして狭山茶は「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」と謳われ、日本三大銘茶の一つと言われています。

●狭山白棒茶 鬼の白骨 The Bone

さて、そのような狭山茶にあって名前もパッケージも異色すぎる
「狭山白棒茶 鬼の白骨 The Bone」

見た目はこんな感じです。

「棒茶」というのは茎の部分を使ったお茶のことを言います、「骨」とも呼ばれているそうで、

お茶屋の世界では昔から茎のことを”骨”と呼んできました。その“骨”を集め、狭山伝統の『狭山火入れ』を生かしながら、極強火で白く膨らむまで火を入れた白棒茶です。袋を開けると広がるこうばしい香り。緑茶本来の旨みを残しながらもすっきりとした味わいに仕上げました。

 また骸骨は死を連想させるネガティブなものと捉えられがちですが、古くから邪気払いの『魔除け』の意味を持ち、人生の尊さと命の大切さを連想させ、困難に打ち勝ち新しい未来をもたらしてくれる縁起の良いものと考えられています。

 江戸時代より続く茶農家の15代目が、ストレスフルな現代のビジネスパーソンに送る、ありそうでなかった『白棒茶』という新ジャンル。

狭山茶製造元 奥富園 商品ページより

飲んでみると、厳つい名前とは裏腹に、軽やかな香りと旨味でとても優しい印象です。

お茶の味わいは、ざっくり言うと

・カテキン(渋味)
・アミノ酸(旨味)
・カフェイン(苦味)

で構成されます。

お茶に含まれるアミノ酸の中には、テアニンというお茶特有のアミノ酸があります。そして茎の部分はそのテアニンが豊富に含まれています。
テアニンは日光にあたることでカテキンに変化するのですが、茎は表面積が小さく日光が当たる部分が少ないので、葉に比べてカテキン量が少なく、テアニンが多く残るのです。

また苦味もやや抑えめに感じます。まず茎は葉に比べカフェイン量が少ないことと、白くなるまで火入をすることで、ほうじ茶までは行かないにせよ、熱に弱いカフェインは減少しているのではないでしょうか。(カフェインは130℃くらいから昇華により減少しはじめると言われていますが、果たして?)

香りも香ばしさがありつつ、緑茶らしい瑞々しさも感じさせ、渋味、苦味が控えめで旨味が豊富。

良いバランスで飲みやすく、美味しいお気に入りのお茶です。

●飲むマインドフルネス、お茶。

テアニンには心身をリラックスさせる効果があります。人間の脳は落ち着いた気分の時にはα波と呼ばれる脳波が出おり、テアニンを摂取するとα波が発生することがわかっているそうです。

そしてお馴染みのカフェインには覚醒効果があることが知られています。

この覚醒とリラックスのバランスにお茶の魅力を感じます。これは体感ですが、何か集中して作業したい時は、コーヒーよりもお茶の方が集中できるように感じます。この記事も、飲みながら書いています。(コーヒーも好きですが。)

鎌倉時代、宋で臨済禅を学び日本で臨済宗を開いた栄西は、禅の思想と共に抹茶方によるお茶の飲み方も日本に広めた人物と言われています。その後、茶の湯の文化は禅の思想に大きな影響を受けて発展しました。覚醒とリラックス。お茶と禅。何か繋がりを感じます。興味深いですね。

鬼の白骨はリラックス寄りのバランス。鬼も時には骨休め。いい感じです。

●お茶の沼へ。

成分のバランスは、お湯の温度でも変わります。

テアニンは低い温度、カフェイン、カテキンは高い温度で抽出されやすくなります。

なので高めの温度で淹れれば苦みと渋みの効いたキリリとしたお茶、低めの温度で淹れれば旨味のあるマイルドなお茶と、茶葉の持つ味わいを、主に茶葉の量、お湯の量、温度、抽出時間の4つ変数を最適化して好みのバランスを引出して行くことになります。

このあたりがとても面白く、淹れるたびに微妙に味わいが変わり、美味しく淹れられると楽しくなり、ハマっています。

お茶の産業としての歴史も、栽培方法や製法の違いも面白いですし、茶道もまた、茶道を軸に工芸、美術、建築と様々な世界が広がり、興味が尽きる気がしません。色々深堀していきたいと思います。

そして奥富園さんの急須Tシャツ、何か良いんですよね、、、、

お読み下さりありがとうございました。





参考図書:

茎茶 と煎茶 の香味成分 の比較https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/1993/78/1993_78_61/_pdf

トップ画像:
歌川国芳,Utagawa Kuniyoshi『相馬の古内裏』(東京富士美術館所蔵)
「東京富士美術館収蔵品データベース」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/tfam_art_db-9164)


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