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人間の行く先を考えると、退化という一言が気になっている。

先日亡くなった楳図 かずおさんの言葉だ
(先日の『日本経済新聞』朝刊/春秋)。

私も、彼のいわゆる恐怖漫画が
子ども時代の脳裏に刻印されているが、
最近の漫画からは、常に時代の歪みを捉えた
視点が際立っていた。

■「退化」をしても、
    これまでのプロセスを見直す

この「退化」の意味を
彼は次のように語っている。


進化から退くけれど、
その代わり、幅広く
そこから何か、
あっ、この方向がいいかな、
これがいいかな。
いい方向を見つけたら、
そっちの方に進化するという
そういう何か今、
瀬戸際に来ているんじゃないかな~
という危機感ですよね

「日経電子版」2022/3/3

つまり、このまま進化ばかり目指すのではなく、
たとえ「退化」をしても
異なる視点から、これまでの過程を
見直す時代ではないか、と
警鐘を鳴らしているのだ。
しかも、その「瀬戸際」だと。

■経済成長至上主義の限界

あたかも前年を超える成長が
未来永劫繰り返されるかのような
思想を前提とする限り、
いま私たちを覆う
地球温暖化対策、いや沸騰化対策は、
経済の名のもとに有名無実化するのみだ。

高温がもたらす水害で多くの命が
失われているのに、自分たちが立てた
目標値さえクリアできないまま、
熱中症はもちろん、
デング熱の広がりなど、
多方面で高まる命の危険性は見過ごされ続ける。

      
プラスチックも、
紙ストローで誤魔化す時代は終わった。
過剰包装を美徳とせず
大胆な削減に踏み切るべきなのに、
企業利益を優先してできない。
再生プラスチックも同様で、
もっと広げるべきなのに
広がらない。
      
介護従事者の不足に真剣に取り組まず、
患者数の減少で病院経営が赤字化する
事態を放置すれば、人間の尊厳の危機なのに、
その可能性は他国から侵略されることより
高いはずなのに、
GDPの成長率をまだまだ追いかけ続ける。

楳図 さんの言葉通り、
「いい方向」は「見つけ」なければならない。
目の前にあるわけではないのだ。
だから私は、少なくとも、
経済成長至上主義を見直すことを
基本的なテーマに乗せてみる、
そんな「退化」の試みをなすべきだと思う。


それが、楳図さんの本意ではなかったか。
そして、時間は絶望的なほど、足りない。











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