そして誰もいなくなった (アガサ・クリスティー)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」と、このところアガサ・クリスティーの作品が原作となっている映画を何本か観ていて、その流れで小説にもトライしています。
今回は「そして誰もいなくなった」。
これもアガサ・クリスティーの代表作ですね。
小説なので、ネタバレになるような引用は避けますが、流石に、とても評価の高い作品だけのことはありました。
物語の柱はとてもシンプル、さらにタイトルがまさに示しているとおり “結末も明示” されています。そのうえでしっかりとサスペンスとして読者を楽しませるのですから素晴らしいですね。
場面展開も小気味よく、情景描写にも無駄がありません。それでいて、島に閉じ込められた招待客たちが受けるピリピリした緊迫感はしっかりと伝わってきます。
最近の日本のサスペンスには、奇抜なプロットや複雑怪奇な物語を作り上げて、いかにも「どうだ、よく考えてあるだろう」とアピールしているような作品が数多く見られますが、この作品はひと味もふた味も違います。
原作がしっかりしていると映像作品になっても見応えがありますね。もちろん「原作」が誘う想像の風景には及ぶべくもありませんが。