停電の夜に (ジュンパ・ラヒリ)
かなり以前、何かの書評で紹介されていた本です。
今年の読書の目標のひとつが、「小説」のウェイトを高めるということでもあるので読んでみました。
著者のジュンパ・ラヒリは1967年ロンドン生まれ、本デビュー作以来数多くの賞を受賞している新進気鋭の作家とのこと。
本書に収められているのは表題となった「停電の夜に」をはじめとして全9作。華美な修飾のない落ち着いた文体で、夫婦・家族・そして市井の人々の感情を淡々と描いていきます。
どの作品もインドの人たちが主人公。こういう舞台設定の物語を読むのは初めてです。
小説なので個々の内容をご紹介することは控えたいと思いますが、9編の中で私の好みの作品はといえば、最後に採録されている「三度目で最後の大陸」でしょうか。
インド生まれの主人公と100歳を越えるアメリカの老婦人との交流を、穏やかな余韻を残しつつ抑揚を抑えた筆致で描いていきます。
その他にも、「停電の夜に」「ピルザダさんが食事に来たころ」「病気の通訳」あたりも面白かったですね。