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停電の夜に (ジュンパ・ラヒリ)

 かなり以前、何かの書評で紹介されていた本です。
 今年の読書の目標のひとつが、「小説」のウェイトを高めるということでもあるので読んでみました。

 著者のジュンパ・ラヒリは1967年ロンドン生まれ、本デビュー作以来数多くの賞を受賞している新進気鋭の作家とのこと。

 本書に収められているのは表題となった「停電の夜に」をはじめとして全9作。華美な修飾のない落ち着いた文体で、夫婦・家族・そして市井の人々の感情を淡々と描いていきます。
 どの作品もインドの人たちが主人公。こういう舞台設定の物語を読むのは初めてです。

 小説なので個々の内容をご紹介することは控えたいと思いますが、9編の中で私の好みの作品はといえば、最後に採録されている「三度目で最後の大陸」でしょうか。

(p315より引用) ようやくミセス・クロフトが言いたいことを口にした。疑わしさとうれしさを等量に込めた、あの口調だった。
「完璧。いい人を見つけたね!」
 今度は私が笑う番だった。そうっと笑ったからミセス・クロフトには聞かれなかったろう。だがマーラは聞いていた。そして初めて、私たちは見つめ合い、笑顔になった。

 インド生まれの主人公と100歳を越えるアメリカの老婦人との交流を、穏やかな余韻を残しつつ抑揚を抑えた筆致で描いていきます。

 その他にも、「停電の夜に」「ピルザダさんが食事に来たころ」「病気の通訳」あたりも面白かったですね。



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